上 下
11 / 40
第二章

友達。(12歳。)

しおりを挟む
「ルーナ、彼はレオンだ。ディアン伯爵と共にこれから週に1~2度ほど屋敷に来るから相手をしてやってほしい。」

ある日マルフェスに唐突にそう言われたルディリアナは、一人の時間が奪われるのは嫌だと言ってしまいたかった。

だが、レオンと呼ばれた父の隣に立つ少年は、どこかお兄様の面影があり、綺麗な顔立ちをしている。

ディアン伯爵に連れられてくると言うことは、お兄様の弟と言うことになるのであろう。

ロベルトに会ったことしかなかったルディリアナは、父の横にたつレオンを上から下までくまなくみる。

やはり、お兄様に似ている。お兄様みたいにドキドキはしないが、お兄様に似ているからか見ているだけで心が和む。

彼なら睡眠の邪魔にもならなそうだ、と思ったルディリアナは「お昼寝をしませんか?レオン様?」と小首を傾げ問うた。
まだ、少し眠いのかルディリアナの目はトロンとしており、欠伸をしたのかその目には少し涙が浮かんでいる。

そんな状態で、ルディリアナより背の高いレオンを見上げて小首を傾げれば、それだけで効果は絶大であった。

レオンは見ないようにとすかさず自分の目を両手で覆った。

父のマルフェスはレオンの行動を察し、うんうん分かるよと言わんばかりに一人その場で首を何度も縦に振っていた。

そしてボソリと一言。「やっぱり、リジィの子だなぁ。」と呟いたことなんて露知らず、ルディリアナは、お昼寝のおすすめスポットにレオンを案内する事にしたのであった。


お昼寝スポットまで連れていく間、レオンはキョロキョロと辺りを珍しそうに見渡している。

「どうしたの??」と聞けば「余り、外に出ないから。」と答えた。

お兄様は社交的であったが、どうやらレオンは真逆らしい。
自分と同じで余り外に出ないというレオンにルディリアナは親近感を覚えた。

二人は無言のまましばらく歩くと、見えてくるのは最近ルディリアナが気に入っているお昼寝スポットである。

ルディリアナの住むこの城は、国の中でも10本の指に入るほど大きい城である。

そんな城ではルディリアナがところかしこに置いた枕が置いてあるのだが、複数あるお昼寝スポットの中でもルディリアナが特別気に入ってるのは、庭園にある東屋だ。

誰も使わないその東家は少し錆びれてきているが、ルディリアナはそんな事気にならない。

なんせ、ルディリアナにとって大事なのは、どれだけ気持ちよく眠れるかなのである。

いそいそと東家に腰掛けると目を瞑る。

すると、サワサワという木々が風で揺れる音と共に、冷たい風が肌に当たり気持ちが良い。

「ほら!レオン様も座って下さい!!」

自分の横をペシペシと叩けば、レオンもおずおずとその横に腰掛けた。

「ねっ、気持ちいいでしょう?レオン様。暑い日や雨の日は無理ですが、今日みたいに晴れた日はここがいっちばんいい眠りを与えてくれるんですよぉ。」

ふわぁと欠伸をしながら言うルディリアナ。

そんな彼女を横目にレオンはクスリと笑った。

「あぁ、そうだな。」

そう呟けば、綺麗な大きな瞳とレオンの目が合った。

ゆっくりと近づいてくる顔に、レオンが目を瞑ろうとした時、、コテンと何かがレオンの膝の上に落ちる。

そっと膝の上を見れば、目を瞑りスゥと寝息を立てるルディリアナがいる。

レオンは驚きと、恥ずかしさと、嬉しさでどうにかなってしまいそうな己を奮い立たせ、膝の上で眠る、今日初めて出会った少女の額に、一度だけ口づけをするのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。

白霧雪。
恋愛
 王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

処理中です...