5 / 11
四。
しおりを挟む
最近のルウはとても困っていた。
なんと言っても、あのキスから部屋の主人であるノアの機嫌が大層悪いのである。
すり鉢をゴリゴリと擦っては、「はぁ。」とため息を吐き、ルウを一瞬睨み、またゴリゴリとすり鉢を擦る。
これの繰り返しである。
「あのぅ、ノア様。ルウはもう気にしてないですので、ノア様も気にしないで欲しいんですよぉ。」
わざとヘラヘラと笑って見せながら言うのだが、帰ってくるのは睨みだけで、とっても怖い。
蛇に睨まれた蛙状態である。
あの時は怖かったが、すり鉢の中にできた薬が媚薬だったせいっていうのを聞かされたルウは、全くこれっぽっちも怒っていないのは本当だ。
だから、何度ももう気にしてないと言ってるのに、ノアはもー1週間はこの状態である。
「あのぅ、ノア様。」
窓を拭きながら話しかけるルウの方をノアが見た。
勿論返事はなしだ。
「ルウはそろそろ寂しいのですね?もう、ノア様と長い事お話しできたないのです。とっても、とっても悲しいのです。」
窓を拭きながら、ルウは続ける、
「だからですね。そろそろお話しして欲しいのですぅ。ルウは、そろそろノア様不足で死んじゃうのです。」
窓を拭くのをやめ、顔を抑え「うっ、うっ。」とルウは嗚咽を漏らして泣いた。
ルウは知っている。
ノアはとても、女性の涙に弱い事を。
チラリと指の隙間から、ノアを見ると案の定すりこぎを机に置き、どうしようかとオロオロとしているのが見えた。
ルウの好きな薬草王子は、冷たく見えてとってもちょろいのである。
「いや、ルウ。あー、泣くな。きちんと話すから泣くな。」
えーんと泣きまねを続けるルウが本当に泣いていると思ってるであろうノアは、ルウの元に近づくと、遠慮がちにその頭に手を置いた。
そして、優しく頭を撫でる。
「、、、ルウ、ごめん。」
意識を失うまでキスした事を謝ってるのであろう。
少し言いにくそうに言うノアはとっても可愛いとルウは思う。
ルウは働き出してまだ2年程しか経っていないが、ノアの事ならとってもよく知っていると思う。
だから、ルウに対して謝る機会をずっと探しながら、恥ずかしさからか言い出せない思春期の少年のようなノアに対してどうしたらいいかも分かってた。
つまり、嘘泣きである。
大抵の男は思春期の少年であっても、女の子が泣いていたら、意地なんてはっていられなくなる。
「ノア様。」
「、、なんだ。」
ぶっきらぼうに答えるが、その声音はとっても優しい。
ルウは嬉しくなり、ふふっと笑うとノアに思いきり抱きついた。
「やぁん、ノア様やっぱり好きぃ。」
ムギュッと抱きつけば、ルウの小柄な体型にしては大きな胸が、ノアにあたり、ノアは少し顔を赤らめた。
ああ、天使。何て天使なのノア様。
とっても可愛くて、ルウの心はとっても幸せなのです。
「やめろ!やめろルウ!」
顔を赤らめ、ルウの体を無理やり離そうとするが、ルウも負けじと体に腕を絡め続けた。
「やですぅ。ルウの体でノア様をメロメロにするんです。」
さらに強く抱きしめ、体をギュッと密着させた。
「この、、馬鹿ルウが!1週間謹慎にするからな!」
顔を赤らめ、怒鳴ってきてもノアはちっとも怖くはない。
「はぁい、なら今のうちにたっくさんくっついとくのですぅ。」と言って、ルウは抱きつくのをやめなかった。
二人の攻防は、窓の外が暗くなるまで、続いたのであった。
なんと言っても、あのキスから部屋の主人であるノアの機嫌が大層悪いのである。
すり鉢をゴリゴリと擦っては、「はぁ。」とため息を吐き、ルウを一瞬睨み、またゴリゴリとすり鉢を擦る。
これの繰り返しである。
「あのぅ、ノア様。ルウはもう気にしてないですので、ノア様も気にしないで欲しいんですよぉ。」
わざとヘラヘラと笑って見せながら言うのだが、帰ってくるのは睨みだけで、とっても怖い。
