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見上げれば紅蓮の炎に焼かれた真っ赤な空。
見下ろせば廃墟と化した街並みが。
遠くには元はスカイツリーだった建物が瓦礫と化して見えた、
ここは、とあるビルの屋上。
うなだれる男の傍らには一人の男と一人の女が立たずんでいる、
3月の夜だというのに辺りの熱気で噎せ返る熱さだ、うなだれる男は時計をチラリと見て隣りの女に声を掛けた、女はそれには答えない、地震が起こる事を知りながら止められなかった悔しさでうなだれる男は、時間が戻せたらと本気で思った。
女性「・・・・○○さん、・・・田島さん!」
不意に冴子が話しかけてきた。
冴子「居眠りしている様だけど、頼んでいた原稿、出来上がっているの?」
ハッと我に返った田島は、ここが会社で今は仕事中だいうことを思い出し、辺りを見回すと同僚達が忙しそうに 働いている。
田島はボーとする振りをして彼女の問いかけには一切答えず、先ほどまで見ていた夢を思い出そうと頭を二三度振った。
田島 昌幸 (たじま まさゆき)は、東京にある小さな出版社に勤めるジャーナリストである、長身 痩せ型、強面だが人付き合いは良く部下の面倒見も良い、酒は飲めない、飲まないのには訳が有る休みはほとんどないが、暇が有ると車いじりが趣味 記事の目標を定めると自慢の愛車で、どこまでも追跡する。
タレントで言うと松重 豊似の男で、
入社以来政治部一筋、それなりの成果も出してきた男だった。
それが何故? やる気を無くしているのかというと、二年前にある事件に関わったせいで政治部から芸能部へ左遷され彼女と組まされた為である。
彼女の名前は東條 冴子(とうじょう さえこ)入社1年目の新人なのに田島の上司で、田島にしてみれば、これは会社が田島に何もするなと言っているようなものだ、そう解釈している。
時刻は昼 少し前の11時30分、編集部のモニターには、くだらないアイドルの話題が映しだされている、田島はなにをする訳でもなく、その映像を見ている、
今日もいつもと同じ1日が過ぎる筈だった。
その時、デスクの電話がけたたましく鳴る。
今のご時世、電話など苦情ぐらいでしかかかってこない、
田島は辺りを見回して誰も出ないのを確認し、少し躊躇いながら電話に出ると、相手の男は早口でこう言った。
男「 今日、福島県で地震が起きる❗️奴等は、紋章術を使って自由に起こす事が出来るんだ‼︎ 」
男「紫門には気をつけろ! 」
田島はため息を一つ吐き、電話の内容に呆れながら、「紋章術だと?そんなネタ、記事にしたところで芸能部でも取り上げられない、」そう呟きながら、
相手の名前を聞こうと思った瞬間、電話は切れてしまった。
田島は半年前に冴子の指示で福島県のご当地アイドルの取材をした時に紫門に会った事がある、アイドルが完成したばかりの災害指令センターの1日センター長になるイベントだ、田島は嫌々取材した記憶がある。
田島はその際に紫門にも紹介された、田島が感じた紫門の印象は(やりて)という感じで、代議士の経験はあるのだろうが、知事になって間もないのにこれだけの物を作るのは並大抵の事ではなくその実力を感じさせた。
田島は福島県と紫門というワードが気になったが、また 何事もない様にモニターに目をやった。
そこには福島県での避難訓練を伝えるニュースが流れていた。
現福島県知事 紫門 悠人 (さいもん ゆうと) は時計を忙しく見ながら各部署に指示を出していた、
大規模な災害避難訓練の今日、
紫門にとっては一生を左右する一日が始まった。
紫門が居る場所は福島県にある災害指令センターである。
紫門は二年前まで現職の国会議員だった男である、それが突然、議員を辞職して福島県知事選に立候補し圧倒的な支持を集めトップ当選し今に至る。
紫門「住民の避難は完了したのか?」
忙しく指示を出しながら時計を気にする紫門には時計を気にする理由があった。
