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第 1 章 異世界転生 編
俺の名前はご飯?
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ほぼ裸に近い姿に動物の皮と思われる服を身につけてその少女ははしゃいでいる。
「おんなじ~♪」
少女は自分の皮のパンツを摘みながら、ぼろぼろで血だらけの俺を指差して嬉しそうに言う。
確かに森の中を彷徨いモンスターから逃げてるうちに俺の服は破けてほぼ裸に近い状態になっている。
パタパタと飛んで俺の目の前まで近づいた少女は、俺の顔に自分の顔を近づけて自分を指差しながら。
「リュオ! 竜族のリュオハート!」
と、満面の笑顔でいった。
その笑顔が眩しすぎて俺は一瞬、我を忘れる。
・・・竜族⁉︎
そう言ったリュオの姿はゲームや絵本に登場する竜を人間にした姿そのもので、頭に生えた角や背中の翼そして立派な尻尾は異世界に来たばかりの俺を納得させるには充分過ぎた。
リュオは何かを待っているかのような間が空いたあと、語気を強めて言う。
「お前!名前は?」
・
・
・
「?」
「・・・名前?」
「俺の名前?」
名前と聞かれて俺は答えられなかった。
どうしても名前が思い出せない、人食い植物に食べられかけたショックからか、モンスターに襲われたからかはわからないが記憶喪失になったがごとくに、俺の記憶から自分の名前が無くなっている。
異世界に来る前、俺は前世で会社員をしていて、女の子を助けて死んだのは覚えている。
だが、なぜか名前の部分だけが思い出せないのだ。
こういう時のスマートフォン、俺の情報の全てが詰まっている。
俺はポケットを手を入れようとして思い出す。
スマートフォンは蟻にくれてやったのだ。
俺はとっさに適当な名前を言おうと考えるが思い付かない。
否、思い付かないのではなく口に出せないのだ。
頭の中で考えた名前を口に出そうとしても言葉にならない。
俺は押し黙ってしまう。
痺れを切らしたリュオが言葉を挟んだ。
「お前、名前、無いのか?」
「リュオ、生まれた所、名前無いのは赤ちゃんだけ」
「お前、赤ちゃんか?」
いや、いや、いや、俺はどう見ても大人だろう? だが反論できない。
「名前ない不便・・・‼︎」
「リュオ ☆ 名前考える♡」
そう言ってリュオは俺のまわりをグルグル回る。
「んん~~~ん?」
「・・・ライス!」
「お前、リュオのごはんだからライス!」
ライスだと?リュオに食べられること前提だと?
俺は声を大にして叫ぶ、「訂正を要求する‼︎ 」
そう文句を言う俺をリュオの笑顔が阻止をする。
「ライス♪ ライス♪」
リュオは尾っぽを振りながら嬉しそうに俺のまわりを跳ねている。
俺はその名前を受け入れることにする。
本来ならネコ型モンスターの胃袋の中に収まっていた命だ。
リュオのごはんになる運命?も悪くわない。
「ライス~」
リュオが真顔で俺に話し掛ける。
「ライスの住みかはどこ?」
俺の住みか?住みかとは家のことか?
なんで、そんなことを聞く?
俺はドギマギしながら聞き返した。
「リュオさん・・・」
どう見ても年下の少女に敬語は違和感がある。
俺は思わず言い直してしまった。
「リュオちゃんは、どうしてそんなことを知りたいのかな?」
それに対してリュオは『ちゃん』付けされたのが気に入らなかったのか尻尾をピクとさせて言う。
「リュオはリュオ!」
そう言って俺の顔を覗き込む、俺は「リュオ」と笑顔で返す。
リュオの少し怒った顔も可愛いらしい。
リュオは尻尾をピクピクさせ笑顔になる。
リュオは機嫌が治ったのかまた俺に言う。
「ライスの住みか、甘いものいっぱいある。」
「リュオ、甘いもの好き♪」
「ライスの住みか、直ぐいく!」
俺は助かりたい一心で住んでいる家に飴がいっぱいあるなどとついた嘘を、リュオは信じている。
ありもしない村のありもしない家の場所など教えられるわけもなく、後ろめたさから俺はしどろもどろになる。
「ライス、 変💢 」
怒った口調でリュオは俺の顔を覗き込む。
目線を逸らしながらゴニョゴニョ言っていると、頭を掴まれて強引に顔を向けられた。
ゴキっと言う首が曲がる音が俺には聞こえたような気がした、怒ったふりをしながらリュオを見ると。
腕を組んで仁王立ちして頬を膨らませたリュオがいる。
その可愛らしさから、俺はつい微笑んでしまう。
「ライス。何がおかしい?」
リュオは頬を膨らませたまま俺を見る。
思わずリュオの頭を撫でてやりたくなる衝動を、かろうじて俺の理性が思い止まらせる。
このまま此処に留まっても何も始まらない、ならば情報を集める意味で人間の村を探すのも悪くはない。
「リュオ、あそこを目指そう」
そう言って指さす俺の視線の先。
崖下の鬱蒼とした樹海の遥か遠方に立ち昇る小さな煙が見えた。
あの煙が人の手によるものならば、もしかしたら村があるかもしれない。
「ライス、あそこにお前の家ある?」
「家行けば、甘いのある?」
