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第 3 章 王都 防衛 編
王都
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俺たちは今、王都に帰る商人達の馬車に便乗している。
リュオとの、彼女に甘いものを食べさせるという約束を果たす為だ。
トルン村では歓迎づくしでリュオは忘れているが、いつ思い出すかわからない。
トルン村にリュオが満足する甘いものは無かった、この異世界、甘いものは相当に貴重なようで。
トルン村の周辺では『ハチミツ』しかないとの事。
『ハチミツ』があるではないかと思われるかもしれないが、それを守る『ハチ』が問題だ。
昆虫族の蜂、俺の世界の蜂はハチミツを取るなら蜜蜂(ミツバチ)で大きさは約1センチで、最強に危険な蜂でもスズメバチ程度の大きさ。
刺されれば危険だが、ある程度の準備をしていれば大丈夫だ。
しかし、異世界の蜂は想像を絶する。
形はスズメバチにそっくりだが、大きさが桁違い1メートルぐらいあるそうだ。
それがハチミツを採取するため縄張りに入った侵入者に対して群れで襲ってくる。
もちろん冒険者パーティーでは歯が立たず、軍隊でも動員しない限りハチミツを回収するのは不可能だそうで。
ハチミツの為にそんな危険を冒す冒険者は無く、奇跡的に放棄された巣の中に残ったハチミツを見つけた冒険者が王都に持ち込むだけだと言う。
当然、そんな貴重なハチミツだ、信じられない値段が付く、庶民はもちろん貴族でさえ手が出ない。
そんな俺が王都に行く訳は、王都にはこの異世界のあちこちから珍しい物が集まるからだ。
その中にはハチミツとは違う甘いものがあるかもしれないし。
もしかしたら俺に有益な情報も手に入る。
俺とリュオが商人の馬車に乗れたのは村長の口利きだ。
本来ならお金を払って乗せてもらうのに俺たちはお金を貰って乗っている。
その理由は俺がボディーガードとして乗っているからだ。
商人達は村に来る時は腕輪を求める冒険者パーティーを安く乗せてボディーガード役をさせるが、王都へ帰る時はこの村でボディーガードを雇っている。
村長は帰りのボディーガード役として俺たちを紹介してくれたのだ。
王都に着いた時に貰えるお金は相当な金額、これでしばらくは食べていける。
王都までの道のりは退屈なものだった、モンスターが襲ってこない、モンスター避けの腕輪が効いているのか?リュオのおかげなのかはわからないが?
リュオのおかげとは、先程からリュオのイライラが頂点に達しようとしているのだ。
俺は馬車に乗っている間はリュオに『飛ぶ』事を禁じていた。
村ではそうでもなかったが竜族は恐れられる存在、モンスター避けの効果があるとのふれこみで村長に貰ったフードで角と尻尾を隠してはいるが飛んでしまっては意味がない。
もちろんフードにモンスター避けの効果などない。
商人達を不安にさせない為だが、正直言って俺の言うことをリュオが素直に訊くとは思っていなかった。
それが今、俺の横にちょこんと座っている。が、先程から落ち着き無くキョロキョロまわりを見ながら、しきりに俺の服を引っ張りながら『まだかなぁ』『まだ、着かないかな?』と話し掛けてくる。
明らかに退屈を通り越してイライラモードに突入して怒りモードに到達するのも時間の問題だ。
俺はリュオの気を逸らそうと王都の面白い話しをしようとするが、俺は王都に行った事が無い。
そもそも、異世界に転生したばかりの俺は異世界の何も知らないのだ。
話題が無い、俺は馬車の中で歳の近そうな青年に話し掛ける。
「君はいつ頃から商人をやっているんだい?」
そう問う俺に対して青年は答える。
「最近のことです、この商人団が王都との取り引きを始めた為、人が足りないと募集があり、それに応募して商人になりました。」
最近なったにしてはこの青年、商人としての手際がいい。
トルン村を出る際の荷造りの時もテキパキと人一倍働いていた。
「君は王都には行ったことはあるのかい?」
「はい、それは凄いところです」
「あちこちの街に行ったことがありましたが王都は規模が違う、なんでもあります」
そう言う青年の目はキラキラしている。
「それは凄いな。」
俺はいろいろな意味の期待でいっぱいになっていると、青年が聞き返す。
「ライスさんは、そんな小さな子を連れて、ひとりで冒険者をやっているのですか。」
商人の青年は自分と歳が近い俺が冒険者をしてることに、羨ましさと驚きで尊敬語を使ってくる。
俺は剣のつかに手をかけると『スラリ』と抜いて青年の前に刀身を晒し『まぁな』とうそぶく。
本物の剣の煌めきは人の気を大きくさせる。
事実を知る者はリュオに守ってもらってるくせにと笑うかもしれないが、話しのきっかけとしては上々だろう。
剣道の竹刀とは違う重たい感触が俺を饒舌にさせる。
「何度、この剣に助けられたかしれない!」刀身をキラキラさせて語る俺に青年は目をキラキラさせて聞いている。
俺は勢い余ってブラックバイパーを倒したのも俺だということにして、その時の様子を青年に話した。
目を丸くしてきいていた青年をリュオが何か言いたげに見ている。
それに気づいた青年がリュオに話し掛ける『お父さん、強いね。』そう言うと。
リュオは何が気に入ったのか恥ずかしそうに顔を紅くして『コクリ』と頷くと大人しくなる。
