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薬草王子。
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王宮から少し離れた場所に建つ離宮には、少し変わった王子が住んでいる。
公の場に姿を表す事は余りなく、自室からすら出てくる事は余りない。
閉め切った扉の向こうからは、ゴリゴリ、ゴリゴリと何かを擦る音が今日も聞こえてくる。
そんな部屋の前に、一人の少女が立った。
茶色の髪に茶色の瞳、体型は小柄だが胸だけは少し大きい少女の名前はルウ。
この離宮のメイドである。
扉一枚隔てているのに、ルウの周りは既に草の匂いで囲まれている。
そんな匂いをルウは明いっぱい吸い込むと、「よしっ!!!!」と自分に喝を入れたのか、頬をペチンと叩いた。
そして、重く閉ざされた扉を開く。
ギィっという、扉の音だけが静かな空間に響いた。
「ルウ、入ってくるなと言っているだろう?」
入ってきた扉の方も見ずに、部屋の主はそう言った。
「だって、ノア様のお部屋はいつもいつも掃除しないと掃除しても掃除してもわちゃわちゃ~ってなって、汚いんですもん!!」
ルウは部屋中を見渡し、頬をプゥッと膨らませ怒るが部屋の主人のノアは、そんな事全く気にしていない。
「どうせ汚くなるから、しないでいい。」
ノアは、そう答えると机に置いてあるいくつかの草と真っ赤な液体に何かの尻尾をすり鉢の中に入れ、ゴリゴリゴリゴリとすり潰す。
すると、部屋中に異様な香りが香り立つ。
「臭いです!!臭いですよ!ノア様!」
「なら、さっさと出ていきなよ。」
鼻を指で押さえ、眉間に皺を寄せ匂いをルウは堪えるが、ノアは顔色ひとつ変えずに、すり鉢をひたすらにゴリゴリゴリゴリとすり潰している。
だが、暫くしてもルウからの返事や、部屋を出ていく音は聞こえずに、ふと後ろを振り向いた。
だが、後ろには先ほどまでいたであろうルウの姿がない。
もしや、と思い、そっと下に目をやるとルウはパタリと床に倒れ込んでいた。
「、、、ハァッ。」
ノアは面倒だと言うことを隠しもせずに、大きくため息を吐くと、持っていたすりこぎを机に置き、ルウの元に向かう。
パタリと倒れているルウの元まで行くと、ルウの口元が微妙にピクピクと動いている事がわかり、ノアは更に大きくため息を吐いた。
「おい、ルウ。バレてるぞ。」
ペチンと優しく頬を叩くと、ルウは胸元で手を合わせそっと唇を突き出した。
「ノア様がキスしてくれたら目を覚ますのです。」
ドキドキと煩くなる鼓動は部屋中に響いていて、ノアにも聞こえている。
ノアはそっとルウの近くに座るとゆっくりとルウに近づいた。
そして、ルウの顔にゆっくりゆっくりと近づきチュッとした音と共に、唇に何かが触れた。
あっ、ノア様の口ってすっごく小さいのね、、、。とルウは思った。
そう、例えるなら小指一本。
でも、いつも見るノア様には女の子みたいにプニプニしてそうな唇がついてるのをしっている。
だから、こんな小さいなんて、おかしい。
そっと目を開けると、ルウは茶色い生き物と目がパチリと合う。
小さなお目目がとってもチャーミングなトカゲである。
つまり、ルウにキスしたのもトカゲである。
そのトカゲを持ってるのは、勿論ノアである。
ワナワナと怒りで震えるルウとは対照に、ノアは楽しそうに笑っている。
「ノア様、、、!!」
「馬鹿だなぁ。」
と言って、柔らかそうな唇を動かすものだから、ルウは思わずその唇にそっと自分の唇を重ねた。
だが、ノアは笑うのも辞め何事もなかったように、机に戻りすり鉢の中身をまた擦るのであった。
公の場に姿を表す事は余りなく、自室からすら出てくる事は余りない。
閉め切った扉の向こうからは、ゴリゴリ、ゴリゴリと何かを擦る音が今日も聞こえてくる。
そんな部屋の前に、一人の少女が立った。
茶色の髪に茶色の瞳、体型は小柄だが胸だけは少し大きい少女の名前はルウ。
この離宮のメイドである。
扉一枚隔てているのに、ルウの周りは既に草の匂いで囲まれている。
そんな匂いをルウは明いっぱい吸い込むと、「よしっ!!!!」と自分に喝を入れたのか、頬をペチンと叩いた。
そして、重く閉ざされた扉を開く。
ギィっという、扉の音だけが静かな空間に響いた。
「ルウ、入ってくるなと言っているだろう?」
入ってきた扉の方も見ずに、部屋の主はそう言った。
「だって、ノア様のお部屋はいつもいつも掃除しないと掃除しても掃除してもわちゃわちゃ~ってなって、汚いんですもん!!」
ルウは部屋中を見渡し、頬をプゥッと膨らませ怒るが部屋の主人のノアは、そんな事全く気にしていない。
「どうせ汚くなるから、しないでいい。」
ノアは、そう答えると机に置いてあるいくつかの草と真っ赤な液体に何かの尻尾をすり鉢の中に入れ、ゴリゴリゴリゴリとすり潰す。
すると、部屋中に異様な香りが香り立つ。
「臭いです!!臭いですよ!ノア様!」
「なら、さっさと出ていきなよ。」
鼻を指で押さえ、眉間に皺を寄せ匂いをルウは堪えるが、ノアは顔色ひとつ変えずに、すり鉢をひたすらにゴリゴリゴリゴリとすり潰している。
だが、暫くしてもルウからの返事や、部屋を出ていく音は聞こえずに、ふと後ろを振り向いた。
だが、後ろには先ほどまでいたであろうルウの姿がない。
もしや、と思い、そっと下に目をやるとルウはパタリと床に倒れ込んでいた。
「、、、ハァッ。」
ノアは面倒だと言うことを隠しもせずに、大きくため息を吐くと、持っていたすりこぎを机に置き、ルウの元に向かう。
パタリと倒れているルウの元まで行くと、ルウの口元が微妙にピクピクと動いている事がわかり、ノアは更に大きくため息を吐いた。
「おい、ルウ。バレてるぞ。」
ペチンと優しく頬を叩くと、ルウは胸元で手を合わせそっと唇を突き出した。
「ノア様がキスしてくれたら目を覚ますのです。」
ドキドキと煩くなる鼓動は部屋中に響いていて、ノアにも聞こえている。
ノアはそっとルウの近くに座るとゆっくりとルウに近づいた。
そして、ルウの顔にゆっくりゆっくりと近づきチュッとした音と共に、唇に何かが触れた。
あっ、ノア様の口ってすっごく小さいのね、、、。とルウは思った。
そう、例えるなら小指一本。
でも、いつも見るノア様には女の子みたいにプニプニしてそうな唇がついてるのをしっている。
だから、こんな小さいなんて、おかしい。
そっと目を開けると、ルウは茶色い生き物と目がパチリと合う。
小さなお目目がとってもチャーミングなトカゲである。
つまり、ルウにキスしたのもトカゲである。
そのトカゲを持ってるのは、勿論ノアである。
ワナワナと怒りで震えるルウとは対照に、ノアは楽しそうに笑っている。
「ノア様、、、!!」
「馬鹿だなぁ。」
と言って、柔らかそうな唇を動かすものだから、ルウは思わずその唇にそっと自分の唇を重ねた。
だが、ノアは笑うのも辞め何事もなかったように、机に戻りすり鉢の中身をまた擦るのであった。
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