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九。
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「すり鉢よーし!すりこぎよーし!床掃除よし!窓掃除よし!うーん、完璧!」
ルゥは一箇所一箇所掃除した場所を指差し確認した後、満足げに微笑んだ。
今日は王宮から、ノアの母。
つまりはこの国の王妃がノアに会いにやってくる日である。
ノア様は毎日きちんと生活できてますよ!と見せるために、ルゥはいつも薬草で溢れた部屋を「掃除なんてするな。」と言うノアの言葉を無視し、三日三晩掃除し続けた。
そのおかげで、今ノアの部屋は過去最高と言ってもいいほどに綺麗である。
「ルゥもやればできる子です!」
褒めてくれる人がいないため、ルゥは自分で自分を褒めてやる。
本当なら寝ているノアを無理矢理起こし、綺麗になった部屋を見せてやりたいが、今日のルゥはとても忙しい。
離宮には、あまり人がいないため、殆どの準備をしないといけないのである。
ルゥは部屋を出ると急いで応接間に向かった。
王妃様好みの装飾品は把握済みである。
ルゥは準備していた宝石が散りばめられた花瓶や時計を応接間に飾る。
ノアは余り派手な物を好まず、王族が使うには質素な物を好んで使っているため、どの部屋も王妃様の好みとはかけ離れていた。
ルゥはカーテンとカーペットを黒い物から真っ赤でフワフワな物に変更すると満足げに頷いた。
廊下にあった花瓶や額縁等も全て変えた。
思いつくだけの事を全てやり遂げたルゥは、次に急いでノアの元へと向かう。
ノアの自室のベットに着くと、スゥスゥと規則正しい寝息を立てるノアがいた。
栗色の髪に影を落とすほど長いまつ毛
目を開けばノアの目は宝石のようにキラキラと赤く輝く。
今、閉じられた目は長いまつ毛によって影を落としている。
目を閉じていれば、ノアはとても幼く見える。
いつも冷たい口調に落ち着いた対応をするため、大人びて見えるが、ルゥよりは大きくても同年齢の男性より小柄なノアは見た目だけで言えばとても幼く見える。
「ノア様、、、。」
頬をプニプニと押してみるが、ノアは全く起きる気配がない。
「可愛いわ。。」
プニプニプニプニ、プニプニプニプニとどれだけ触ってもノアは起きないでいる。
これは、触り放題である。
「やぁん、なんてモチモチなお肌をしてるんですかぁ。」
そう言って、またプニプニプニプニとノアの頬をつつく。
ノアが起きない事をいいことに、気の済むまで頬を突き続けたルゥは、「ふぅ。」と満足気に息をこぼすと、サラサラのノアの髪を撫で、ノアの部屋を後にした。
そして、1人応接間へと向かった。
応接間の扉の前には、2人の騎士が立っている。
片方は以前、ノアに見合い相手に会えと言ってきたルルベドという騎士である。
ルゥを見るなり、2人は応接間の扉を開けた。
扉が開けば、ルゥは中にいる女性と目が合う。
髪色こそ違うが、ノアと同じ赤い瞳をした女性は、ルゥを見るとニコリと微笑んだ。
「ルゥ、入りなさい。」
顔立ちはノアに似ているのに、その口調はノアのように優しくない。
たった一言話しただけなのに、その声には逆らえない力を感じる。
「はい、王妃様。」
部屋の中に入ると、次は王妃様の前に座るようにと正された。
ゆっくりとルゥが椅子に座ったのを見届けて、王妃は口を開いた。
「さて、ルゥ。貴方は私が与えた仕事を覚えているかしら??」
紅を塗った真っ赤な口が妖艶に動く。
「はい、いっときも忘れた事はありません。」
「そう、、いい子ね。ルゥ。こっちへいらっしゃい。」
手招きでルゥを側に呼ぶと、ルゥは何も言わず王妃の元へと向かう。
