王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。

文字の大きさ
上 下
20 / 40
第二章

気持ち。(15歳。)

しおりを挟む
その日のアースは、いつもとなんだか違っていた。

ゴロゴロとベットの上でくつろいでいるルディリアナの部屋にアースがきたのは、外も暗くなり出した頃だ。

ドアを開けて入ってくるなり、勢いよくドアを閉め鍵をかけたかと思えば、ルディリアナの横に寝転んだ。

そして何も言わずに、ジッと私を見つめるのだ。

「アース???」

なんだかいつもと違うと感じる。

いつものアースはいつもケラケラと空気も読まずに人の気持ちも考えずに笑ってるよーな人なのに、私を見るアースの顔はとても悲しそうであった。

そっと手が近付いてきたかと思えば、アースの手がルディリアナの頬を撫でた。

感触を楽しむようにぷにぷにと摘んでみたり、鼻を撫でてみたり、目を触ってみたりと、ルディリアナの顔を満遍なく触り出す。

何故触るのかルディリアナには意味がわからなかった。

いつもうるさいくらいのアースが全く喋らない。。

、、、異常である。

「あの、アース?大丈夫?何かあった?」

私が問えば、アースは少し目を見開いてから、優しく微笑んだ。

そして、たった一言「ここから出たい?ルディ。」そんな質問を私に投げかけるのだ。

「出たい!」と直ぐにでも即答してしまいそうな質問なのに、ルディリアナは上手く答えられない。

「えっ、と。」

答えれば出れるかもしれないのに、出る事を望んでるはずなのに、その後に続く言葉はどうしてもいえない。

「馬鹿だね、ルーナ。」

聞こえた声の方を向けば、優しい笑みはもうない。

私にまたがり見下ろすその顔には、不気味な笑みをしたアースが座ってる。

そんな笑みを見て愛しいと感じてしまえば、もう嫌でも自分の気持ちに気づいてしまう。

行ってしまうとあれだが、アースは顔と筋肉は私の好みドンピシャである。

だが、それを無駄にするほど性格は基本最悪である。

嫌なことするし、ルディリアナが泣けば喜ぶし、言わなくてもルディリアナの好きな者を把握してる。

普通に怖い。

毎日見てる口角を釣り上げる不気味な笑みは、毎日見てればおかしいと気づく。

いつも、どこか、、アースは悲しそうだった。

「もう逃してやらないよ?鍵はかけてないよ。今俺を押してでも逃げれば逃げれるよ。」

アースはどこまでもルディリアナの嫌な事ばかりする。

そんな事、ルディリアナは望んでないのに。

「アース。。」

そっと手をアースの頬に近づけた。

自分から触れたアースの顔は外の空気で冷えてきたのか、とっても冷たい。

名前を呼べば触れれば、、アースの頬を涙が伝う。

初めて見るアースの涙を見て、ルディリアナは確かに喜びを得た。

アースが私の涙を見たいと言うのが、少し分かった気がする。

「好きよ。アース。」

告げてしまえば、アースはもっと涙を流した。

「だって!俺、、、ルディに嫌なことばかりしてる!!そんなわけがない。」

あれだけ好き好き求めといて、逆にいえばこれである。

面倒臭い男だ。

「本当に、そんなんじゃ嫌われるわよ!アース。」

私にまたがるアースの体を思い切り押してやった。

べそべそ泣いてるアースの体には力が入ってなくて、私より大きな体なのに簡単に後ろに倒れていく。

私に押され私が逃げると思ったのか、私の腕を掴んで離さない。

、、、逃げろと言ったくせに。

「、、行かないで、ルディ。好きなんだ。なんでも買ってあげるから、、初めてなんだルディ。嫌いでもいいから側にいて。」

体を起こし見下ろす男は泣いている。

私より大きな体と素敵な筋肉をつけた男が、笑いたくなるほどべそべそ泣いてる。

カッコ悪いったらありゃしないけど、ルディリアナはそんな彼も愛しいと感じてしまう。

「馬鹿ね。アース。逃げろって言ったり行くなって言ったり、何なの?」

そう言いながら今度はルディリアナがアースの上に跨った。

「ルディぃ、、?」

逆に跨られるとは思ってなかったのか、アースは素っ頓狂な顔をしてる。

「好きって言ったでしょ。」

垂れた髪を耳に掛け直し、ルディリアナはそっと触れるだけのキスをアースに落とした。

そしてニコッと笑えば、アースは唇をワナワナと震わせた。

「ルディ!!ルーナ!!あぁ、僕の嫁!愛してるよ。」

そして力一杯叫んだ後、いつの間に逆になったのかと思った時には、自分の上にまたアースが跨ってて、苦しいくらいのキスをされる。

この人を好きになって良かったのかという疑問は浮かぶが、キスをして不気味な笑みを浮かべるアースを見れば、まあいいかと思った。


余談だが、次の日からルディリアナの部屋のドアの鍵はかけられなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...