薬草王子に恋するメイド。

霙アルカ。

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六。

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その日、ルウはとっても上機嫌であった。

何と言っても、今日はお見合い相手にプレゼントする物を街まで2買いに来ているのである。

つまりこれは、、、「デートですね。ノア様!」

「デートじゃないから。」

横を歩くノアは冷たく言い放つ。

だがこれは完全に「デートなのですぅ。ルウは今、あのノア様とデートをしてるのですう!あっ!そこのおじさーん見てください!ルウは今、大好きな人とデートしてますよう!!」

ルウは屋台で肉を焼いていたおじさんに向かって大きく手を振りながら言うと、ノリの良い屋台のおじさんは「おう!嬢ちゃん彼氏とデートか!いいなあ!!」と手を振って返してくれた。

ルウはそう言われ、さらに大満足である。

「馬鹿か、お前は。」

ペチンと頭をはたかれ「痛いのですぅ。ノア様ぁ。」と泣きまねをすれば、ノアは面倒そうにため息を吐いた。

「ノア様ぁ、泣き止むので手を繋いで欲しいのです。」

横を歩くノアに手を差し出す。が、嘘泣きだとバレているため、ノアは一度ルウの手を見て、また歩き出した。

そんなちょっと冷たいところも、素敵。とルウは思う。

今日のノアはいつものように薬草まみれの汚れた服は着ておらず、きちんとした洋服を着ている。

ルウが無理やりつけさせた、ピアスも付いており、たまに髪の毛から見えるピアスがキラキラと光る度にルウの胸をドキドキとさせた。 

サラサラと揺れる肩まで伸びた栗色の髪も素敵。

たまにふわりと香ってくる、薬草の香りも素敵。

ルウにとって、ノアの全てが好きで好きで堪らないのである。

「好きですよぅ。ノア様。」

ルウはその場に立ち止まると、ノアに聞こえるか聞こえないか、微妙な大きさで呟いた。

きっと聞こえていないのだろう、ノアは立ち止まったルウを置いてどんどん進んでいく。

どんどんどんどん遠ざかっていくノアを見ながら、ルウは少し悲しくなった。

この恋が叶わないのはわかってる。

だから、馬鹿なふりしてそばに居るのだ。

だけど、時折悲しくなる。

どんどんノアが離れていく気がして、悲しくてたまらなくなるのだ。

「、、、何してんだ。行くよルウ。」

呆然と立ち尽くすルウに気づいたノアは、首を傾げルウの方へと戻ってきた。

そして、あれだけ嫌がってたくせに、ルウの手を握り歩き出すのだ。

「やぁん。ノア様!ルウはここまで願っておりませんが今なら死んでも構いません。」

「前からイカれてるけど、、そろそろ頭に効く薬でも作ってやろうか?」と辛辣な言葉を言われてもルウはとっても幸せである。

なんと言っても、ノアの手がルウの手と手の間に入り手を握っているのである。

「恋人繋ぎをして欲しいとまでは、ルウは願ってなかったのですぅ。幸せですぅ。」

嬉しさから本当に涙を流し出すルウを見て、ノアはギョッとした後、少し口角をあげ微笑んだ。

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