近衛 真王 太平録

塩爺

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真王 戦国時代にたつ

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2121年、日本は極端な人口減少に陥っていた。

しかも、人口減少に伴う生産力の低下の結果、残った資源をめぐって、国どうしの侵攻は日増しに激しさを増すばかり。

この事態に時の日本政府と自衛隊は、少人数での部隊の運用の研究を開始。
最終的には、生身の人間 一人が複数の無人機を操作して戦う形での部隊運用に行き着いた。

そして今日、テストパイロット トラウデン 永遠(とわ)による実証実験を開始した。

今回の演習で永遠が運用するのは、万能型戦闘母艦となる 旗艦 天照(アマテラス)、天照は量子コンピューターとAIにより無人での運航、索敵、攻撃管制を可能にし、搭載のミサイルの弾頭を変えることで、衛星の運用から攻撃まで出来る。

そして、目的地に着いた時には、内部に格納してある物資とAI工作車両を使い、三十六時間以内に前線基地を建設することが可能だ。

司令センター 「永遠、ここまでのミッションはパーフェクト、しかし、バイタル値が少し上昇しているようだ。」

「少し緊張しているのか?」

そう指摘され、俺は一回 深呼吸をして次のミッションに取り組んだ、このミッションは今回の目玉で最大の難関なのだ。

そのミッションとは粒子加速砲による仮想敵艦隊の殲滅実験、粒子加速砲発射シークエンスはシュミレーションでは何度も成功しているが実証実験は初めてなのだ。

かと言って俺のやる事はほとんどない、ツクヨミに最初の指示を出すだけだ。
ツクヨミとは量子コンピューターの名前、後は時々出されるツクヨミの提案を承認するだけで大丈夫だ。

ミッションの50%まで進行した時、ツクヨミがおかしい提案をして来た。

(目標を見失いました 再設定しますか?)

俺「目標を見失った?」

モニターには攻撃する筈の艦隊がでかでかと映し出されている。

(再設定しますか?)

ツクヨミがまた提案してきた所で、司令センターもこの異変に気がついて、ミッションの中止を指示してきた、
俺はツクヨミに語意を強めて指示した!

「このミッションは中止だ!」

しかし、ツクヨミからは意外な答えが返ってきた、

(目標を再設定しました。)

その返事に俺は動揺して、目標を確認したが、その目標に更に驚いた!
この船が目標に設定されていたからである。

「中止だ‼︎ ツクヨミ‼︎」

俺は更に語意を強め叫んだ!

(マスター登録が変更されました。)

マスター登録が変更された?そんな馬鹿な!
本来、マスター登録は俺がコードを入力し、センターの指揮官が承認してツクヨミが変更する、そんな複数のプロセスを行なって変更するものだ。
それをツクヨミ単独での変更など出来る筈だがない。

ツクヨミは俺の指示を無視して、プログラムを実行しだした。

強制終了しかない!

俺は強制終了コードを入力した、その時である、眩い光と共に粒子加速砲が発射された。

どのくらい時間が経ったのだろう?
目を覚ますと先程の混乱が夢だったかの様に
辺りは静まりかえっており、コントロールルームの計器もオールグリーンとなっている。

俺は現状を確認する為、モニターを見て寒気を覚えた。
先程までそこにあった筈の仮想艦隊の姿が跡形も無く、無くなっているではないか!

「これが粒子加速砲の威力か!」ため息混じりに吐き捨てる様に言った。

すこし時間が経った後、落ち着いてきたのか俺は辺りの様子を見回して疑問を感じた、様子がおかしい?

いくら威力があるとは言え艦隊の残骸ぐらいは残っていそうなものではないか?

それどころか粒子加速砲を発射した事さえ夢だったかの様に辺りは穏やかな雰囲気に包まれていた。

俺は指令センターに問いかけたが反応が無い、気絶している間にそんなにも移動してしまったのか?

俺は、すこし恐れていた質問をツクヨミにした。「此処は何処なのかと!」

帰ってきた答えは意外なものだった、
此処は千葉県沖、太平洋上□○地点です。

俺は驚きつつ頭の中で考えた、太平洋上□○地点?それでは、まったく移動していないではないか、それにしては様子が変だ、
俺は、もう一度ツクヨミに質問した、
「此処は日本なんだな!」と

帰ってきた答えに、俺はもう一度仰天した、
(日本ではありますが、元いた時代とは時間軸が異なっています。)

時間軸が違うだと?タイムスリップしてしまったのか!
此処は過去か未来!
俺はまた質問した、具体的な年代は?今は西暦何年なんだ?

