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第 19話 破壊する者 1
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【破壊する者】リスマイア王国どころか大陸の伝説として歴史に残るモンスター、村ひとつを壊滅させ、倒すこと叶わず封印するしか出来なかった強大なる者。
まだ大陸に名前を知られていなかった建国間もないリスマイア王国を大陸で1番の国に押し上げたザイン団長率いる最強騎士団、無敵とまで言われた騎士団が破壊する者と遭遇したのは王都から離れたレアルの街の領主からの応援要請でだ。
近隣の村との連絡が急に取れなくなったので私兵を送ったが、その者達も帰らず街の警備もしなくてはならない為、王国に連絡が取れない原因を調べて欲しいと言うお願いだ。
建国して間もなく、まだ若かった2代目リスマイア王は各地の領主との関係を考えレアルに50騎の兵を送った。
精鋭騎士団50騎、戦争でもない限り充分な戦力である、しかし、その50騎は捜索に行ってから3日経っても帰って来なかった。
焦った王は我が騎士団に原因究明の命を下す。
「団長、一領主の頼み事に我が隊の出動とはいささか大げさではないですか?」
副団長が王の命令に異を唱える。
「そう言うな、王もまだ若い、領主、領民の頼みを聞かないわけにはいかぬのだろう」
俺が優しく諭す。
「しかし!それにしても全軍とは!」
確かに俺も驚いた、50騎が戻らなかったとはいえ全軍とは、いささか大げさ。
ここで言う全軍とはリスマイア王国に複数有る騎士団のなかで黒狼、白狼と呼ばれる2大騎士団、そのひとつザイン団長率いる白狼騎士団5,000騎を指す。
これだけの兵を動かすとなると対応次第では大変な事になる、それはなぜかと言うと今回の出陣先が他国との国境付近だった場合は他国はリスマイアが攻撃を仕掛けてきたと誤解するだろう。
しかし今回の出陣先はほぼ王都と国境の中間地点に位置するレアルの街の付近にある村、他国を刺激する心配は少ないだろう。
未だ納得できない副団長は俺に食い下がるが、俺は一喝した。
「副団長。我が騎士団はどんな事にも全力で当たり、どんな事態にも対処する、故に無敵と言われてきたのだ。」
「了解しました!」
副団長は態度を改め騎士団式の礼をする。
「作戦会議を行う!副団長、各隊長を集めよ!」
「了解しました!」
会議の席に着いてはみたものの各隊長からの進言は少ない、余りにも急なのだ、
隊長の中には今回の行き先さえ知らない者までいる。
副団長が順を追って説明する。
「今回の出陣先はレアルの街付近の村」
「任務は連絡の取れなくなった村の現状把握と原因究明だ。」
「しかし、侮るな!精鋭50騎が戻ってきていないのだから!」
我が隊の者ではないとはいえ相当な力をもった50騎だ、各隊長からどよめきが上がる。
「その為の会議だ、皆の意見を聞きたい」
皆が考え込む中、1人の隊長が立ち上がる。
我が隊に20人いる隊長のひとりラルク隊長だ。
「ラルク隊長、述べよ。」
今回のように手詰まり感がある時のラルクは頼りになる、彼は嬉々として話し出した。
「今回、村と連絡が取れなくなった原因として私は三つの原因を考えました。」
「自然現象、モンスター、他国の侵略の3つですが。」
「私はモンスターの仕業と考えました。」
「まずひとつ目の自然現象、ご覧の様にレアルの街と村との間に山があります」
ラルクはテーブルに広げられたリスマイア領の地図を指差して話しを続ける。
「この山に何らかの異常、例えば崖崩れなどが起こり道が使えなくり連絡が取れなくなった」
ここで他の隊長が口を挟んだ
「それにしては連絡が遅い、兵が出発して7日目だぞ。」
「その通り、崖崩れならば山を迂回してでも連絡は来る筈で、今の段階で自然現象は考えから外します」
「では、次に他国からの侵略の可能性」