馬車の操者が手綱を持ったまま俺達に声をかける『王都にそろそろ着くぞ』。
森を抜け山間を通り草原を走る俺達の馬車の先には高い城壁と中世のヨーロッパを思わせる城が見えた。
リュオとの、彼女に甘いものを食べさせるという約束を果たす為だ。
トルン村では歓迎づくしでリュオは忘れているが、いつ思い出すかわからない。
トルン村にリュオが満足する甘いものは無かった、この異世界、甘いものは相当に貴重なようで。
トルン村の周辺では『ハチミツ』しかないとの事。
『ハチミツ』があるではないかと思われるかもしれないが、それを守る『ハチ』が問題だ。
昆虫族の蜂、俺の世界の蜂はハチミツを取るなら蜜蜂(ミツバチ)で大きさは約1センチで、最強に危険な蜂でもスズメバチ程度の大きさ。
刺されれば危険だが、ある程度の準備をしていれば大丈夫だ。
しかし、異世界の蜂は想像を絶する。
形はスズメバチにそっくりだが、大きさが桁違い1メートルぐらいあるそうだ。
それがハチミツを採取するため縄張りに入った侵入者に対して群れで襲ってくる。
もちろん冒険者パーティーでは歯が立たず、軍隊でも動員しない限りハチミツを回収するのは不可能だそうで。
ハチミツの為にそんな危険を冒す冒険者は無く、奇跡的に放棄された巣の中に残ったハチミツを見つけた冒険者が王都に持ち込むだけだと言う。
当然、そんな貴重なハチミツだ、信じられない値段が付く、庶民はもちろん貴族でさえ手が出ない。
そんな俺が王都に行く訳は、王都にはこの異世界のあちこちから珍しい物が集まるからだ。
その中にはハチミツとは違う甘いものがあるかもしれないし。
もしかしたら俺に有益な情報も手に入る。
俺とリュオが商人の馬車に乗れたのは村長の口利きだ。
本来ならお金を払って乗せてもらうのに俺たちはお金を貰って乗っている。
その理由は俺がボディーガードとして乗っているからだ。
商人達は村に来る時は腕輪を求める冒険者パーティーを安く乗せてボディーガード役をさせるが、王都へ帰る時はこの村でボディーガードを雇っている。
村長は帰りのボディーガード役として俺たちを紹介してくれたのだ。
王都に着いた時に貰えるお金は相当な金額、これでしばらくは食べていける。
王都までの道のりは退屈なものだった、モンスターが襲ってこない、モンスター避けの腕輪が効いているのか?リュオのおかげなのかはわからないが?
リュオのおかげとは、先程からリュオのイライラが頂点に達しようとしているのだ。
俺は馬車に乗っている間はリュオに『飛ぶ』事を禁じていた。
村ではそうでもなかったが竜族は恐れられる存在、モンスター避けの効果があるとのふれこみで村長に貰ったフードで角と尻尾を隠してはいるが飛んでしまっては意味がない。
もちろんフードにモンスター避けの効果などない。
商人達を不安にさせない為だが、正直言って俺の言うことをリュオが素直に訊くとは思っていなかった。
それが今、俺の横にちょこんと座っている。が、先程から落ち着き無くキョロキョロまわりを見ながら、しきりに俺の服を引っ張りながら『まだかなぁ』『まだ、着かないかな?』と話し掛けてくる。
明らかに退屈を通り越してイライラモードに突入して怒りモードに到達するのも時間の問題だ。
俺はリュオの気を逸らそうと王都の面白い話しをしようとするが、俺は王都に行った事が無い。
そもそも、異世界に転生したばかりの俺は異世界の何も知らないのだ。
話題が無い、俺は馬車の中で歳の近そうな青年に話し掛ける。
「君はいつ頃から商人をやっているんだい?」
そう問う俺に対して青年は答える。
「最近のことです、この商人団が王都との取り引きを始めた為、人が足りないと募集があり、それに応募して商人になりました。」
最近なったにしてはこの青年、商人としての手際がいい。
トルン村を出る際の荷造りの時もテキパキと人一倍働いていた。
「君は王都には行ったことはあるのかい?」
「はい、それは凄いところです」
「あちこちの街に行ったことがありましたが王都は規模が違う、なんでもあります」
そう言う青年の目はキラキラしている。
「それは凄いな。」
俺はいろいろな意味の期待でいっぱいになっていると、青年が聞き返す。
「ライスさんは、そんな小さな子を連れて、ひとりで冒険者をやっているのですか。」
商人の青年は自分と歳が近い俺が冒険者をしてることに、羨ましさと驚きで尊敬語を使ってくる。
俺は剣のつかに手をかけると『スラリ』と抜いて青年の前に刀身を晒し『まぁな』とうそぶく。
本物の剣の煌めきは人の気を大きくさせる。
事実を知る者はリュオに守ってもらってるくせにと笑うかもしれないが、話しのきっかけとしては上々だろう。
剣道の竹刀とは違う重たい感触が俺を饒舌にさせる。
「何度、この剣に助けられたかしれない!」刀身をキラキラさせて語る俺に青年は目をキラキラさせて聞いている。
俺は勢い余ってブラックバイパーを倒したのも俺だということにして、その時の様子を青年に話した。
目を丸くしてきいていた青年をリュオが何か言いたげに見ている。
それに気づいた青年がリュオに話し掛ける『お父さん、強いね。』そう言うと。
リュオは何が気に入ったのか恥ずかしそうに顔を紅くして『コクリ』と頷くと大人しくなる。
馬車の操者が手綱を持ったまま俺達に声をかける『王都にそろそろ着くぞ』。
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