すこし間があって、当然とも思える答えが帰ってきた、(データーが不足しています。)

俺はデーター収集の為、探査衛星を打ち上げ様とも考えたが、まだ此処がどんなところか判断の付かない状況では危険が伴う、そこで時間はかかるが、ドローンでの情報収集に切り替えかえることに決め、アマテラスにカモフラージュの光学迷彩を展開した後、アマテラスを陸地側へ移動する事にした。

ロケーションソナーによりここが千葉県沖だとゆう事は分かっている、俺は陸地より20キロの海上にアマテラスを止めドローンを飛ばした。

このドローンのスピードだと陸地まではほんの数分で到達する、陸地が近づくにつれ俺の目は驚きと共にモニターに釘付けになった、そこには海岸に集まる大勢の人々が映し出されている。
大勢と言っても十数人程だが漁みたいな事を行なっている。
漁みたいといったのは、俺の時代、漁業は行っておらず、魚は全て人工飼育した物だけだ。

そもそも、俺の時代の日本の人口は200万人を切り、漁業を行うだけの人間は残っておらず、5年間所属していた訓練センターでもほとんど生身の人間には合わなかった。
それが十数人とは言え、これだけの人を見るのは記録映像以来だ。


驚いた理由は人の多さだけでわない、その人々の服装のなんと解放的な事か、男達だけでなく女性も胸は、はだけ太もももあらわになっている。

(・・・・・・・)

先程からツクヨミが何か告知している、
すまんツクヨミ、聞いてなかった、機械に謝る必要はないのだが、俺は我にかえり質問し直した。

「今は西暦何年なんだ。」
ツクヨミから答えが帰ってきた、(地形の開発進行度から計算して、今は西暦1500年代と推測されます。)

西暦1500年代....戦国時代か。
俺はこれでも歴史には詳しい、まあ、100年前の戦国シュミレーションゲームからの知識なのだが。

室町時代から安土桃山時代に変わる激動の時代、応仁の乱、桶狭間の戦い、関ヶ原の戦いなどのイベントが満載で。
人物的には、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と俺の時代でも有名な武将が登場する時代だ。

危険より俺の好奇心が勝ってしまった、直接人々の話しを聞いてみたい衝動に駆られた俺は、その準備を開始した。

まず、このいかにも怪しい格好を何とかしなくてわならない、俺はこの時代の服装に合わせて自動生成機で服を作製した。
この時代に合わせた服と言っても性能は遥かに高性能だ、ハイパースチール製で高い防御力を持ち、おそらくこの時代の武器ならほとんど防げるだろう。

ハイパースチールは西暦2015年に開発された物で、髪の毛一本の太さで約100キログラムを吊り上げられる程の強度を誇るが、その重さがネックだった、が俺の時代にはその問題も改良され幅広く活用されている。

今では貴重な資源だが、今回の実戦を想定した訓練用に搭載された物だ。

上陸にあたって何が起こるか分からない為、携帯する物は最小限な物に抑えて置こう。

まず、アマテラスとの通信を行う為の通信機だ、俺の時代のすこし前はインプラントダブル型デバイスが主力だった頃もあったが、新機種が開発される度に、埋め込みし直さなければならない、など、問題が多発して、元の通信機型が広く流通している。

次は食料、すぐに戻ってくるつもりだが、不測の事態を想定して3日分の錠剤タイプの高栄養食料を持った。

最後に武器だが、これが一番迷った、
相手にいきなり警戒心を与えてる物だとまずい、下手すると戦闘になるかもしれない。
なるべく目立たず、それなりの攻撃力があり相手を殺さない、そんな武器を探し、指輪型パラライズガンに決め指にはめた後、その指を布で隠した。

この三つだけを持って俺は潜水艇に乗り込んだ。
今回の上陸作戦の内容はこうだ、潜水艇にて海岸より1キロメートル地点まで移動したのち自動操縦に切り替えて潜水艇をアマテラスに帰還させ、自身は潜水により人々が集まる砂地からすこし離れた岩場に上陸する。