今回の訓練は福島県全域はもちろんの事、各地の自衛隊、果ては米軍まで参加する大規模訓練というだけでなく、ある計画が秘密裏に進行している為である。
紫門「避難は完了したのか?」
また同じ指示を出しながら、誰にも聞こえない声で、
「やっと、この日が来た」と、呟きながら紫門は福島県知事になった日の事を思い出していた。
紫門は六歳の時に阪神淡路大震災を経験し、
その時に両親を無くしていた。
天涯孤独の紫門を引き取ったのは、幸福の未来科学の会という宗教団体で彼はこれまで教団の為に尽くしきた。
幸福の未来科学の会....宗教団体と言っても宗教活動は一切やっておらず、医療法人や大手ゼネコンなどを傘下に持つ得体の知れない団体だ。
噂では世界ネットワークの一員などという都市伝説的な噂まである。
世界ネットワーク、世界の経済を裏からコントロールする謎の集団、準メンバーまで入れると世界に数百人いるとされ、世界で起こった戦争の大半になんらかの形で介入していると言われている。
二年前の議員を辞めて知事になってもらいたいという教団の願いにも計画の為、従ってきた。
計画とは人工地震を教団の手で起こすという途方ない事だった❗️
人工地震を起こすという教団の計画に最初は反対した紫門だったが、住民は事前に避難させる、尚且つ人工地震により大きな地震が防げる可能性があると説得され、
幼いとき 阪神淡路地震を経験した紫門は二度とあの様な体験を今の子供たちにさせてはならないという想いがあった為この計画を承諾した。
おりしも前福島県知事が謎の死を遂げた為、
紫門が知事となり、教団は舞台を福島に定め計画は進んでいくのである。
二年前の福島県知事の死、ジャーナリスト田島が左遷されるきっかけになった事件である。
現職の県知事が、心臓麻痺による突然死という事で当時はマスコミを賑わせたものだ。
田島も政治部だった為、このネタを取材したのだが、結局、知事のかかりつけ医が教団の関係者というところまで分かった所で、社から横槍が入り取材は中止され、死因は自然死という事で終わった。
が、納得のいかない田島は独自で調査を続けていた、その事が会社にバレて左遷されたのである。
やる気を無くして二年、今日、謎の電話により大きな転機を迎える事となる。
教団は次のターゲットを地質学者の真淵 秀樹 (まぶち ひでき)に定め近づいた。
地震、発生の約一年前の事である。
真淵はこの頃、地脈の研究に没頭しており日本各地の地質調査の為に資金難になっていた、
そこに教団はスポンサーとして名乗りを挙げたのである、
表立っては紫門が福島県の地質調査の依頼という形を取った。
真淵にしてみれば資金も調達出来る上に地質調査も出来る、
正に一石二鳥と、直ぐにその話しに飛びついた。
調査する時になって人工地震を使用したいという知事の提案にも、もともと地質の調査には人工地震を使った調査があり、真淵もそれほど不思議がらなかった。
しかし、調査が進むにつれ、単なる地質調査では無いと感じ始めた時、真淵の前に教団関係者が現れた。
教団に軟禁された真淵はそこで計画の全貌を聞かされたのである。
計画を聞かされても真淵は心の中で馬鹿にした様に、大規模な地震を人工的に起こすなんて事は不可能だと安心していた、そう、あの日までは・・・・・。
その日、真淵の前に教団関係者が連れて来たのは、二人の外国人だった、眼光鋭く その身体は服の上からでも筋肉の盛り上がりが判るほど鍛えられており、真淵にも一目でこの二人が軍人であることが分かった。
軍隊が関わっている、真淵は最悪の事態を思い浮かべ、青ざめた顔で男達に
「米軍関係者?」と質問したが、男達は何も答えず真淵が作成したデーターを見て話し合っており、
一通り見終わると、真淵に向かって、さすがはミスターマブチ、こちらの欲しかったリュウミャクのデーターが揃っていると、こちらに近づきながら話し掛けてきた。
真淵はさらに青ざめ リュウミャク?
竜脈だと❗️
大規模地震のからくりはこれか!と心の中で叫んだ。
竜脈とは地脈の研究をする中で真淵が発見した現象で、竜脈などと大層な、名前が付けられてはいるが、ようはちがう地質同士が結び合う箇所で北海道から九州まで至る所で確認されており、それ自体は何処にでもあるものである。
しかし、地脈に刺激を与えた時に地脈同士が反応しあい刺激を増幅する現象を真淵が発見して、中国の気功にヒントを得て名付けたものである。
真淵は思った!
確かに米軍の力を持ってすれば、大規模地震を起こすだけの刺激を竜脈に与える事が可能だろうと、
真淵は無駄だと知りつつデーターを取り返そうと軍人に近づいたが、軍人の一撃で気を失った。
真淵が気絶から目を覚ましたのは、いつもの部屋だったが、いつもとは雰囲気が違っていた、24時間見張っているはずの教団の監視役の姿が見えなくなっているのである。
どのくらい気絶していたんだろか、相当の空腹感を感じる、真淵はあたりを見回して、人の気配のないことを確認すると、何とか外部と連絡を取ろうと携帯電話を探し始めた。
案の定、いつも使っている電話はなくなっていたが、真淵には秘策があった、
地質の調査に使用している計測器に土砂に埋まったときのためにGPS発信型
通信機が取り付けてあったのだ。
真淵は計測器のカバーを外すと、やはり教団もこれには気づかなかったと見えて通信機があった、真淵は外部と連絡を取ろうと研究室の学生の番号を押しかけ、手が止まった!
今、学生に助けを求め俺の居場所に近づかせるのが、果たして正解なのか?
こんなことに学生を巻き込んで良いのだろうか?
真淵は考えながらあたりを見回し、部屋のテレビをつけた。
幸い部屋の電源は落とされてはおらず、時刻は昼前とあってどのテレビ局もバラエティー番組を放送しており、真淵はテレビ局に電話をしてみようとしたが、テレビ局がこんなことを相手にしてくれないと思いやめてしまった。
次に目に止まったのは、芸能人のゴシップや超常現象などを扱う雑誌で、
真淵はこういう類のものはめったに読まないが、以前に竜脈の件で取材を受けたことがあったため、
その記事が載った雑誌を常に持ち歩いていた、
読みもしないのになぜかと言うと、自分の研究を学生たちに説明するのに便利だったからである。
真淵は雑誌のページをめくり、番号を確認し編集部へ電話をかけると、一呼吸して、わざと興味を引く様に、
名前も告げずに、こう言い放った、
「今日、福島県で地震が起きる、紫門には気を付けろ!」
電話の相手は誰だかわからなかったが、この内容に少しでも興味を持ってくれることを願いつつ電話を切った。
真淵には時間がないことがなんとなくわかった、テレビでは先ほどから福島県での避難訓練の様子を伝えている、
今日、地震が起きる❗️
教団に連れて来られた時の移動距離から、ここが福島県内のどこかだという事は明らかだった。
監視役の者達が居なくなっていることから此処も危険なのだろうということは容易に判断できた。
真淵は無駄とわかっているが脱出出来ないか、辺りを調べ回ったが、窓の無い施錠された、この部屋からの脱出をあきらめ、今までの経緯を自分が死んだ後に知ってもらう為、メモに記入して、静かに目を閉じた。
現場指揮官「○○地区避難完了!」
現場指揮官「全地域の避難完了しました!」
最後の報告を受けて、司令センターでは職員達がホッとしている中、
紫門だけは、真剣な表情でモニターを見つめている。
職員の一人がそれに気付き、声を掛けようと近づいた時である。
「ゴゴゴゴ」という地響きと共に辺りが揺れだした。
職員達がざわめく中、
紫門だけは冷静に時計に目をやり、辺りには聞こえない声で、
「時間通りだ!」と呟いた。
計画では今回の地震は震度4弱程度になるはずで、
避難が完了している今、人的被害は出ない筈である。
紫門は地震がおさまるのを待って指示を出すつもりだったが、
いつまで経っても、おさまるどころか
強まり続け、センター内は危険を伝えるアラームの音が鳴り響いていた。
モニターからは各地の被害状況を伝える映像が映し出され始め、職員達が混乱する中、紫門はただ一言。
「でかすぎる❗️」と叫んだ後、
みんなの前から姿を消してしまった。
見下ろせば廃墟と化した街並みが。
遠くには元はスカイツリーだった建物が瓦礫と化して見えた、
ここは、とあるビルの屋上。
うなだれる男の傍らには一人の男と一人の女が立たずんでいる、
3月の夜だというのに辺りの熱気で噎せ返る熱さだ、うなだれる男は時計をチラリと見て隣りの女に声を掛けた、女はそれには答えない、地震が起こる事を知りながら止められなかった悔しさでうなだれる男は、時間が戻せたらと本気で思った。
女性「・・・・○○さん、・・・田島さん!」
不意に冴子が話しかけてきた。
冴子「居眠りしている様だけど、頼んでいた原稿、出来上がっているの?」
ハッと我に返った田島は、ここが会社で今は仕事中だいうことを思い出し、辺りを見回すと同僚達が忙しそうに 働いている。
田島はボーとする振りをして彼女の問いかけには一切答えず、先ほどまで見ていた夢を思い出そうと頭を二三度振った。
田島 昌幸 (たじま まさゆき)は、東京にある小さな出版社に勤めるジャーナリストである、長身 痩せ型、強面だが人付き合いは良く部下の面倒見も良い、酒は飲めない、飲まないのには訳が有る休みはほとんどないが、暇が有ると車いじりが趣味 記事の目標を定めると自慢の愛車で、どこまでも追跡する。
タレントで言うと松重 豊似の男で、
入社以来政治部一筋、それなりの成果も出してきた男だった。
それが何故? やる気を無くしているのかというと、二年前にある事件に関わったせいで政治部から芸能部へ左遷され彼女と組まされた為である。
彼女の名前は東條 冴子(とうじょう さえこ)入社1年目の新人なのに田島の上司で、田島にしてみれば、これは会社が田島に何もするなと言っているようなものだ、そう解釈している。
時刻は昼 少し前の11時30分、編集部のモニターには、くだらないアイドルの話題が映しだされている、田島はなにをする訳でもなく、その映像を見ている、
今日もいつもと同じ1日が過ぎる筈だった。
その時、デスクの電話がけたたましく鳴る。
今のご時世、電話など苦情ぐらいでしかかかってこない、
田島は辺りを見回して誰も出ないのを確認し、少し躊躇いながら電話に出ると、相手の男は早口でこう言った。
男「 今日、福島県で地震が起きる❗️奴等は、紋章術を使って自由に起こす事が出来るんだ‼︎ 」
男「紫門には気をつけろ! 」
田島はため息を一つ吐き、電話の内容に呆れながら、「紋章術だと?そんなネタ、記事にしたところで芸能部でも取り上げられない、」そう呟きながら、
相手の名前を聞こうと思った瞬間、電話は切れてしまった。
田島は半年前に冴子の指示で福島県のご当地アイドルの取材をした時に紫門に会った事がある、アイドルが完成したばかりの災害指令センターの1日センター長になるイベントだ、田島は嫌々取材した記憶がある。
田島はその際に紫門にも紹介された、田島が感じた紫門の印象は(やりて)という感じで、代議士の経験はあるのだろうが、知事になって間もないのにこれだけの物を作るのは並大抵の事ではなくその実力を感じさせた。
田島は福島県と紫門というワードが気になったが、また 何事もない様にモニターに目をやった。
そこには福島県での避難訓練を伝えるニュースが流れていた。
現福島県知事 紫門 悠人 (さいもん ゆうと) は時計を忙しく見ながら各部署に指示を出していた、
大規模な災害避難訓練の今日、
紫門にとっては一生を左右する一日が始まった。
紫門が居る場所は福島県にある災害指令センターである。
紫門は二年前まで現職の国会議員だった男である、それが突然、議員を辞職して福島県知事選に立候補し圧倒的な支持を集めトップ当選し今に至る。
紫門「住民の避難は完了したのか?」
忙しく指示を出しながら時計を気にする紫門には時計を気にする理由があった。
今回の訓練は福島県全域はもちろんの事、各地の自衛隊、果ては米軍まで参加する大規模訓練というだけでなく、ある計画が秘密裏に進行している為である。
紫門「避難は完了したのか?」
また同じ指示を出しながら、誰にも聞こえない声で、
「やっと、この日が来た」と、呟きながら紫門は福島県知事になった日の事を思い出していた。
紫門は六歳の時に阪神淡路大震災を経験し、
その時に両親を無くしていた。
天涯孤独の紫門を引き取ったのは、幸福の未来科学の会という宗教団体で彼はこれまで教団の為に尽くしきた。
幸福の未来科学の会....宗教団体と言っても宗教活動は一切やっておらず、医療法人や大手ゼネコンなどを傘下に持つ得体の知れない団体だ。
噂では世界ネットワークの一員などという都市伝説的な噂まである。
世界ネットワーク、世界の経済を裏からコントロールする謎の集団、準メンバーまで入れると世界に数百人いるとされ、世界で起こった戦争の大半になんらかの形で介入していると言われている。
二年前の議員を辞めて知事になってもらいたいという教団の願いにも計画の為、従ってきた。
計画とは人工地震を教団の手で起こすという途方ない事だった❗️
人工地震を起こすという教団の計画に最初は反対した紫門だったが、住民は事前に避難させる、尚且つ人工地震により大きな地震が防げる可能性があると説得され、
幼いとき 阪神淡路地震を経験した紫門は二度とあの様な体験を今の子供たちにさせてはならないという想いがあった為この計画を承諾した。
おりしも前福島県知事が謎の死を遂げた為、
紫門が知事となり、教団は舞台を福島に定め計画は進んでいくのである。
二年前の福島県知事の死、ジャーナリスト田島が左遷されるきっかけになった事件である。
現職の県知事が、心臓麻痺による突然死という事で当時はマスコミを賑わせたものだ。
田島も政治部だった為、このネタを取材したのだが、結局、知事のかかりつけ医が教団の関係者というところまで分かった所で、社から横槍が入り取材は中止され、死因は自然死という事で終わった。
が、納得のいかない田島は独自で調査を続けていた、その事が会社にバレて左遷されたのである。
やる気を無くして二年、今日、謎の電話により大きな転機を迎える事となる。
教団は次のターゲットを地質学者の真淵 秀樹 (まぶち ひでき)に定め近づいた。
地震、発生の約一年前の事である。
真淵はこの頃、地脈の研究に没頭しており日本各地の地質調査の為に資金難になっていた、
そこに教団はスポンサーとして名乗りを挙げたのである、
表立っては紫門が福島県の地質調査の依頼という形を取った。
真淵にしてみれば資金も調達出来る上に地質調査も出来る、
正に一石二鳥と、直ぐにその話しに飛びついた。
調査する時になって人工地震を使用したいという知事の提案にも、もともと地質の調査には人工地震を使った調査があり、真淵もそれほど不思議がらなかった。
しかし、調査が進むにつれ、単なる地質調査では無いと感じ始めた時、真淵の前に教団関係者が現れた。
教団に軟禁された真淵はそこで計画の全貌を聞かされたのである。
計画を聞かされても真淵は心の中で馬鹿にした様に、大規模な地震を人工的に起こすなんて事は不可能だと安心していた、そう、あの日までは・・・・・。
その日、真淵の前に教団関係者が連れて来たのは、二人の外国人だった、眼光鋭く その身体は服の上からでも筋肉の盛り上がりが判るほど鍛えられており、真淵にも一目でこの二人が軍人であることが分かった。
軍隊が関わっている、真淵は最悪の事態を思い浮かべ、青ざめた顔で男達に
「米軍関係者?」と質問したが、男達は何も答えず真淵が作成したデーターを見て話し合っており、
一通り見終わると、真淵に向かって、さすがはミスターマブチ、こちらの欲しかったリュウミャクのデーターが揃っていると、こちらに近づきながら話し掛けてきた。
真淵はさらに青ざめ リュウミャク?
