王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。

文字の大きさ
上 下
38 / 40
最終章

僕の、、ルディ。

しおりを挟む
アスランはこの国の第一皇子でありながら、親には恵まれていなかった。

母、シェリアはアスランを愛してはいたが、デラクスに愛されず壊れていった。

デラクスの愛人マリンは金遣いが荒く、嫌った者は排除し、気に入らない事があれば、その者に攻撃をする。

勿論、自分の思い通りにならないアスランの事も虐げた。
マリンが泣きつけば、父デラクスもアスランを鞭で打った。
何度も何度も毎日毎日鞭で打たれ続けたその体には、大きくなった今でも鞭の跡が残っていた。

アスランは、マリンの機嫌さえとっておけば何もされないと分かれば、毎日ニコニコ笑うようになる。

それで、ルディリアナと共に入れるのであれば、それでよかった。
王子でなくてもいい、平民になってしまってでも、ルディリアナと入れればいい。

デラクスとマリンの元を離れ、ルディリアナと幸せになる方法を考えていたのだが、15歳になった頃アスランはその夢すら絶たれてしまう。

「、、、陛下、今何とおっしゃりました?」

「お前は一度で言葉が通じぬのか?お前とここにいるメアリの婚約を命じる。メアリは少し前まで施設にいた為、未だ孤児だが、メアリの父は貴族だ。メアリをその父親の元に籍を入れさせれば、周りも文句を言えるまい。お前が18になり結婚するまでは好きにすればいい。だが、結婚した後は、必ずメアリと結婚するのだ。これは、王命だ。メアリとマリンを傷つける事は許さない。」

それはきっと、それまでにルディリアナとの関係を終わらせろという事なのだろう。

陛下の横でニコニコと嬉しそうに笑う少女は、他の者が見れば可愛らしいのかもしれない。

だが、あの女に似た顔をした少女を見れば見るほど吐き気がする。

その日、ルディリアナを外に出してあげようと思った。
どうせそのうち引き離されるのであれば、早く離した方がきっと辛い思いをせずに済む。

なのに、「好きよ。アース。」君はそう言うんだ。

だから、僕は頑張った。
2人の幸せの為に、王と愛人が税を横領していた証拠を集めた。

自分の事を鞭で打ち虐げた証拠も、過去王宮で働いた使用人たちの証拠を集めた。

王にバレずに証拠を集めるのには時間を要する。

2人の機嫌を損ねない為に、メアリのしたいようにしてやった。

ルディリアナに見える場所にメアリは行きたがる。
そのせいでルディリアナは心を病んだ。

行きたくないと伝えれば、「じゃあ、抱いて。そうじゃないとあの子を傷つける。」と言われた。

ルディリアナを連れて逃げ出したくとも、ルディリアナの家族を人質にしていると言う始末。

メアリを見ても欲情すらしない。使用人に頼んだ薬を飲み、やっと抱ける。
毎日、メアリを抱くのは苦痛以外の何者でもなかった。

ルディリアナの誕生日ですら、メアリは自分を欲した。
「彼女の元にいけば、全てを彼女に話す。」とどこまで知っているかわからないが、脅された。

毎日恐れていた。
一度嫌われてからまた、記憶を思い出して僕を嫌いになるんじゃないかと。

毎日怯えながら生きていた。

ルディ、ルディ、ルディ、ルーナ、、、ただ君が好きなんだ。

出会ってからずっと。ずっと好きだ。

「あんたなんて、、、大嫌い。」

そう言いながら部屋を出ていったルディリアナの顔を思い浮かべ、アスランは荒れ果てた部屋の中でただ1人涙を流す。

「ルディ、、ルディ。僕の、、ルディ。。教えてくれ。僕は一体どうしたらよかったんだい??」

その問いに答えてくれる人は、もうアスランの側にはいない。

数ヶ月後、証拠を揃えたアスランは王を投獄し、その愛人とその娘を処刑した。



------

次で最後の話になります。

アスランendとレオンendと書かせて頂きました。
結ばれて欲しい相手のendをお読みください。
どちらも読んで、2人共の感想なども聞かせて頂けると嬉しいです。

ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます。
らすと
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...