王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。

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第一章

婚約者とかやめてください。(7歳。)

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「僕の可愛いルーナ。」

ベットに寝転び眠る私の邪魔をする、邪魔者が今日もいる。
あの日から、二日に一回は来る彼。

かれこれ一年は経つが、私は彼の名前も知らない。

聞いても教えてくれないし、お父様が何も言わずに来訪を許しているということは、きっと素性ははっきりしているということだ。
だけど私は、その邪魔者をみて大きくため息を吐いた。

普通ならそこで気を遣って部屋を出ていくはずなのに、相も変わらず彼はニコニコと私のベッドに腰掛け笑っている。

「あの、、何度も言ってますが、結婚前の男女が二人だけで部屋にいるのはよくないことです。あらぬ噂をたてられますので、やめてください。」

ベットに入り寝る体勢に入っている私は、目を瞑ったまま横に座る彼に告げた。

この家に噂をたてる人はいないというのは分かっているが、そうでも言わないと彼はきっと諦めてくれない。

「大丈夫だよ。ルーナ。心配しないで。僕達は既に婚約者同士だし、あらぬ噂は寧ろ立ててもらいたいし、最終僕の嫁になるんだから、何も問題ないよね??」

目を瞑っていても、そういう彼はきっと笑顔だという事がわかるから、怖い。

「問題ありありです。。」

婚約者になった覚えもないし、変な噂を立てられたらたまったもんじゃないし、最終嫁になる予定もないので、問題はありありだ。

でも、これも全て明日までの我慢だ。

そう思ったら一気に眠気がやってきた。

今日は早く寝て、明日に備えるのだ。

明日になったらきっと、、きっと

「お兄様が、、」

声にならないつぶやきは、彼に聞こえてたかはわからない。

でも、明日になったら彼がすっぱり諦めてくれる事を夢見て、私は深い眠りについた。

「ルーナ、お兄様は助けてくれないよ。可哀想で可愛い僕のルーナ。」

チュッと頬に口づけをすると、ルーナの口角がフニャりと上がり嬉しそうに微笑んだ。

「かっ、可愛い!!ルーナ!もっかい笑って!」

いつも笑わないルーナが笑ってる。

それだけで、気がおかしくなりそうだ。


抑えろ。抑えろ自分。

まだダメだ。

深く息を吸って、吐く、吸って吐く。

それを繰り返し何とか落ち着いた自分を褒めてから、ルーナの毛布を捲るといそいそとその横にはいる。

「おやすみ、ルーナ。」

チュッと今度は額にキスを落とし、ルーナの夢に出てきますようにと願いながら、彼もまた眠りにつくのであった。
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