計画は何事も無く進行して、俺は人々の前までたどり着いた、住人達は漁に夢中で俺など眼中にないのだろう、俺はその中の漁に参加していない老人に話しかけた。

俺「御老人、魚は獲れますかな?」

老人は俺を一瞥すると、すこし警戒した様子を示したが、うつむき加減に返事した。

老人「まぁ、ぼちぼちだべ。」

入りの会話としては上々である。
俺は間髪入れず砂浜に転がっている魚を指差してこう質問した。

俺「この魚は何て名前です?」

老人「魚に名前なんて、ね、魚はさかなだべ。」

俺「この魚はどう料理すれば良いのですか?」

老人「何したかって、美味いべ」

多少無理があるが、上陸前にツクヨミからレクチャーされた、この時代の話し方と俺の話術で会話が成立する。

俺の知りたい事はただ一つ、今の正確な年代だ。
しかし、老人の話しは今ひとつ的を得ない、この時代の一般住人には年号など関心がないのだろう。

俺は話しを変え、この地について聞いてみる。

俺「ここの領主様は大層立派な方とお聞きしますが。」

老人「ああ、近衛様は大層なお方だべ」

この地は、近衛様と言う領主様が治める地で東には佐竹様が、西には里見様が、さらに西には大大名の北条様が領地を構えている。
との事だ、俺の聞いた話しは通信機を通してツクヨミに分析させている、詳しい年代が判れば連絡が来るだろう。

しかし、ツクヨミの連絡を待たずして年代が判明する。
老人が興奮して話した内容、すこし前に尾張の小大名が桶狭間の地で大大名の今川様を打ち倒した、織田信長の名前を天下に知らしめた桶狭間の合戦だ。

すこし前に桶狭間の合戦が起こったとすれば今は1560年、だとすればすこしおかしい、俺の知識では1560年にこの地を治めているのは小弓足利家の筈である。
まあ、情報が不足している現在では仕方がないのだろう、ひとまず老人の話しの続きを聞こう。
この老人、中々世間に詳しい、この人々の中では上の地位にある人物のようだ。

老人によるとこれ以上詳しい話しが聞きたければ、今、ここからすこし離れた街道沿いで近衛様の兵が人を集めているそうなのでそちらに行ってみてはどうか?そう提案してきた。

俺はその提案に乗る事に決めた、老人にお礼を述べ、僅かばかりのお金を渡した、お金と言っても貨幣では無い、俺がこの時代の貨幣を持っているわけがない。

潜水艇に乗る時に気がつき携帯した純金を砂粒状に加工した物だ。
これを三粒ほど老人の手に握らせた。
老人は手の中を見ると驚きと共に深々と頭を下げた、俺は俺と会った事をあまり他の人に話すなよという意味も込めて多めに渡したのだが、この聡明な老人ならば察してくれるだろう。
俺は一礼するとその場を離れた。

俺は街道と思われる道を辺りの様子を観察しながら歩き始めた、俺のいた時代同様に人の数は多くはないのだろうが、なんとものどかな風景、歩く道は土で出来ている。
土の道など俺の時代にはなかった、農作物でさえ工場による栽培だ。

俺は珍しさからその土を手に取りしげしげと眺めて、ふと我に帰ってその土を捨てた、俺の時代にはない細菌が有るかもしれない、急いで手を消毒して抗生物質の薬を飲んだ、
これも潜水艇に乗りこむときに持った物だ、
結局、五つの物を持ち込むことになったが俺の不注意からとはいえ早速、役に立った。

しばらく歩いていると老人の言った通り街道沿いで人が集まる一角があった。
兵士らしき者、数名が座る机を挟んでその前に住人と思われる者が2列に並んで順番を待っている。
また、その列を囲むように人盛りが出来ている、俺は人混みに紛れ様子を伺う事にした。

列は順番がくると兵士達が何かをチェックして採用者とそうで無い者を選別している、どうやら兵士の募集を行っているようだ。
しかし、集まった人々の誰もが元気が無いように見える、先程の海岸の人々はもうすこし元気があった、がその理由も直ぐ判った。
極度の栄養失調なのだ、頬はこけて目も虚ろ立っているのも辛そうにしている。

