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第 4 章 竜族の里 編
兄妹対決
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俺は奥義を剣舞(ソードダンス)と名付けた。
剣気で発生する無数の剣尖がまるで舞を舞っているがごとくの奥義!
ソードダンス、俺に相応しい名前だが、俺の奥義は竜徒に放ったあの一度きりで使えなくなってしまった。
あの後、カイトを相手に何度試しても出ることはなく、リュカクとの決戦が迫る中、俺の焦りは頂点に達していた。
剣気の強さは想いの強さ、奥義を放ったあの時と俺は変わらず仲間を守りたいと想っている。
その想いに嘘はない、しかし、竜徒の村を後にする俺達を見る竜徒の子供たちの目が俺の頭から離れない。
自分たちを必死に守ろうとする竜徒を容赦なく斬りつける者達、憎悪に近い憎しみを込めた目。
王都の民衆が竜徒達を見る目と同じ視線が俺達の行いを否定する。
この後、竜徒達はどうなるのだろう、竜徒達を傷つけた俺が言えた義理ではないことはわかっているが。
彼等が竜徒である限りその力を恐れる者は何度でも彼等に力の暴力を送ってくる。
いままでは彼等の力で退け平和を保ってきた竜徒の村もいつかは限界がくるだろう。
その時、彼等に行き場はあるのだろうか?
有るわけがない!大陸中を敵に回した彼等に待っているのは永遠の流離。
モンスターを引き寄せ戦い続ける俺と同じく、有りもしない安住の地を求めて人と戦う日々が待っているのみ。
彼等が自ら選んだ道でも、その道の何処かに救いがあったとしてもいいはずだ、幸せと不幸の天秤は常に釣り合う。
不幸続きの竜徒達の道の先に幸せの未来があるのなら俺は手助けしたい。
もし俺達がリュカクに勝てたなら竜徒を元の人間に戻す方法がないか竜族達に尋ねてみる。
竜の頂点に君臨する竜族ならばあるいはその手がかりを知っているかもしれない。
しかし、これはリュカクに勝てたならの話し、3人がかりでも勝てるという保証はない。
リュカクは俺との一騎打ちのつもりでこの戦いの舞台を用意したのだろう、俺もそのつもりだった。
しかしカイトは言う。
「そんなのは相手の都合、」
「俺達にはリュカクに勝たなければならない理由がある、3対1は卑怯な事じゃない」
俺達は4人の筈と思われるかもしれないが、俺は今回の戦いにリュオを巻き込まないと決めている。
角を折られて以来、リュオに元気がないこともあるが、本当の理由はリュカクの兄妹であるリュオに兄との戦いをさせたくないからだ。
リュオに戦わせれば勝っても負けても結果に関わらず後味の悪いものになる。
倒すか倒されるかの本当の戦いにそんな甘い考えは許されないのかも知れないが。
リュオに命を助けてられて以来、俺は自分が生き残る以上にリュオを守ることを優先してきた。
それは今回の戦いでも変わらない。
竜族の里はもう目前に迫っていた!
☆
竜族の里、種族の頂点に君臨する竜族たちが住う地にして謎多き地。
古き伝統を重んじる生き方を貫く竜族に人間たちは恐れ敬い、この地を訪れる人間はほとんどいない。
それ故、外界から隔離された竜族の里の文明は大きく遅れていた。
そんな中、2人の兄妹が動き出す。
妹は里を出て人間の世界と関わりをもつことで外から里を変えようとする。
兄は中から里を変えようと竜徒を使い竜族を戦いの渦中に巻き込んだ。
2人の判断は間違えていたのかもしれないが、2人に迷いはなかった。
「ライスと言ったか?ずいぶんリュオを手名付けたな。」
リュカクは俺の側から離れないリュオを気にしている、これまでいろいろあったがそれでも2人は兄妹、2人を戦わせるべきではな。
俺は悪態を吐きながら前に出た。
「ペットから人間に昇格か!」
「ずいぶん認められたものだな、だったらその期待に剣で応えよう。」
俺は剣を抜きリュカクの間合いに自ら入った、その瞬間互いの剣が交差する。
リュカクの突きをいなして、返しの剣を右手首に入れる、更にその流れのまま左切り上げ、右袈裟斬り、左胴と連撃を入れる。
この間、こちらも5度ほど斬撃が入る、しかし、お互いに無傷!
息を吸う間もない攻防が続く、そんな中俺の心に妙な感情が走る。
リュカクとの斬り合いが面白い、楽しいと、時間が止まったかのようにリュカクの剣筋が見える、その剣筋に俺の剣を合わせると気持ちの良い音が響く。
まるで気持ちが上がる音楽を聴いているかのように2人の時間が続く。
「まさか、ここまでやるとはな⁉︎」
リュカクは呼吸を荒げて剣を強く握ると言う。
「この技を使うのはいつ以来か、竜族に伝わる技を受けてみろ!」
リュカクから覚悟なほどが伝わってくる。
ならば俺も奥義で応えよう、ソードダンス!
奥義を使うのは今をおいて他にない、発動するかはわからないが、発動しなければ俺が倒れるのみ。
光に包まれたリュカクが迫る、上段に構えた俺の剣の中に。
眩い光に包まれた2人の剣が交差する、勝負の行方はわからない。
勝負の結果はどちらでも構わない、リュオと2人で始まったこの旅の修練の末にこの場に立てたことが俺は何より誇らしい。
☆
剣で
剣気で発生する無数の剣尖がまるで舞を舞っているがごとくの奥義!
ソードダンス、俺に相応しい名前だが、俺の奥義は竜徒に放ったあの一度きりで使えなくなってしまった。
あの後、カイトを相手に何度試しても出ることはなく、リュカクとの決戦が迫る中、俺の焦りは頂点に達していた。
剣気の強さは想いの強さ、奥義を放ったあの時と俺は変わらず仲間を守りたいと想っている。
その想いに嘘はない、しかし、竜徒の村を後にする俺達を見る竜徒の子供たちの目が俺の頭から離れない。
自分たちを必死に守ろうとする竜徒を容赦なく斬りつける者達、憎悪に近い憎しみを込めた目。
王都の民衆が竜徒達を見る目と同じ視線が俺達の行いを否定する。
この後、竜徒達はどうなるのだろう、竜徒達を傷つけた俺が言えた義理ではないことはわかっているが。
彼等が竜徒である限りその力を恐れる者は何度でも彼等に力の暴力を送ってくる。
いままでは彼等の力で退け平和を保ってきた竜徒の村もいつかは限界がくるだろう。
その時、彼等に行き場はあるのだろうか?
有るわけがない!大陸中を敵に回した彼等に待っているのは永遠の流離。
モンスターを引き寄せ戦い続ける俺と同じく、有りもしない安住の地を求めて人と戦う日々が待っているのみ。
彼等が自ら選んだ道でも、その道の何処かに救いがあったとしてもいいはずだ、幸せと不幸の天秤は常に釣り合う。
不幸続きの竜徒達の道の先に幸せの未来があるのなら俺は手助けしたい。
もし俺達がリュカクに勝てたなら竜徒を元の人間に戻す方法がないか竜族達に尋ねてみる。
竜の頂点に君臨する竜族ならばあるいはその手がかりを知っているかもしれない。
しかし、これはリュカクに勝てたならの話し、3人がかりでも勝てるという保証はない。
リュカクは俺との一騎打ちのつもりでこの戦いの舞台を用意したのだろう、俺もそのつもりだった。
しかしカイトは言う。
「そんなのは相手の都合、」
「俺達にはリュカクに勝たなければならない理由がある、3対1は卑怯な事じゃない」
俺達は4人の筈と思われるかもしれないが、俺は今回の戦いにリュオを巻き込まないと決めている。
角を折られて以来、リュオに元気がないこともあるが、本当の理由はリュカクの兄妹であるリュオに兄との戦いをさせたくないからだ。
リュオに戦わせれば勝っても負けても結果に関わらず後味の悪いものになる。
倒すか倒されるかの本当の戦いにそんな甘い考えは許されないのかも知れないが。
リュオに命を助けてられて以来、俺は自分が生き残る以上にリュオを守ることを優先してきた。
それは今回の戦いでも変わらない。
竜族の里はもう目前に迫っていた!
☆
竜族の里、種族の頂点に君臨する竜族たちが住う地にして謎多き地。
古き伝統を重んじる生き方を貫く竜族に人間たちは恐れ敬い、この地を訪れる人間はほとんどいない。
それ故、外界から隔離された竜族の里の文明は大きく遅れていた。
そんな中、2人の兄妹が動き出す。
妹は里を出て人間の世界と関わりをもつことで外から里を変えようとする。
兄は中から里を変えようと竜徒を使い竜族を戦いの渦中に巻き込んだ。
2人の判断は間違えていたのかもしれないが、2人に迷いはなかった。
「ライスと言ったか?ずいぶんリュオを手名付けたな。」
リュカクは俺の側から離れないリュオを気にしている、これまでいろいろあったがそれでも2人は兄妹、2人を戦わせるべきではな。
俺は悪態を吐きながら前に出た。
「ペットから人間に昇格か!」
「ずいぶん認められたものだな、だったらその期待に剣で応えよう。」
俺は剣を抜きリュカクの間合いに自ら入った、その瞬間互いの剣が交差する。
リュカクの突きをいなして、返しの剣を右手首に入れる、更にその流れのまま左切り上げ、右袈裟斬り、左胴と連撃を入れる。
この間、こちらも5度ほど斬撃が入る、しかし、お互いに無傷!
息を吸う間もない攻防が続く、そんな中俺の心に妙な感情が走る。
リュカクとの斬り合いが面白い、楽しいと、時間が止まったかのようにリュカクの剣筋が見える、その剣筋に俺の剣を合わせると気持ちの良い音が響く。
まるで気持ちが上がる音楽を聴いているかのように2人の時間が続く。
「まさか、ここまでやるとはな⁉︎」
リュカクは呼吸を荒げて剣を強く握ると言う。
「この技を使うのはいつ以来か、竜族に伝わる技を受けてみろ!」
リュカクから覚悟なほどが伝わってくる。
ならば俺も奥義で応えよう、ソードダンス!
奥義を使うのは今をおいて他にない、発動するかはわからないが、発動しなければ俺が倒れるのみ。
光に包まれたリュカクが迫る、上段に構えた俺の剣の中に。
眩い光に包まれた2人の剣が交差する、勝負の行方はわからない。
勝負の結果はどちらでも構わない、リュオと2人で始まったこの旅の修練の末にこの場に立てたことが俺は何より誇らしい。
☆
剣で
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