「連絡が取れない理由が村ひとつ丸ごとの事象だとすれば他国の侵略が1番しっくりきますが、これも無い!」
「それは、村の位置が国境付近では無い事です、各隊長もご存知の様に我が国と他国との間にある国境には検問所が有り警備兵が常駐しております」
「他国が何らかの動きをすれば必ず本隊に連絡が入る取り決め、しかし、今回それが無い」
「つまりは他国の侵略は無かったと考えます。」
「では、最後にモンスターの線」
「私は先程、今回の原因はモンスターと断言しましたが、村ひとつを壊滅されるモンスターなど私は遭遇したことはありません」
「モンスターの可能性は高い、しかし、他の可能性も考慮した方が良いと私は考えます。」
中々鋭い考察、俺の考えも同じだ。
「ラルク!私の考えも敬と同じだ」
「出発は2日後、他の可能性を考えつつモンスター討伐の準備をせよ」
「以上!」
出発の日を迎え我々白狼騎士団は警戒態勢をとりつつも村近くの山まで辿り着く、やはり山に崖崩れの痕跡は見られない。
しかし、山の頂まで来た時、皆の歩みが止まった、山の頂から見下ろす森の中、村が有るはずのその場所には大きなクレーターが口を開けている。
副団長に続き各隊長も俺の所に駆け寄る。
「団長‼︎ これは?」
俺にだってわからない、モンスターが村を壊滅させたのなら建物の残骸ぐらい残っている、それがまったく残っていないのだ。
直径、約300メートルにわたって空間ごと無くなった様に地面だけが残っている。
これがモンスターの仕業だとしたらどんな怪物か、少なくとも我々は遭遇したことは無い。
「全部隊警戒陣形‼︎」
「この場に監視人員を残し出陣!」
如何に警戒しているとはいえ我々はクレーターにたどり着くまでに数時間を要した。
しかし、我々の警戒を嘲笑うかの如く、何も起こらない。
クレーターに辿り着いてもただ地面があるだけ、原因の探りようが無い。
副団長が俺に近づいてきて言う。
「団長、何が起こるとこの様になるのですか?」
「その様なことは私にもわからない、が、どこかにヒントはある筈だ」
俺の投げやりな返答に副団長は納得していない様子で自分の隊に戻っていく。
その時である、何も無い筈の地面に、水面に小石を投げた時の様な波紋ができるとその上の空間に陽炎が立ちのぼると、その中に奴は現れた。
まだ大陸に名前を知られていなかった建国間もないリスマイア王国を大陸で1番の国に押し上げたザイン団長率いる最強騎士団、無敵とまで言われた騎士団が破壊する者と遭遇したのは王都から離れたレアルの街の領主からの応援要請でだ。
近隣の村との連絡が急に取れなくなったので私兵を送ったが、その者達も帰らず街の警備もしなくてはならない為、王国に連絡が取れない原因を調べて欲しいと言うお願いだ。
建国して間もなく、まだ若かった2代目リスマイア王は各地の領主との関係を考えレアルに50騎の兵を送った。
精鋭騎士団50騎、戦争でもない限り充分な戦力である、しかし、その50騎は捜索に行ってから3日経っても帰って来なかった。
焦った王は我が騎士団に原因究明の命を下す。
「団長、一領主の頼み事に我が隊の出動とはいささか大げさではないですか?」
副団長が王の命令に異を唱える。
「そう言うな、王もまだ若い、領主、領民の頼みを聞かないわけにはいかぬのだろう」
俺が優しく諭す。
「しかし!それにしても全軍とは!」
確かに俺も驚いた、50騎が戻らなかったとはいえ全軍とは、いささか大げさ。
ここで言う全軍とはリスマイア王国に複数有る騎士団のなかで黒狼、白狼と呼ばれる2大騎士団、そのひとつザイン団長率いる白狼騎士団5,000騎を指す。
これだけの兵を動かすとなると対応次第では大変な事になる、それはなぜかと言うと今回の出陣先が他国との国境付近だった場合は他国はリスマイアが攻撃を仕掛けてきたと誤解するだろう。
しかし今回の出陣先はほぼ王都と国境の中間地点に位置するレアルの街の付近にある村、他国を刺激する心配は少ないだろう。