こんな状態では戦闘など出来ないだろうに、俺は近くのマトモそうな若者に声をかけた。

俺「はぁ~、早く戦に勝って腹いっぱい飯くいてだ。」

若者「何言ってんだ、戦に勝ったて飯なんてくえね!」

若者「食うもん自体がねぇんだかんな
なぁ~も、できね!」

若者は怪訝そうにしつつも答えてくれた。
この土地は、土自体は肥えているが、年数回降る大雨により発生する洪水のせいで作物を作れない状況でまったく食べる物が無いそうだ。

若者「海岸の奴等は魚を取っても分けてはくんね!」
若者は吐き捨てように言った。

海岸の方は魚が取れる分 幾らかはましだが原始的な漁業方法では自分たちが食べる分だけで精一杯なのだろう。

その内に兵士達が俺を見止めて、ざわつきながら近づいてくる、俺は身構えながら平静を装った。
あっという間に周りの人々は遠のき兵士達に囲まれてしまった。

何か失敗をしたのか?攻撃してくるかと思ったが、そうではないらしい。
兵士達は驚き ざわついてはいるが武器を構えてはおらず、それどころか鞘に納めたまま口々の誰かの名前を叫んでいる。

兵士達の中で一番偉そうな兵士が俺の前に跪くと俺の手を握りながら、こう叫んだ!

「頼友様! 生きておいででしたか!」

「良くぞご無事で!今までどうされておられましたか!」

まわりの兵士も跪くなか1人の兵士にこの事を城に伝えるよう指示すると、兵士の募集などそっちのけで俺に何かを促した。

どうやら兵士達は俺を頼友(よりとも)という奴と間違えているらしい、どのみちこの兵士達の武器では俺を傷つける事は出来ない、俺はこの勘違いに乗る事にした。

促された先には馬なる生き物が繋がれいており、それに乗るように言われた、俺の時代にも馬はいたが動物園の中だけの話しだ。
訓練中のシュミレーターにより経験は有るが実際乗るのとは訳が違う、俺は手順を確認しながら恐る恐る馬の背に乗った。

しかし、心配とはよそに馬はおとなしいものだった、乗るとは言っても操作は兵士の1人が手綱を引っ張り俺は馬の背でじっとしているだけ。
緊張感が緩むとすこしこの振動が苦痛になってきた。
その内、兵士達がそれぞれ話し掛けてくる。

兵士1「皆、心配しておりました、ご無事でなによりです。」

兵士2「頼友様がご無事なら、お家も安泰、嬉しゅうございます。」

兵士3「本当によかった!いままで何をしておいででしたか!」

頼友という男は余程、兵士達に慕われいたのだろう、敬いながらも親しげに喜びを伝えてきた。

その話しの中で頼友が行方不明になった時の状況がわかってくる。

今から7日前、漁場の視察で海にきた頼友は海上で大きな光の柱に包まれて船ごと忽然と消えてしまったそうだ。
その後、3日間にわたって兵士総出で捜索したが頼友どころか護衛の者さえ見つからなかったそうだ。
それが7日たって現れたのだから兵士達が驚くのも無理はない。

俺が粒子加速砲を発射した事が原因か頼友が光の柱に包まれて消えたことが原因かは分からないが今俺は1560年の日本にいる。

しばらく街道を馬にゆられた俺は城と呼ぶには余りにも粗末な屋敷に着いた。

そこで身なりを整われた俺は人払いされた広間に通された。
そこでしばらく待っているといかにもという男が入ってきて一段高い場所に腰を下ろした。
男の名は頼成(よりなり)おそらく頼友の父親でこの土地を治める大名なのだろう。

頼成はしばらく黙って考え込んだ後、ため息を一つ吐くと立ち上がり俺に近づくと俺の顔を覗き込みながらおもむろにこう言った。

「誠に頼友に瓜二つじゃのおー・・・お前は何者だ?」

やはり親の目は胡麻かせない俺が別人だという事はバレバレだ。
しかし、この男に攻撃的な感じが感じられない、俺は黙って様子を見る事にした。

頼成はそのまま話し続ける、
「これも仏様の導きか、誠に良い時にお前が現れたものじゃ、」

「お前も見ただろう今、我が地では兵士を募集しておる もちろん戦の為じゃ。」

今、近衛家では戦をしなければならない事情がある。

頼友が行方不明になって3日後、謎の集団により領地の中央に有る本城を奪われてしまった。
兵士の大半は頼友の捜索に回していた為、本城は頼継(よりつぐ)が残った兵で防衛に当たったが深傷を負ってしまった、頼継とは頼友の兄、頼成の後継者である。