俺は「あぁ」と返事を返そうとしたが、何故か言葉が出なかった。
この異世界では無力の俺と怪力少女の2人旅が今始まる。
「おんなじ~♪」
少女は自分の皮のパンツを摘みながら、ぼろぼろで血だらけの俺を指差して嬉しそうに言う。
確かに森の中を彷徨いモンスターから逃げてるうちに俺の服は破けてほぼ裸に近い状態になっている。
パタパタと飛んで俺の目の前まで近づいた少女は、俺の顔に自分の顔を近づけて自分を指差しながら。
「リュオ! 竜族のリュオハート!」
と、満面の笑顔でいった。
その笑顔が眩しすぎて俺は一瞬、我を忘れる。
・・・竜族⁉︎
そう言ったリュオの姿はゲームや絵本に登場する竜を人間にした姿そのもので、頭に生えた角や背中の翼そして立派な尻尾は異世界に来たばかりの俺を納得させるには充分過ぎた。
リュオは何かを待っているかのような間が空いたあと、語気を強めて言う。
「お前!名前は?」
・
・
・
「?」
「・・・名前?」
「俺の名前?」
名前と聞かれて俺は答えられなかった。
どうしても名前が思い出せない、人食い植物に食べられかけたショックからか、モンスターに襲われたからかはわからないが記憶喪失になったがごとくに、俺の記憶から自分の名前が無くなっている。
異世界に来る前、俺は前世で会社員をしていて、女の子を助けて死んだのは覚えている。
だが、なぜか名前の部分だけが思い出せないのだ。
こういう時のスマートフォン、俺の情報の全てが詰まっている。
俺はポケットを手を入れようとして思い出す。
スマートフォンは蟻にくれてやったのだ。
俺はとっさに適当な名前を言おうと考えるが思い付かない。
否、思い付かないのではなく口に出せないのだ。
頭の中で考えた名前を口に出そうとしても言葉にならない。
俺は押し黙ってしまう。
痺れを切らしたリュオが言葉を挟んだ。
「お前、名前、無いのか?」
「リュオ、生まれた所、名前無いのは赤ちゃんだけ」
「お前、赤ちゃんか?」
いや、いや、いや、俺はどう見ても大人だろう? だが反論できない。
「名前ない不便・・・‼︎」
「リュオ ☆ 名前考える♡」
そう言ってリュオは俺のまわりをグルグル回る。
「んん~~~ん?」
「・・・ライス!」
「お前、リュオのごはんだからライス!」
ライスだと?リュオに食べられること前提だと?
俺は声を大にして叫ぶ、「訂正を要求する‼︎ 」
そう文句を言う俺をリュオの笑顔が阻止をする。
「ライス♪ ライス♪」
リュオは尾っぽを振りながら嬉しそうに俺のまわりを跳ねている。
俺はその名前を受け入れることにする。
本来ならネコ型モンスターの胃袋の中に収まっていた命だ。
リュオのごはんになる運命?も悪くわない。
「ライス~」
リュオが真顔で俺に話し掛ける。
「ライスの住みかはどこ?」
俺の住みか?住みかとは家のことか?
なんで、そんなことを聞く?
俺はドギマギしながら聞き返した。
「リュオさん・・・」
どう見ても年下の少女に敬語は違和感がある。
俺は思わず言い直してしまった。
「リュオちゃんは、どうしてそんなことを知りたいのかな?」
それに対してリュオは『ちゃん』付けされたのが気に入らなかったのか尻尾をピクとさせて言う。
「リュオはリュオ!」
そう言って俺の顔を覗き込む、俺は「リュオ」と笑顔で返す。
リュオの少し怒った顔も可愛いらしい。
リュオは尻尾をピクピクさせ笑顔になる。
リュオは機嫌が治ったのかまた俺に言う。
「ライスの住みか、甘いものいっぱいある。」
「リュオ、甘いもの好き♪」
「ライスの住みか、直ぐいく!」
俺は助かりたい一心で住んでいる家に飴がいっぱいあるなどとついた嘘を、リュオは信じている。
ありもしない村のありもしない家の場所など教えられるわけもなく、後ろめたさから俺はしどろもどろになる。
「ライス、 変💢 」
怒った口調でリュオは俺の顔を覗き込む。
目線を逸らしながらゴニョゴニョ言っていると、頭を掴まれて強引に顔を向けられた。
ゴキっと言う首が曲がる音が俺には聞こえたような気がした、怒ったふりをしながらリュオを見ると。
腕を組んで仁王立ちして頬を膨らませたリュオがいる。
その可愛らしさから、俺はつい微笑んでしまう。
「ライス。何がおかしい?」
リュオは頬を膨らませたまま俺を見る。
思わずリュオの頭を撫でてやりたくなる衝動を、かろうじて俺の理性が思い止まらせる。
このまま此処に留まっても何も始まらない、ならば情報を集める意味で人間の村を探すのも悪くはない。
「リュオ、あそこを目指そう」
そう言って指さす俺の視線の先。
崖下の鬱蒼とした樹海の遥か遠方に立ち昇る小さな煙が見えた。
あの煙が人の手によるものならば、もしかしたら村があるかもしれない。
「ライス、あそこにお前の家ある?」
「家行けば、甘いのある?」
俺は「あぁ」と返事を返そうとしたが、何故か言葉が出なかった。
この異世界では無力の俺と怪力少女の2人旅が今始まる。
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