最弱会社員の異世界サバイバル 特殊スキルで生き残る

塩爺

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第 2 章  モンスター避けの腕輪 編

モンスター避けの腕輪 1

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最上階には、それは見事な光景が広がっていた。

天井から差し込む光で、部屋いっぱいの水の中の無数の結晶が『キラキラ』光っている。

俺は塔の攻略の前に村長から言われた事を思い出す。

腕輪の加工に使える結晶はピンク色の結晶で、それを一個だけ持ってくる事。

この結晶は最初は無色透明で長い時間を経てピンク色に変わる。

無色の結晶は水から出すと崩れてしまい使い物にならない。

水の中に無数にある結晶は色が変わっていく段階で大きさを増しピンク色に成る頃には約1センチ程になって、腕輪に使用できる。

それまでに要する時間は5~10年はかかるそうだ。

俺はリュオと2人でピンク色の結晶を探す。

透明度が高い為か水の水深は見た目より深く俺の腰ぐらいある、これは水の中に入って探さなければならないようだ。

俺はピンク色をリュオに説明する時、リュオの機嫌を損ねてしまう、リュオの尻尾がピンク色なのでおもわず手で触れて『リュオ、この色な。』と言った瞬間にリュオは『ヤァ‼︎』と言って尾っぽの一撃を俺に食らわした。

俺はもんどり打って倒れる。

それでもリュオの本気ではないが、尻尾を触られるのは嫌なようだ。

今後は注意した方が良さそうだ。

リュオは楽しそうに俺の後をついてくる竜族は皆、水が好きなのか?

俺は腰程の深さがある水の中に全身水浸しになりながら探す。

水から出すと崩れてしまう為、慎重になる、当然、時間がかかり疲れも増す。

「塔の中でここが一番時間がかかるな。」

俺は愚痴に近いぼやきが出る。

その時、足に確かな手応えの感覚を感じる。

俺は足に感じた手応えを拾い上げる、思わず見惚れてしまう、その結晶は優に10センチは有り。

異様な輝きを放っていた。

これならば充分だろう!俺は意気揚々と塔を後にした。

帰りはズルをする、リュオに最上階の明かり窓から飛んで地上まで降ろしてもらう。





俺が村に戻るとカイトが入り口で待っていてくれて、そのまま工房の長に紹介してくれた。

カイトと長に取って来た結晶を見せると2人は驚き、その驚きは工房全体に広まった。

冒険者がとんでもない結晶を持ち込んだ。

その噂は瞬く間に村中を駆け巡り。

工房に響めきが上がった後に、結晶を一目見ようと工房の外まで人集りが出来る。

中まで押し寄せる勢いの見物人を工房の見習い工匠が中に入れまいと入り口で踏ん張る。

このままでは埒があかないと工房の長が俺に結晶の公開を提案した。

長は見物料を取れば良いと俺に言う、この結晶にはそれだけの価値がある。

今は村長の好意でお金はかかっていないが、いつまでもこの村に居るわけにもいかない。

モンスターのいる森で生活するわけにはいかない、この先、人間の街に行くならお金は必要になる。

「俺は長に幾らぐらい?」と聞き返した。

「まぁ、200ゼニーが相場だろう」長は言う。

村に出店されている露店の商品の価格から推測すると『1ゼニー』は日本円で1円ぐらい。

200円ぐらいのものだが、見物人は100人はいる。

2万円なら悪くない、この村だけの相場なのか分からないが、異常に物やサービスの値段が安い。

まず食事の価格、リュオの食欲は別格だが、普通の大人が2人で飲み食いして500ゼニー『500円』で済む。

宿代も朝食が付いて一泊2人で2500ゼニー、爆安価格なのだ。

そんな中で装備の価格は別物で中でもモンスター避けの腕輪は高額な物だとカイトは言っていた。



モンスター避けの腕輪だけを製作している、この工房、これだけ多くの工匠が働いているから、沢山の腕輪を作っているのかと俺は思っていたが、そうではない。

これだけの人数でただひとつのモンスター避けの腕輪を作っている、腕輪作りには複数の工程が有り各工匠は分業で各工程を担当している。

工房の長が簡単に説明してくれる腕輪作りには『結晶の固定化』『魔獣素材の固着』『腕輪の加工』の3工程が有り。

更にその工程の中にさまざまな作業が発生する。

『結晶の固定化』

結晶は塔の水から出すと劣化が始まり、硬さも柔らかい。

その結晶を使用に耐えられる様に加工することが固定化だ。

まず、腕輪に合った大きさにカットした結晶を秘伝の溶液に漬ける。

溶液の温度もマル秘で温度が低いと効果がなく、高いと結晶が崩れてしまう。

工匠の腕の見せ所だ。





『魔獣素材の固着』

貴重な結晶だが、結晶自体にモンスター避けの効果はない、腕輪と結晶の間に魔獣の素材を挟む事で効果を発揮する。

結晶は魔獣素材の発する気の力を増幅する効果を持ち、強い魔獣の素材を使うことで弱い魔獣を退ける。

俺たちが村に提供したブラックバイパーは素材として使えるそうだ。

工匠は結晶と素材の相性を判断して、結晶と素材を結びつける加工を施す。




『腕輪の加工』

腕輪の加工は比較的に単純な作業ではあるが、熱と時間の闘いで工房でも新人が担当する。

新人はこの試練を乗り越えて一人前になっていくのだ。

腕輪の装備者に合わせて腕輪を加工するだけの作業だが、あらかじめ作ってある腕輪を炉の熱で炙ってサイズを合わせる。

腕輪に使用してある金属は、炉の高温で長時間炙ると収縮して硬度を増す。

収縮率は工匠の感、少しずつ何回も炙っては冷ましの作業を繰り返して装備者に合わせていく。

炉の前で腕輪の状態を見ながらの重労働に大概の新人は根をあげる。



これだけの作業を行なって腕輪は幾らぐらいの値段なのだろう?

俺は村長に無料で譲って貰えるが、俺は恐る恐る工房の長に聞いてみた。

その値段を知って俺は後悔する。

『80万ゼニー』!途方もない値段だ。

村長、何を企んでる?

俺は村長の所に本当にタダで貰って構わないのか確認しに行く。

まぁ、お金を払えと言われても今の俺では一生払える金額ではないが。
































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