頼成はかろうじて本城から屋敷に逃げ延びた。

ただでさえ本城を野盗に奪われるという失態に嫡男は再起不能、次男は行方不明では家の存続の危機だ。

頼成「そこで相談なのだがお前、頼友して生きるつもりはあるか?」

俺「生きるつもりとは、影武者としてですか?」そう問い返す

頼成「文字通り頼友としてじゃ、頼友に成り代わるのじゃ」

突然の提案だか帰る方法のわからない俺はしばらくこの時代で暮らさなければならない、拠点が必要だ。
ならばこの提案は渡りに舟ではないか、
俺は頼友として生きることを承諾した。

頼成はこれからやる事を指示してきた、「まずお前が頼友として兵士を率いて本城を取り返すこと、その成功を伴ってわしは隠居して家督をお前に譲ろう、まあ実権はわしが握るのだがな。」

「戦は2日後、詳細はその男に聞くがよい」
そう言って障子を開けた先には1人の男が控えていた。
男と言ってもずいぶん若い、見た目は10代、どう見ても俺より若いのは確かだ。

頼成「その男 全てわかっておる」

わかっているとは、俺が頼友ではないと知っていると言うことで。

「口は硬いが逃げようとするなよ!」

口が硬いとは、お前の事を他者に話さないし、余計なことも言わない、だからお前も余計な事を喋るなという意味だ。

「その者、躊躇わないからな!」

躊躇わない、つまりここから逃げたら殺すと言う事だ。

俺は(頼友)はその男の案内された部屋で男と話し込んだ、男の名前は、嘉平(かへい)という、武士ではなく兵士でもなく、いわゆる忍者、情報収集を生業にしている者達だ。

まず目的である本城の奪還の為、謎の集団について聞いてみる、生き残った兵士の報告で謎の集団は同じ人間とは思えないほど強かった、残った兵とは言え頼継の兵は100名余りいた、それが20人の野盗に全滅させられたのだ。
そんな噂が広まれば兵士は集まらないだろう。
戦を焦る理由としては納得いく。

謎の集団は城を奪った後、その場に居座っている、男は城の構造の見取り図を見せてもらいながら考えを巡らせた。

すっかり夜更けになり嘉平は帰っていった、まあ、帰ったのは見せかけで俺が逃げ出さないよう見張っているのだろうが。

しかし、100名の兵が20名に全滅とはどれほどの者達なのだろう。俺は武器の確認をしつつ今日の出来事をツクヨミに分析させた。

余程、疲れていたのだろう俺はツクヨミの返答を待つことなく眠ってしまった。

翌朝、俺は頼成と会った広間で家を支える家老達に紹介された、不審な点もあっただろうが頼成のフォローで乗り切った。
皆、不審なりながらも納得した様子で俺は頼友になることに成功した。

俺はこの後 兵士達の前で頼友として勝ち名乗りを上げた、まだ戦ってもいないのにだ、この時代の戦とはこういうものだろう。
それぞれ大声を挙げる兵士の指揮は高い。

この兵士達を失うのは惜しい、何より20名の強者を殺すのはもったいない。

俺は双方に被害の出ない方法を考えながら300名の兵士を率いて本城に向かい歩を進めた。
日が沈まぬ内に本城の前に陣を張り夜明けを待って攻めかかる作戦だ。
何故、夜襲をかけないか。
それには訳がある、相手もこの攻撃は予想しているだろう、当然 見張りも立てるはずだ、ならば予想を裏切って見張りが疲れる朝方に、城の四方からの一斉攻撃!これが戦いの定石である。

しかし、この作戦でも勝てる保証はない、こちらは300名だ、まず勝てるだろうが、今回 城攻めというところがキモだ。
城攻めは守る方が圧倒的に有利である。

夜が明け攻撃の時刻になっても俺は攻撃開始の合図を出さなかった、兵士達は何事かとヤキモキしている。
時刻は過ぎお日様が真上に登ったころ俺は合図を出した、攻撃の為では無い。
兵士達には城を囲い込む様に指示して、俺単独で正門の前に進み出た。

