最弱会社員の異世界サバイバル 特殊スキルで生き残る

塩爺

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第 1 章 異世界転生 編

竜族少女との出会い

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背後は崖、いよいよ俺は追い詰められた。

後はネコ型モンスターの胃袋に収まるか、崖からのダイブしか道は残されていない。

崖の高さはおよそ30メートル、そのまま落ちれば即死だが、上手く木の枝に引っかかりながら落ちれば大怪我ぐらいで済むかも知れない。

俺の今いる位置からは崖の下は見えないが崖のもこう側にも森が見える、ならば崖の下も森の可能性が高い。

崖からダイブ、そう決めて俺は後退りした。

視線はモンスターを見たままで、猫科に限らず獣は視線をそらした瞬間に襲ってくるものだ。

ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつさがる。


その時、背後で声がした・・・?


       ☆


「それ、アタシのごはん!」

俺はネコに狙われているのを忘れて振り返る。

そこにはひとりの少女? が宙に浮いている?

此処は崖の端で俺の後ろは空中、人が立てる場所はない。

しかし、その少女は当然のように羽を羽ばたいて宙に浮いたまま、もう一度言う。

「それ、アタシの ご・は・ん なんだけど!」

そう言ってネコ型モンスターを指さす。

少女は何を言っている? ご飯?

俺がモンスターのご飯になりかけている状況でアニメに出てくるような格好の少女の出現に俺の頭はパニックになる。

しかし、この少女の存在はモンスターにとっても脅威のようだ、俺が後ろを振り向いているにも関わらずモンスターは襲ってこない。

それどころか俺をからかうように鳴いていた鳴き声も止んでいて、怯えてるように低い唸り声を上げている。

後退りし始めたモンスターに俺は持ってる棒を投げてしまった、この行動が後にピンチを招くとは知らずに。

「キャウ!」

ひと鳴きした後、モンスターは少女を見たまま逃げていく。

「あ! ご は ん が  🥲」

すこし怒った目で少女は俺を見る。

コイツはヤバイ、そう俺の五感が全力で告げている。

刺激しないようゆっくり後退りし始めた俺を見つめる少女。

早くこの場から逃げなければと焦る俺、その瞬間少女の姿が消えると、背後から凄い力で押さえ込まれた。

少女は目にも止まらないスピードで俺の背後にまわると信じられない力で俺を羽交い締めにする。

「嚙っじっていい?」

少女は真顔で俺に聞く。

齧っていいとはどういう意味だ?

少女は吸血鬼で血を吸うという意味ではあるまい言葉通り、俺を食べるという意味だろう。

なんのことはない少女のご飯がモンスターから俺に変わっただけ。

俺は首を激しく振りながら身をよじって振り解こうとするが、びくともしない。

その力は人食い植物のツタとは比較にならず、まるで小さな鋼鉄の箱に押し込められたように俺の動きを奪う。

なすすべなく少女は俺のポケットをまさぐっては取り出した物の匂いを嗅ぐ、ペンに手帳に財布、、、。

少女は匂いを嗅いでそれらの物が食べられないと知ると投げ捨てる。

食べる物がないことに気づいたのか少女は俺の体をまさぐりながら首すじを舐める。

いよいよ食べられてしまうのか?

その時、少女が何かを発見する、俺の左ポケットから取り出したそれは、最後の時に舐めようととっておいた現世で助けた女の子にもらった飴玉、それを少女はまじまじ見ている。

少女は飴玉の匂いを嗅ぐと口の中に放り込む。

「ん~~♪  甘い ♪ 」

少女は包装紙のままの飴を口に放り込んでバリバリ食べると、嬉しそうに尻尾を振る。

俺を羽交い締めしていた力が抜け、俺は地面に崩れ落ちる。

少女は地面に座り込む俺に片手を突き出すと、もっと飴をくれとアピールする。

しかし、飴は一個だけ、他にはない。

だが、それを言えば結果はわかりきっている、俺が飴の代わりになるだけだ。

俺は全力で嘘をつく、逃げたい、生きたい想いが俺の口を饒舌にする。

俺はここからそう遠くない村に住んでいて今日はこの森に薬草を取りに来た。

飴は今はそれだけだけれど村に帰れば沢山あると血だらけの体で身振り手振りを織り交ぜて説明した。

少女は納得してくれたのか、尻尾を二、三度振ると、近くの岩に座ってこちらを見ている。

危機は去ったのか? 

俺は少女をまじまじ見る。

背中に翼、頭に小さな角をもち、なにより小さな体には不釣り合いな立派な尻尾!

赤黒い光沢の鱗で覆われた尻尾は少女の体と同じぐらいの長さがある。

その尻尾を振りながら少女は俺の次の言葉を待っている。

その時、逃げたはずのネコ型モンスターが俺の背後から俺に飛びかかってきた。

そのモンスターを少女の尾っぽが吹き飛ばした後、爪の一撃でバラバラにしてしまった。

少女は嬉しそうに血だらけのモンスターの肉片をかじりながら、俺にモンスターの頭を突き出す。

こんな物食べられる訳ない、しかも生のままだ。

まあ、焼けば良いという話しではないのだが。

「コレ、美味しい☆」

少女は早く食べろと言いたげに、ニコニコしながら爪に刺さった頭を俺の口に押し付けた。

ここで少女の機嫌を損ねる訳にはいかない。

俺は嫌々ながら耳をかじって食べているフリをする。

「美味しい?」そう俺に尋ねる少女、俺は無言のまま首を縦に振ると、少女は満足げに頷いた。





















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