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第一章
初めまして、さよなら。(5歳。)
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これも美味しい。
あれも美味しい!!
ここは天国だと、ルディリアナは思った。
何を取っても何を食べても怒られない。
いつもならケーキは一切れだと怒る、侍女のロマもいない。
「ナイフとフォークの使い方があってませんわ!」と怒る先生もいない!!
あぁ、、なんて。なんて「天国なの!」
小さな頬にたっぷりとケーキを頬張りながら、ルディリアナは呟いた。
パクパクと色々なお菓子を食べ進めていくうちに気づく。
私一人しか、食べてないなぁ。と。
周りの子達は皆んなお父様やお母様に連れられてるのに、私だけ一人ぼっちだ。
・・・まぁ、いいかぁ。
これだけ食べたら満足だし、ちょっと眠いし。
そろそろ帰りたいな。
そう思った時だった。
「それ、美味しいですか?」
不意に人に声をかけられたのは。
声の方を振り返ると、自分と同じくらいの年齢に見える男の子が立っている。
「うん?美味しいよ?」
そう答えると男の子は私のお皿の上に乗っていたケーキをパクリと食べた。
そして一言「あぁ、本当だ。最高に美味しい。」
そう言って、微笑む男の子の笑顔は少し怖いと感じる。
ブルリと体が震え、ゾワッと鳥肌がたった。
「よっ、よかったね。」
とりあえず、この場所に余りいたくないと思ったルディリアナはそれだけ言ってその場を離れようとするが、何故かその後ろを男の子がついてくる。
「着いてこないでください、、、」
基本度胸のあるルディリアナはちょっとしたことでは怯えないし、怖がらない。
だけど、5歳のルディリアナでも不気味だと感じる程には、ルディリアナの後ろをついてくる男の子は異質である。
「名前は?」
ルディリアナの言葉は無視で、男の子はルディリアナに問うてくる。
知らない人に名前を言ったらダメだと教わっているルーナは、この人にだけは絶対に言っちゃダメだ!とキュッと口を引き結んだ。
だが、暫く沈黙が続けばまた「名前は?」と問われた。
それも無視して、ルディリアナはどんどん人気のない方に歩いていく。
そしてどれくらい歩いたであろう。
ここが何処かもわからないところまで来てしまった。
ルディリアナの背より高い扉が幾つもあるこの場所。
ずっと追いかけてくる訳もわからない男の子。
流石のルディリアナでも、この状況は怖かった。
気づいた時には泣いていた。
大声で泣いているのに、誰もやってこない。
屋敷で泣いてる時は必ず誰か来てくれるのに。
「こわいよぉ、お父様ぁ。お母様ぁ。」
わんわん泣き叫ぶルディリアナを見て、男の子は幸せそうに微笑んでいた。
「あぁ、可愛いなぁ。僕の花嫁は可愛いなぁ。」
男の子はそんな事も言っていたが、泣き叫ぶルディリアナにはその声は聞こえてなかった。
その後、ルディリアナがいなくなったと分かったマルフェスとリジィが王宮の使用人達にも必死に探してもらい、やっと見つけた時にはドアの目の前で転がって眠っていた。
その目はパンパンに腫れていて、その眠るルディリアナを座って眺めている男の子を見て、両親は恐怖を覚えたと、数年後に聞くことになるのであった。
そして、ルディリアナはこの時の事が酷くトラウマになり、王宮に近づく事がなくなったのであった。
あれも美味しい!!
ここは天国だと、ルディリアナは思った。
何を取っても何を食べても怒られない。
いつもならケーキは一切れだと怒る、侍女のロマもいない。
「ナイフとフォークの使い方があってませんわ!」と怒る先生もいない!!
あぁ、、なんて。なんて「天国なの!」
小さな頬にたっぷりとケーキを頬張りながら、ルディリアナは呟いた。
パクパクと色々なお菓子を食べ進めていくうちに気づく。
私一人しか、食べてないなぁ。と。
周りの子達は皆んなお父様やお母様に連れられてるのに、私だけ一人ぼっちだ。
・・・まぁ、いいかぁ。
これだけ食べたら満足だし、ちょっと眠いし。
そろそろ帰りたいな。
そう思った時だった。
「それ、美味しいですか?」
不意に人に声をかけられたのは。
声の方を振り返ると、自分と同じくらいの年齢に見える男の子が立っている。
「うん?美味しいよ?」
そう答えると男の子は私のお皿の上に乗っていたケーキをパクリと食べた。
そして一言「あぁ、本当だ。最高に美味しい。」
そう言って、微笑む男の子の笑顔は少し怖いと感じる。
ブルリと体が震え、ゾワッと鳥肌がたった。
「よっ、よかったね。」
とりあえず、この場所に余りいたくないと思ったルディリアナはそれだけ言ってその場を離れようとするが、何故かその後ろを男の子がついてくる。
「着いてこないでください、、、」
基本度胸のあるルディリアナはちょっとしたことでは怯えないし、怖がらない。
だけど、5歳のルディリアナでも不気味だと感じる程には、ルディリアナの後ろをついてくる男の子は異質である。
「名前は?」
ルディリアナの言葉は無視で、男の子はルディリアナに問うてくる。
知らない人に名前を言ったらダメだと教わっているルーナは、この人にだけは絶対に言っちゃダメだ!とキュッと口を引き結んだ。
だが、暫く沈黙が続けばまた「名前は?」と問われた。
それも無視して、ルディリアナはどんどん人気のない方に歩いていく。
そしてどれくらい歩いたであろう。
ここが何処かもわからないところまで来てしまった。
ルディリアナの背より高い扉が幾つもあるこの場所。
ずっと追いかけてくる訳もわからない男の子。
流石のルディリアナでも、この状況は怖かった。
気づいた時には泣いていた。
大声で泣いているのに、誰もやってこない。
屋敷で泣いてる時は必ず誰か来てくれるのに。
「こわいよぉ、お父様ぁ。お母様ぁ。」
わんわん泣き叫ぶルディリアナを見て、男の子は幸せそうに微笑んでいた。
「あぁ、可愛いなぁ。僕の花嫁は可愛いなぁ。」
男の子はそんな事も言っていたが、泣き叫ぶルディリアナにはその声は聞こえてなかった。
その後、ルディリアナがいなくなったと分かったマルフェスとリジィが王宮の使用人達にも必死に探してもらい、やっと見つけた時にはドアの目の前で転がって眠っていた。
その目はパンパンに腫れていて、その眠るルディリアナを座って眺めている男の子を見て、両親は恐怖を覚えたと、数年後に聞くことになるのであった。
そして、ルディリアナはこの時の事が酷くトラウマになり、王宮に近づく事がなくなったのであった。
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