「我は頼友! 其方の大将と一騎打ちを所望致す!」

俺の突飛な行動に兵士達は面を食らったが、頼友という男、よほど兵士達に信頼があるのか止める者はいなかった。

しばらくして門が開き、2人の男に出迎えられた、デッ!デカイ‼︎  俺はおもわず見上げてしまった。
180センチある俺より頭一つデカイ。
2メートルはある身長の男達の筋肉は美術品の彫像を思わせた。

その男達とすこし歩くと城の広場にでた。
ここで相手の大将と一騎打ちするのだが
勝算がない訳では無い。
俺には秘策があった!
素手による殴りあい、これならばズルができる。
ハイパースチール繊維の服に衝撃吸収インナーそれに指にはめたパラライズガン。
相手の攻撃を衝撃吸収インナーで受けた後、殴る振りで麻痺させる。
これならば相手を殺すことは無いだろう。

俺は着ている鎧を脱ぎ捨てると男達が囲む広場の中央に進み出た。
男達は口々に何か叫びながら手に持つ槍で地面を叩いている。
俺が待っていると男達を掻き分けて更に大きな男が出てきた。
その男が現れると先程まで騒いでいた男達が静まり返る。

神話の鬼を想像させるその男は俺が鎧を脱ぎ武器を持っていないのを見るや、自分の武器を投げ捨てた。
その瞬間、男達が先程より大声を挙げて、大将を激励する。

殴りあいは誰が合図をするでもなく始まった
まず相手に殴らせる、それを受けた後こちらの一撃で終わり、肉を切らせて骨を断つ作戦だ。
ただし顔面だけは危険だ、顔には防御するものが無い。
そこだけ集中する、男は俺を吹っ飛ばして派手に倒すつもりで胸を狙ってきた。

よし!これを受け切って反撃する俺は身構えた。
しかし予想外の事態になる、車がぶつかっても大丈夫な衝撃吸収インナーを着た俺を吹き飛ばしたのだ!
咳き込みながらなんとか耐えた、強化人間の俺でなければ気絶しているだろう、
これでは反撃どころではない。

俺は強化人間だ、強化と言ってもナノマシーンとナノメタル注入により回復力と身体が一般人より高いだけなのだか、

俺の時代、兵士のほとんどの者がナノマシーンの注入は行っている、が、ナノメタルの適合率は低くナノマシーン適合者の一万人に1人とされた。

俺は2つ共高水準の適合者だった。
それがアマテラスのパイロットに選ばれた理由だ。

俺は逃げ回りながら相手の攻撃をかわす、
相手の攻撃を2、3度かわしやっと一撃入れられた、しかし相手は倒れない!
麻痺に耐性があるのか?
だが、明らかに男の動きが鈍った、俺は続けざまに攻撃を入れる。
男が倒れたのは5度目の攻撃を入れた後だった。

俺は他の者が襲ってくると身構えたが
そんな事はなかった、それどころか先程まで騒いていた者たちまで鎮まりかえり武器を地面に置いた。
俺の勝利を認めているようだ、なんと礼節を重んじる者達だろう。
ここで失うのは本当に惜しい、俺は兵士達の注意を引いて彼等が逃げ易くする為
鎧を着けると正門の上に立ち家紋の入った旗を掲げ勝利を宣言した。

俺が正門の上に立った事で兵の大部分が正門前に集まった。
勝鬨の上がる中、城の包囲の一角がガラ空きになり、
男達の逃げるのを俺は見逃した。

この勝利の一報は早馬にて頼成に報告される、
が、俺も数名の兵を伴って頼成の屋敷を目指した。
この勝利の報酬として、ある条件を頼成に納得させる為だ。
条件とは野盗達20名の処遇である、彼等を自分の部下にしたい俺は頼成に彼等の助命を願い出たい。
が、これは容易なことでわない、なにしろ頼継を再起不能にされているのだから。

