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四。
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最近のルウはとても困っていた。
なんと言っても、あのキスから部屋の主人であるノアの機嫌が大層悪いのである。
すり鉢をゴリゴリと擦っては、「はぁ。」とため息を吐き、ルウを一瞬睨み、またゴリゴリとすり鉢を擦る。
これの繰り返しである。
「あのぅ、ノア様。ルウはもう気にしてないですので、ノア様も気にしないで欲しいんですよぉ。」
わざとヘラヘラと笑って見せながら言うのだが、帰ってくるのは睨みだけで、とっても怖い。
蛇に睨まれた蛙状態である。
あの時は怖かったが、すり鉢の中にできた薬が媚薬だったせいっていうのを聞かされたルウは、全くこれっぽっちも怒っていないのは本当だ。
だから、何度ももう気にしてないと言ってるのに、ノアはもー1週間はこの状態である。
「あのぅ、ノア様。」
窓を拭きながら話しかけるルウの方をノアが見た。
勿論返事はなしだ。
「ルウはそろそろ寂しいのですね?もう、ノア様と長い事お話しできたないのです。とっても、とっても悲しいのです。」
窓を拭きながら、ルウは続ける、
「だからですね。そろそろお話しして欲しいのですぅ。ルウは、そろそろノア様不足で死んじゃうのです。」
窓を拭くのをやめ、顔を抑え「うっ、うっ。」とルウは嗚咽を漏らして泣いた。
ルウは知っている。
ノアはとても、女性の涙に弱い事を。
チラリと指の隙間から、ノアを見ると案の定すりこぎを机に置き、どうしようかとオロオロとしているのが見えた。
ルウの好きな薬草王子は、冷たく見えてとってもちょろいのである。
「いや、ルウ。あー、泣くな。きちんと話すから泣くな。」
えーんと泣きまねを続けるルウが本当に泣いていると思ってるであろうノアは、ルウの元に近づくと、遠慮がちにその頭に手を置いた。
そして、優しく頭を撫でる。
「、、、ルウ、ごめん。」
意識を失うまでキスした事を謝ってるのであろう。
少し言いにくそうに言うノアはとっても可愛いとルウは思う。
ルウは働き出してまだ2年程しか経っていないが、ノアの事ならとってもよく知っていると思う。
だから、ルウに対して謝る機会をずっと探しながら、恥ずかしさからか言い出せない思春期の少年のようなノアに対してどうしたらいいかも分かってた。
つまり、嘘泣きである。
大抵の男は思春期の少年であっても、女の子が泣いていたら、意地なんてはっていられなくなる。
「ノア様。」
「、、なんだ。」
ぶっきらぼうに答えるが、その声音はとっても優しい。
ルウは嬉しくなり、ふふっと笑うとノアに思いきり抱きついた。
「やぁん、ノア様やっぱり好きぃ。」
ムギュッと抱きつけば、ルウの小柄な体型にしては大きな胸が、ノアにあたり、ノアは少し顔を赤らめた。
ああ、天使。何て天使なのノア様。
とっても可愛くて、ルウの心はとっても幸せなのです。
「やめろ!やめろルウ!」
顔を赤らめ、ルウの体を無理やり離そうとするが、ルウも負けじと体に腕を絡め続けた。
「やですぅ。ルウの体でノア様をメロメロにするんです。」
さらに強く抱きしめ、体をギュッと密着させた。
「この、、馬鹿ルウが!1週間謹慎にするからな!」
顔を赤らめ、怒鳴ってきてもノアはちっとも怖くはない。
「はぁい、なら今のうちにたっくさんくっついとくのですぅ。」と言って、ルウは抱きつくのをやめなかった。
二人の攻防は、窓の外が暗くなるまで、続いたのであった。
なんと言っても、あのキスから部屋の主人であるノアの機嫌が大層悪いのである。
すり鉢をゴリゴリと擦っては、「はぁ。」とため息を吐き、ルウを一瞬睨み、またゴリゴリとすり鉢を擦る。
これの繰り返しである。
「あのぅ、ノア様。ルウはもう気にしてないですので、ノア様も気にしないで欲しいんですよぉ。」
わざとヘラヘラと笑って見せながら言うのだが、帰ってくるのは睨みだけで、とっても怖い。
蛇に睨まれた蛙状態である。
あの時は怖かったが、すり鉢の中にできた薬が媚薬だったせいっていうのを聞かされたルウは、全くこれっぽっちも怒っていないのは本当だ。
だから、何度ももう気にしてないと言ってるのに、ノアはもー1週間はこの状態である。
「あのぅ、ノア様。」
窓を拭きながら話しかけるルウの方をノアが見た。
勿論返事はなしだ。
「ルウはそろそろ寂しいのですね?もう、ノア様と長い事お話しできたないのです。とっても、とっても悲しいのです。」
窓を拭きながら、ルウは続ける、
「だからですね。そろそろお話しして欲しいのですぅ。ルウは、そろそろノア様不足で死んじゃうのです。」
窓を拭くのをやめ、顔を抑え「うっ、うっ。」とルウは嗚咽を漏らして泣いた。
ルウは知っている。
ノアはとても、女性の涙に弱い事を。
チラリと指の隙間から、ノアを見ると案の定すりこぎを机に置き、どうしようかとオロオロとしているのが見えた。
ルウの好きな薬草王子は、冷たく見えてとってもちょろいのである。
「いや、ルウ。あー、泣くな。きちんと話すから泣くな。」
えーんと泣きまねを続けるルウが本当に泣いていると思ってるであろうノアは、ルウの元に近づくと、遠慮がちにその頭に手を置いた。
そして、優しく頭を撫でる。
「、、、ルウ、ごめん。」
意識を失うまでキスした事を謝ってるのであろう。
少し言いにくそうに言うノアはとっても可愛いとルウは思う。
ルウは働き出してまだ2年程しか経っていないが、ノアの事ならとってもよく知っていると思う。
だから、ルウに対して謝る機会をずっと探しながら、恥ずかしさからか言い出せない思春期の少年のようなノアに対してどうしたらいいかも分かってた。
つまり、嘘泣きである。
大抵の男は思春期の少年であっても、女の子が泣いていたら、意地なんてはっていられなくなる。
「ノア様。」
「、、なんだ。」
ぶっきらぼうに答えるが、その声音はとっても優しい。
ルウは嬉しくなり、ふふっと笑うとノアに思いきり抱きついた。
「やぁん、ノア様やっぱり好きぃ。」
ムギュッと抱きつけば、ルウの小柄な体型にしては大きな胸が、ノアにあたり、ノアは少し顔を赤らめた。
ああ、天使。何て天使なのノア様。
とっても可愛くて、ルウの心はとっても幸せなのです。
「やめろ!やめろルウ!」
顔を赤らめ、ルウの体を無理やり離そうとするが、ルウも負けじと体に腕を絡め続けた。
「やですぅ。ルウの体でノア様をメロメロにするんです。」
さらに強く抱きしめ、体をギュッと密着させた。
「この、、馬鹿ルウが!1週間謹慎にするからな!」
顔を赤らめ、怒鳴ってきてもノアはちっとも怖くはない。
「はぁい、なら今のうちにたっくさんくっついとくのですぅ。」と言って、ルウは抱きつくのをやめなかった。
二人の攻防は、窓の外が暗くなるまで、続いたのであった。
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