王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。

文字の大きさ
上 下
36 / 40
最終章

嘘。(17歳。)

しおりを挟む
「レオン、、、。」

ルディリアナが名前を呼ぶと、男は嬉しそうに微笑む。

「帰ろう、ルディリアナ。君はここにいても苦しい思いをするだけだ。」

ルディリアナを再度抱き締めるレオンの体は震えており、レオンの怒りがルディリアナにも伝わってくるようだった。

「あいつは、、、あの男は、ルディリアナの事をちっとも大切なんかにしてない!」

「、、、レオン、何を言ってるの??アースはとても優しいわ。私の好きな物、何でも知ってるの。それにね?プレゼントだって貰ったのよ?」

机の上に置かれたリングケースを、ルディリアナは照れ臭そうに見える。

きっとレオンはアースの事を勘違いしてて、私が何かされてないか心配なのだ。
幼馴染が、変な男に捕まったのではないかと、優しいレオンの事だもの。私が心配で、こんな所まで来てくれたに違いない。

レオンを安心させるためにルディリアナは、リングケースを見せたのだが、ケースをみたレオンは何故か更に激昂するのだ。

『よかったな!おめでとう!』とか、喜びの声が聞こえると思っていたルディリアナは、レオンがみせた反応が思ったものと違い、困惑する。

「、、ルディリアナ!目を覚ませ!それは君が好きで送ったものなんかではない。。あいつはおかしい、、あいつは悪魔だ。」

更には、頭を抱え顔色を変え、レオンは怒り出すのだ。
何故、、アースの事何も知らないのに。そんな酷い事が言えるの?

昔はあんなにも優しかったのに、彼との時間はとても心地の良い物だったはずなのに、今のレオンからは優しさを一切感じない。
ただ、ただアースへの強い恨みを感じるのだ。

「何を知っててそんな事が言えるの?アースは優しいわ。いつだって私の事を考えてくれるし、私を喜ばせてくれようとしてくれるもの!!」

「ハッ!この部屋に監禁する事がルディリアナの事を考えてとった行動だって!?笑えるよルディリアナ。君はこの数年の間に変わったね。彼が変えたのかな?」

クツクツと笑いながら話すレオンこそ、昔の彼とは全く違う。
こんな人を馬鹿にしたような話し方、一切しなかった。

レオンに何があって、性格が変わったのかはわからないが、アースを馬鹿にされるのだけは嫌だと思った。

「アースのお父様はとっても厳しいらしいの。だから、私を傷つけないために部屋から出られないの。」

そう、だから仕方がない事。
出られなくても仕方がない。

「、、何年も何年も監禁されてるのがそれだけだと、本当に思ってるのか?ルディリアナ。だとしたら、私は君に失望すらするよ。」

「何年も監禁なんてされてないわ?前までは普通に出してくれてたって言ってたもの。」

そう、アースは以前は出していたと私に話していた。
でも、記憶を失う少し前から父が厳しくなり、君が傷つかないようにこうするしかないんだ。と自分もこんな事したくないんだ、、と苦しそうにアースもまた私を監禁するのを嫌がってすらいた。

だから、仕方がないはずなのだ。
私が少しの間我慢すれば済む事なのだ。

なのに何故、レオンは私の言葉を聞いて、涙を浮かべてるのだ。

私は幸せなはずなのに、何故?何故、、泣くの?
それではまるで、私が可哀想な子みたいじゃないか。

「ルディリアナ、、、よく聞いてくれ。私が知っているだけで、君がここから出られたのはほんの数回。君がここに来たのは13歳。そして、17歳の今日になるまで君はほとんどこの部屋から出られてないんだ、、、。ルディリアナ、これでも、彼を信じるのかい??」

目に涙をたっぷり溜め、レオンは私の頬を撫でた。

「こんなにも痩せ細るほど、君はストレスを感じて生きてきたんだ。寝るのが生き甲斐だった君に、どうしてそんなにクマがあるんだ?ねぇ、どうしてルディリアナ。」

先程までの怒った口調とは違う。
レオンの声は幼子に話しかけるように優しい。

レオンの言葉は全てきっと本当なのだ。
レオンの目を見ればわかる。嘘なんてついていない。

だとしたら、アースは私に嘘ばかりついていた事になる。

全部全部、嘘。
何処までが嘘なのか?
好きと言ったのも嘘なのだろうか?

好きでもないのなら、私を囲ってどうなるの?
何もわからない。何もわからないのに、ただ一つわかるとしたら、アースを好きだと言う自分の気持ちだけ。

「でも、好きなの。アースが、、好き。」

だから、アースの気持ちを信じたい。
アースを信じていたい。と思うのに、「おいで。」と悲しげな表情をしたレオンに手を引かれた。

私は数ヶ月ぶりに外に出たのだ。
廊下には侍女が控えているのに、誰もレオンと私を止めるものはいなかった。

皆、レオンに頭を下げている。

レオンと私の姿が見えなくなるまでずっと。ずーっと。

侍女達の行動は、まるで主人に向ける態度だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...