その日の内に屋敷に着いた俺は頼成と家老達が待つ広間に入った。

俺「頼友、頼成様の命通り 城、奪い返して参りました!」

奪い返すとは穏やかでないが、武力によって取り返したのだから奪ったのも同然である、

頼成「大義であった!」

頼成は一言そう述べると、すこし間を置きいきなり切り出してきた。

頼成「物見の報告によると、其方1人で戦ったそうよのぉ?」
「さては、天狗が頼友に化けておるのか?」

頼成は冗談を言っている訳では無い、事実、家老の何人かは背後に置いた刀に手がかかっている。

これでは野盗達の助命どころではない、
俺は押し黙ってしまった。

後に嘉平から聞いた話しだが、俺が屋敷着く数刻前、頼友勝利の一報を受けた頼成は家老達と、ある密議を行っていた、
もちろん、俺の処遇についてである。

頼成にしてみれば城さえ取り返してくれれば良い、それで家の体面は保たれる
あとは俺が負傷しようが構わない、いや
いっそのこと野盗と共倒れしてくれれば
良いとさえ思っている。

しかし、俺の勝利が余りにも鮮やかだった為、事情が変わってきた。
このまま俺を利用した方が家の為になるのでわないか、そう主張する家老がいた事だ、最後まで渋っていた頼成も、俺の態度が少しでも近衛家の為にならないようなら躊躇わず斬り捨てるという結論になった。

俺は敵意のない事を示しつつ考えた、
まさか、未来から来たとは言えない。
俺は激しく咳き込み、私も深傷を負っておりますアピールをして、私も人間、勝てたのは仏様の加護だったと主張した。

頼成は咳払いを一つして、まぁ良いと言った後
険しい顔になり不機嫌な口ぶりで、

頼成「しかしのぉー、何故、野盗共を見逃した?」

俺はやはりそこに来たかと、ここにくるまでに考えた答えのパターンを頭の中でシュミレーションした。
そしてでた答えは何も言わない事、頼継を失った頼成に今、何を言っても火に油を注ぐだけだろう。

ここは城の引き渡しを済ませて時期を待ったほうが良さそうだ。
俺は頼成に兵士達が待っておりますゆえ明日にでも本城に移動するよう進言した。
しかし頼成の答えは意外なものだった、
私は隠居した故、城はお前が使えば良い、そう言ってきた。

さては?逃げた野盗の仕返しでも恐れているのか?
俺にとっては棚からぼた餅、労さずして城が手に入った。
頼成の気が変わらない内に退散した方が良さそうだ、早々屋敷を後にして暗くなりかけた街道を護衛の兵士と共に馬をはしらせた。

城に着くと兵士達がささやかだが、祝宴の用意をして待っていた、急ぎの戦で食料など持っていない筈だが、どうやら近隣の村から調達したそうだ。
酒など飲んでいる場合ではないのだが、俺は有り難く受けた。
その訳は、盗賊を逃した事を心良く思っていない兵士がどのくらいいるか見極める為だ。

半分ぐらいはいると思った俺の予想に反して皆、一様に喜んでいる、この時代の兵士達はこういうものなのか?
この日の祝宴は夜遅くまで続いた。

翌朝、夜明け前に起きた俺は城の天守に上がり城下の町を見下ろした、貧しいこの国、街道沿いに藁葺き屋根の荒屋が点在するだけだが、俺は高揚感で震えた、
戦国ライフの始まりだ俺は拳を握りしめた。
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四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 南北朝時代、南朝の宰相、そして軍師ともいうべき、准后(じゅごう)・北畠親房、死す。 その兇報と共に、親房の臨終の言葉として、まことしやかに「その一言」が伝わってきた。 「年明けこそ鬼笑う」――と。 親房の最期の言葉は何を意味するのか―― 楠木正成、新田義貞、高師直、足利直義といった英傑たちが死し、時代は次世代へと向かう最中、ひとり生き残った足利尊氏は、北畠親房の最期の機略に、どう対するのか。 【登場人物】 北畠親房:南朝の宰相にして軍師。故人。 足利尊氏:北朝の征夷大将軍、足利幕府初代将軍。 足利義詮:尊氏の三男、北朝・足利幕府二代将軍。長兄夭折、次兄が庶子のため、嫡子となる。 足利基氏:尊氏の四男、北朝・初代関東公方。通称・鎌倉公方だが、防衛のため入間川に陣を構える。 足利直冬:尊氏の次男。庶子のため、尊氏の弟・直義の養子となる。南朝に与し、京へ攻め入る。 楠木正儀:楠木正成の三男、南朝の軍事指導者。直冬に連動して、京へ攻め入る。 【表紙画像】 「きまぐれアフター」様より

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