そしてルゥが側らにくると、王妃はルゥの頭を撫でた。
「可愛いわね。ルゥ。。。」
「ありがとうございます。王妃様。」
「こちらを見て。ルゥ。」
頭を撫でる手を止め、ルゥの頬に王妃がそっと触れる。
言われるがまま、ルゥが顔を上げ王妃を見ると、目があった。
大きく綺麗な赤い瞳には、涙が溜まり、キラキラといつも以上に輝いている。
「王妃様??」
泣き出した王妃にルゥが首を傾げれば、王妃はたった一言。
「早くして頂戴。」と言うだけであった。
王妃が帰った後、ルゥはノアの元へと向かう。
ノアは先程と同様、スゥスゥと規則正しい寝息を立てて寝ている。
プニプニと2度ほどその頬を触った後、ルゥはポケットから小瓶を出した。
「この、眠くなる薬。とってもよく効くのね。」
ノアからバレぬよう持ち出した小瓶を、元の場所にそっと戻すと、ルゥは直ぐにノアの元へと向かった。
「うん、、、」
薬の効果が切れてきたのか、目を少し開けたノアと目があった。
「ノア様おはようですぅ!」
ギュッと抱きしめると抵抗したいのだろう、ルゥの体を押しのけようとするが、寝起きのため、無駄な抵抗だ。
そんなノアを見て、ルゥが「やぁん、可愛い。」というと「ちっ。」と全く可愛くない舌打ちが返ってきたが、ルゥは全く気にしない。
それどころか、抵抗出来ないのをいいことに、ノアの上に跨ると、ノアをぎゅーぎゅーと力一杯抱きしめた。
「ばっ、ばかやめろ!お前!」
下では顔を赤らめたノアが怒っているが、ルゥは気にせずノアをぎゅぅぎゅぅと抱きしめる。
ノアの頭をギュゥっと抱きしめれば、ルゥの体型にしては育った胸が、ノアの顔を押し潰した。
「すきぃ、ノア様すきですぅ。」
ギュゥギュゥとこれでもか!というほど抱きしめると、ボカンと頭を殴られた。
それも結構本気である。
「いっ、、いたぃぃ!!痛いですぅ。」
頭を抑え、泣いたふりをするルゥを無視して、、、いや、ギロリと一度睨んだ後、ノアは部屋を後にするのであった。
ルゥは一箇所一箇所掃除した場所を指差し確認した後、満足げに微笑んだ。
今日は王宮から、ノアの母。
つまりはこの国の王妃がノアに会いにやってくる日である。
ノア様は毎日きちんと生活できてますよ!と見せるために、ルゥはいつも薬草で溢れた部屋を「掃除なんてするな。」と言うノアの言葉を無視し、三日三晩掃除し続けた。
そのおかげで、今ノアの部屋は過去最高と言ってもいいほどに綺麗である。
「ルゥもやればできる子です!」
褒めてくれる人がいないため、ルゥは自分で自分を褒めてやる。
本当なら寝ているノアを無理矢理起こし、綺麗になった部屋を見せてやりたいが、今日のルゥはとても忙しい。
離宮には、あまり人がいないため、殆どの準備をしないといけないのである。
ルゥは部屋を出ると急いで応接間に向かった。
王妃様好みの装飾品は把握済みである。
ルゥは準備していた宝石が散りばめられた花瓶や時計を応接間に飾る。
ノアは余り派手な物を好まず、王族が使うには質素な物を好んで使っているため、どの部屋も王妃様の好みとはかけ離れていた。
ルゥはカーテンとカーペットを黒い物から真っ赤でフワフワな物に変更すると満足げに頷いた。
廊下にあった花瓶や額縁等も全て変えた。
思いつくだけの事を全てやり遂げたルゥは、次に急いでノアの元へと向かう。
ノアの自室のベットに着くと、スゥスゥと規則正しい寝息を立てるノアがいた。
栗色の髪に影を落とすほど長いまつ毛
目を開けばノアの目は宝石のようにキラキラと赤く輝く。
今、閉じられた目は長いまつ毛によって影を落としている。
目を閉じていれば、ノアはとても幼く見える。
いつも冷たい口調に落ち着いた対応をするため、大人びて見えるが、ルゥよりは大きくても同年齢の男性より小柄なノアは見た目だけで言えばとても幼く見える。