蛇に睨まれた蛙状態である。
あの時は怖かったが、すり鉢の中にできた薬が媚薬だったせいっていうのを聞かされたルウは、全くこれっぽっちも怒っていないのは本当だ。
だから、何度ももう気にしてないと言ってるのに、ノアはもー1週間はこの状態である。
「あのぅ、ノア様。」
窓を拭きながら話しかけるルウの方をノアが見た。
勿論返事はなしだ。
「ルウはそろそろ寂しいのですね?もう、ノア様と長い事お話しできたないのです。とっても、とっても悲しいのです。」
窓を拭きながら、ルウは続ける、
「だからですね。そろそろお話しして欲しいのですぅ。ルウは、そろそろノア様不足で死んじゃうのです。」
窓を拭くのをやめ、顔を抑え「うっ、うっ。」とルウは嗚咽を漏らして泣いた。
ルウは知っている。
ノアはとても、女性の涙に弱い事を。
チラリと指の隙間から、ノアを見ると案の定すりこぎを机に置き、どうしようかとオロオロとしているのが見えた。
ルウの好きな薬草王子は、冷たく見えてとってもちょろいのである。
「いや、ルウ。あー、泣くな。きちんと話すから泣くな。」
えーんと泣きまねを続けるルウが本当に泣いていると思ってるであろうノアは、ルウの元に近づくと、遠慮がちにその頭に手を置いた。
そして、優しく頭を撫でる。
「、、、ルウ、ごめん。」
意識を失うまでキスした事を謝ってるのであろう。
少し言いにくそうに言うノアはとっても可愛いとルウは思う。
ルウは働き出してまだ2年程しか経っていないが、ノアの事ならとってもよく知っていると思う。
だから、ルウに対して謝る機会をずっと探しながら、恥ずかしさからか言い出せない思春期の少年のようなノアに対してどうしたらいいかも分かってた。
つまり、嘘泣きである。
大抵の男は思春期の少年であっても、女の子が泣いていたら、意地なんてはっていられなくなる。
「ノア様。」
「、、なんだ。」
ぶっきらぼうに答えるが、その声音はとっても優しい。
ルウは嬉しくなり、ふふっと笑うとノアに思いきり抱きついた。
「やぁん、ノア様やっぱり好きぃ。」
ムギュッと抱きつけば、ルウの小柄な体型にしては大きな胸が、ノアにあたり、ノアは少し顔を赤らめた。
ああ、天使。何て天使なのノア様。
とっても可愛くて、ルウの心はとっても幸せなのです。
「やめろ!やめろルウ!」
顔を赤らめ、ルウの体を無理やり離そうとするが、ルウも負けじと体に腕を絡め続けた。
「やですぅ。ルウの体でノア様をメロメロにするんです。」
さらに強く抱きしめ、体をギュッと密着させた。
「この、、馬鹿ルウが!1週間謹慎にするからな!」
顔を赤らめ、怒鳴ってきてもノアはちっとも怖くはない。
「はぁい、なら今のうちにたっくさんくっついとくのですぅ。」と言って、ルウは抱きつくのをやめなかった。
二人の攻防は、窓の外が暗くなるまで、続いたのであった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】魔女のおしごと
かまり
恋愛
魔王と王子の間で揺れ動く魔女の恋物語。
——魔界人の中の1つの種である、『魔女』の仕事は魔界人たちの食糧を集めること。
魔界人の食糧とは、人間のマイナス感情から生まれるエネルギー。
つまり、魔界人にとっての家畜である人間の負の感情を育て、集めるのが『魔女のおしごと』。
しかし、大きな失敗をしたある1人の天才魔女は、魔界人に追い詰められて、その仕事を失った…
その魔女を復活させ、魔女としての道に戻し、一緒に歩もうとするツンデレ魔王と愛を育むのかと思われた矢先、
人間界で出会った優しい王子に愛されて気持ちが揺れ動いていく魔女の恋物語。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる