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第 10話 深淵 2

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一階層に入った俺達3人は事前に装備をお互いに交換する方法で直ぐに合流を果たした。

俺は今に至る数日間で、地形変化ダンジョン対策をいろいろと試して見た、装備の交換で相手の位置がわかるとはいえ危険なダンジョンほどお互いがバラバラになるのは避けたい。

対策を試すと言っても、こことは違うダンジョンで、他のパーティーにお金を払ってのことだが、俺が他のダンジョンに入れれば金など払わずサラに協力して貰えば済むことなのだが。

対策はお互いの体をロープで繋ぐ、入り口の所に杭を打ちロープで繋いで飛ばされないようにする、等、いろいろ試したがことごとく無駄に終わった。

合流した俺達はお互いの状態を確認すると手の内を明かすという意味ではないが、自分の装備の能力や持ち技を互いに披露する。

この先、ライバル関係になるかもしれない相手に手の内を明かすのは避けただろうが、今後の戦い方を決める上で大事なことだ、このダンジョンを攻略して戻るまでは仲間なのだから。

もっとも俺に隠すほどの手の内はない、俺は鎧と剣の強化魔法の件も蒼志に話した。

「凄い装備があるものだな、持ち主は[へぼ]だが」

まったくこの男は、ストレートで失礼だ。

「嬢ちゃん・・」

蒼志がサラに向かって質問しようした瞬間、サラが割って入る。

「嬢ちゃんじゃない、私はサラ、サラ・シュタイナー」

「すまん、サラはどんな戦い方をする?」

「私はルークを回復したり補助したり」

蒼志は呆れたように俺をチラッと見るとサラに向き直る。

「攻撃魔法は使えないのか?」

「使えるわ、雷撃魔法、モンスターを電撃で痺れさせて動きを止めてサーベルでブスッと刺して、また電撃でとどめね。」

蒼志はサラの話しを感心して聞いている。

「電撃魔法、そうような使い方もできるのか。」

蒼志はそう言うと自らの刀を抜いて技を披露した。

披露するという表現がぴったりの見事な剣撃、まるで舞を舞っているかのような連撃が俺達の前で披露された。

「俺の攻撃方法は先制攻撃、相手に攻撃する隙を与えず葬り去ってきた」

どうやら俺達のパーティーの方針は決まった、俺がモンスターの攻撃を受け、サラが俺を回復、蒼志を強化して、蒼志が倒す。

この方針で行けるところまで行ってみる、まだダンジョン攻略は始まったばかり、2階層で終わるかもしれないし100階層まであるかもしれない、このダンジョンが何階層あるかもわからないのだから、こんな所で時間を費やしている訳にはいかないのだ。

俺達3人はあっという間に1階層を攻略して2階層の入り口を発見した。

入り口には見えない壁のような物が施されており下の階層と今の階層とを分けている、他のダンジョンはわからないが地形変化ダンジョンはこういった仕組みなのだろう、当然、見えない壁に触れると下の階層内に飛ばされる。

2階層への入り口の前でまた装備の交換をしようとした俺達を蒼志が静止した。

「その方法では面倒だ」

「何かあるのか?」

俺がいろいろ試したが装備を交換するしかないのだが。

「魔法でいう転移魔法、我らの国では移し身と呼ぶが、その応用で移動しない代わりに空間を固定する方法がある」

「移し身?」

蒼志がいろいろ説明するが俺にはまったく理解できず、魔術士のサラもキョトンとしている。

蒼志は面倒臭いなという表情で話しを続ける。

「お前たちの国に魔法があるように俺の国には妖術というものがある。」

「妖術⁉︎」

俺が言葉を挟むと蒼志が「まあ聞け」と俺の話しを遮る。

「妖術というとお前たちは怪しい響きに聞こえるかもしれんが、俺の国では誰でも当たり前に使う」

「これから使う移し身だって俺の国のダンジョンでは普通に知られた方法だ。」

そんな便利な方法があったなんて?

そんな方法があったのなら何故、我が国に伝わってこなかった?

妖術という響きが怪しすぎて警戒している?

まぁ、この国に来る東洋の勇者はほとんどいないし、蒼志の話しから蒼志の国にもダンジョンがあるのなら、そんな便利な方法は門外不出にしたほうが良いと判断したのか?

この際そんな事はどうでもいい話しなのだ、使えるものならなんだっていい話し。

蒼志は俺達に術発動時の注意点を説明する、発動時は体は動かせるが移動はできない事と、絶対に俺から手を離さない事、特に手は重要で、手を離すと何処に飛ばされるかわからないそうだ。

当然、移動できないから入り口に腕を伸ばせば手が触れられる範囲で使用する、蒼志は説明が終わると術発動の準備を開始した。

蒼志は腰の帯から1枚の紙を取り出して地面に置くと、蒼志は3人の真ん中に立ち両手を広げ俺とサラに手を繋ぐよう指示する。

そして、何語かわからない言葉で呟きだす、リズミカルな響きだ。

その響きが終わると地面に置いた紙が燃え足元から陽炎がたちのぼる。

「成功だ。」

蒼志はコクリと頷き、入り口側のサラに入り口に触れるように合図した。

俺はリズミカルな呟きを聞きながら、ここが最恐ダンジョンという事を忘れ、こんな便利な方法があるなら俺が他のダンジョンにも入れるかもなどと先の未来の話を呑気に考えていた。





「血の匂いがする。」

蒼志の一言で一気に俺達に緊張が走る。

入った者は決して逃さないブラックホールと呼ばれるダンジョン、その真の恐怖を俺達はこれから知ることになる。





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