竜脈だと❗️
大規模地震のからくりはこれか!と心の中で叫んだ。
竜脈とは地脈の研究をする中で真淵が発見した現象で、竜脈などと大層な、名前が付けられてはいるが、ようはちがう地質同士が結び合う箇所で北海道から九州まで至る所で確認されており、それ自体は何処にでもあるものである。
しかし、地脈に刺激を与えた時に地脈同士が反応しあい刺激を増幅する現象を真淵が発見して、中国の気功にヒントを得て名付けたものである。
真淵は思った!
確かに米軍の力を持ってすれば、大規模地震を起こすだけの刺激を竜脈に与える事が可能だろうと、
真淵は無駄だと知りつつデーターを取り返そうと軍人に近づいたが、軍人の一撃で気を失った。
真淵が気絶から目を覚ましたのは、いつもの部屋だったが、いつもとは雰囲気が違っていた、24時間見張っているはずの教団の監視役の姿が見えなくなっているのである。
どのくらい気絶していたんだろか、相当の空腹感を感じる、真淵はあたりを見回して、人の気配のないことを確認すると、何とか外部と連絡を取ろうと携帯電話を探し始めた。
案の定、いつも使っている電話はなくなっていたが、真淵には秘策があった、
地質の調査に使用している計測器に土砂に埋まったときのためにGPS発信型
通信機が取り付けてあったのだ。
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今、学生に助けを求め俺の居場所に近づかせるのが、果たして正解なのか?
こんなことに学生を巻き込んで良いのだろうか?
真淵は考えながらあたりを見回し、部屋のテレビをつけた。
幸い部屋の電源は落とされてはおらず、時刻は昼前とあってどのテレビ局もバラエティー番組を放送しており、真淵はテレビ局に電話をしてみようとしたが、テレビ局がこんなことを相手にしてくれないと思いやめてしまった。
次に目に止まったのは、芸能人のゴシップや超常現象などを扱う雑誌で、
真淵はこういう類のものはめったに読まないが、以前に竜脈の件で取材を受けたことがあったため、
その記事が載った雑誌を常に持ち歩いていた、
読みもしないのになぜかと言うと、自分の研究を学生たちに説明するのに便利だったからである。
真淵は雑誌のページをめくり、番号を確認し編集部へ電話をかけると、一呼吸して、わざと興味を引く様に、
名前も告げずに、こう言い放った、
「今日、福島県で地震が起きる、紫門には気を付けろ!」
電話の相手は誰だかわからなかったが、この内容に少しでも興味を持ってくれることを願いつつ電話を切った。
真淵には時間がないことがなんとなくわかった、テレビでは先ほどから福島県での避難訓練の様子を伝えている、
今日、地震が起きる❗️
教団に連れて来られた時の移動距離から、ここが福島県内のどこかだという事は明らかだった。
監視役の者達が居なくなっていることから此処も危険なのだろうということは容易に判断できた。
真淵は無駄とわかっているが脱出出来ないか、辺りを調べ回ったが、窓の無い施錠された、この部屋からの脱出をあきらめ、今までの経緯を自分が死んだ後に知ってもらう為、メモに記入して、静かに目を閉じた。
現場指揮官「○○地区避難完了!」
現場指揮官「全地域の避難完了しました!」
最後の報告を受けて、司令センターでは職員達がホッとしている中、
紫門だけは、真剣な表情でモニターを見つめている。
職員の一人がそれに気付き、声を掛けようと近づいた時である。
「ゴゴゴゴ」という地響きと共に辺りが揺れだした。
職員達がざわめく中、
紫門だけは冷静に時計に目をやり、辺りには聞こえない声で、
「時間通りだ!」と呟いた。
計画では今回の地震は震度4弱程度になるはずで、
避難が完了している今、人的被害は出ない筈である。
紫門は地震がおさまるのを待って指示を出すつもりだったが、
いつまで経っても、おさまるどころか
強まり続け、センター内は危険を伝えるアラームの音が鳴り響いていた。
モニターからは各地の被害状況を伝える映像が映し出され始め、職員達が混乱する中、紫門はただ一言。
「でかすぎる❗️」と叫んだ後、
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