「ノア様、、、。」
頬をプニプニと押してみるが、ノアは全く起きる気配がない。
「可愛いわ。。」
プニプニプニプニ、プニプニプニプニとどれだけ触ってもノアは起きないでいる。
これは、触り放題である。
「やぁん、なんてモチモチなお肌をしてるんですかぁ。」
そう言って、またプニプニプニプニとノアの頬をつつく。
ノアが起きない事をいいことに、気の済むまで頬を突き続けたルゥは、「ふぅ。」と満足気に息をこぼすと、サラサラのノアの髪を撫で、ノアの部屋を後にした。
そして、1人応接間へと向かった。
応接間の扉の前には、2人の騎士が立っている。
片方は以前、ノアに見合い相手に会えと言ってきたルルベドという騎士である。
ルゥを見るなり、2人は応接間の扉を開けた。
扉が開けば、ルゥは中にいる女性と目が合う。
髪色こそ違うが、ノアと同じ赤い瞳をした女性は、ルゥを見るとニコリと微笑んだ。
「ルゥ、入りなさい。」
顔立ちはノアに似ているのに、その口調はノアのように優しくない。
たった一言話しただけなのに、その声には逆らえない力を感じる。
「はい、王妃様。」
部屋の中に入ると、次は王妃様の前に座るようにと正された。
ゆっくりとルゥが椅子に座ったのを見届けて、王妃は口を開いた。
「さて、ルゥ。貴方は私が与えた仕事を覚えているかしら??」
紅を塗った真っ赤な口が妖艶に動く。
「はい、いっときも忘れた事はありません。」
「そう、、いい子ね。ルゥ。こっちへいらっしゃい。」
手招きでルゥを側に呼ぶと、ルゥは何も言わず王妃の元へと向かう。
そしてルゥが側らにくると、王妃はルゥの頭を撫でた。
「可愛いわね。ルゥ。。。」
「ありがとうございます。王妃様。」
「こちらを見て。ルゥ。」
頭を撫でる手を止め、ルゥの頬に王妃がそっと触れる。
言われるがまま、ルゥが顔を上げ王妃を見ると、目があった。
大きく綺麗な赤い瞳には、涙が溜まり、キラキラといつも以上に輝いている。
「王妃様??」
泣き出した王妃にルゥが首を傾げれば、王妃はたった一言。
「早くして頂戴。」と言うだけであった。
王妃が帰った後、ルゥはノアの元へと向かう。
ノアは先程と同様、スゥスゥと規則正しい寝息を立てて寝ている。
プニプニと2度ほどその頬を触った後、ルゥはポケットから小瓶を出した。
「この、眠くなる薬。とってもよく効くのね。」
ノアからバレぬよう持ち出した小瓶を、元の場所にそっと戻すと、ルゥは直ぐにノアの元へと向かった。
「うん、、、」
薬の効果が切れてきたのか、目を少し開けたノアと目があった。
「ノア様おはようですぅ!」
ギュッと抱きしめると抵抗したいのだろう、ルゥの体を押しのけようとするが、寝起きのため、無駄な抵抗だ。
そんなノアを見て、ルゥが「やぁん、可愛い。」というと「ちっ。」と全く可愛くない舌打ちが返ってきたが、ルゥは全く気にしない。
それどころか、抵抗出来ないのをいいことに、ノアの上に跨ると、ノアをぎゅーぎゅーと力一杯抱きしめた。
「ばっ、ばかやめろ!お前!」
下では顔を赤らめたノアが怒っているが、ルゥは気にせずノアをぎゅぅぎゅぅと抱きしめる。
ノアの頭をギュゥっと抱きしめれば、ルゥの体型にしては育った胸が、ノアの顔を押し潰した。
「すきぃ、ノア様すきですぅ。」
ギュゥギュゥとこれでもか!というほど抱きしめると、ボカンと頭を殴られた。
それも結構本気である。
「いっ、、いたぃぃ!!痛いですぅ。」
頭を抑え、泣いたふりをするルゥを無視して、、、いや、ギロリと一度睨んだ後、ノアは部屋を後にするのであった。
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