未だ納得できない副団長は俺に食い下がるが、俺は一喝した。
「副団長。我が騎士団はどんな事にも全力で当たり、どんな事態にも対処する、故に無敵と言われてきたのだ。」
「了解しました!」
副団長は態度を改め騎士団式の礼をする。
「作戦会議を行う!副団長、各隊長を集めよ!」
「了解しました!」
会議の席に着いてはみたものの各隊長からの進言は少ない、余りにも急なのだ、
隊長の中には今回の行き先さえ知らない者までいる。
副団長が順を追って説明する。
「今回の出陣先はレアルの街付近の村」
「任務は連絡の取れなくなった村の現状把握と原因究明だ。」
「しかし、侮るな!精鋭50騎が戻ってきていないのだから!」
我が隊の者ではないとはいえ相当な力をもった50騎だ、各隊長からどよめきが上がる。
「その為の会議だ、皆の意見を聞きたい」
皆が考え込む中、1人の隊長が立ち上がる。
我が隊に20人いる隊長のひとりラルク隊長だ。
「ラルク隊長、述べよ。」
今回のように手詰まり感がある時のラルクは頼りになる、彼は嬉々として話し出した。
「今回、村と連絡が取れなくなった原因として私は三つの原因を考えました。」
「自然現象、モンスター、他国の侵略の3つですが。」
「私はモンスターの仕業と考えました。」
「まずひとつ目の自然現象、ご覧の様にレアルの街と村との間に山があります」
ラルクはテーブルに広げられたリスマイア領の地図を指差して話しを続ける。
「この山に何らかの異常、例えば崖崩れなどが起こり道が使えなくり連絡が取れなくなった」
ここで他の隊長が口を挟んだ
「それにしては連絡が遅い、兵が出発して7日目だぞ。」
「その通り、崖崩れならば山を迂回してでも連絡は来る筈で、今の段階で自然現象は考えから外します」
「では、次に他国からの侵略の可能性」
「連絡が取れない理由が村ひとつ丸ごとの事象だとすれば他国の侵略が1番しっくりきますが、これも無い!」
「それは、村の位置が国境付近では無い事です、各隊長もご存知の様に我が国と他国との間にある国境には検問所が有り警備兵が常駐しております」
「他国が何らかの動きをすれば必ず本隊に連絡が入る取り決め、しかし、今回それが無い」
「つまりは他国の侵略は無かったと考えます。」
「では、最後にモンスターの線」
「私は先程、今回の原因はモンスターと断言しましたが、村ひとつを壊滅されるモンスターなど私は遭遇したことはありません」
「モンスターの可能性は高い、しかし、他の可能性も考慮した方が良いと私は考えます。」
中々鋭い考察、俺の考えも同じだ。
「ラルク!私の考えも敬と同じだ」
「出発は2日後、他の可能性を考えつつモンスター討伐の準備をせよ」
「以上!」
出発の日を迎え我々白狼騎士団は警戒態勢をとりつつも村近くの山まで辿り着く、やはり山に崖崩れの痕跡は見られない。
しかし、山の頂まで来た時、皆の歩みが止まった、山の頂から見下ろす森の中、村が有るはずのその場所には大きなクレーターが口を開けている。
副団長に続き各隊長も俺の所に駆け寄る。
「団長‼︎ これは?」
俺にだってわからない、モンスターが村を壊滅させたのなら建物の残骸ぐらい残っている、それがまったく残っていないのだ。
直径、約300メートルにわたって空間ごと無くなった様に地面だけが残っている。
これがモンスターの仕業だとしたらどんな怪物か、少なくとも我々は遭遇したことは無い。
「全部隊警戒陣形‼︎」
「この場に監視人員を残し出陣!」
如何に警戒しているとはいえ我々はクレーターにたどり着くまでに数時間を要した。
しかし、我々の警戒を嘲笑うかの如く、何も起こらない。
クレーターに辿り着いてもただ地面があるだけ、原因の探りようが無い。
副団長が俺に近づいてきて言う。
「団長、何が起こるとこの様になるのですか?」
「その様なことは私にもわからない、が、どこかにヒントはある筈だ」
俺の投げやりな返答に副団長は納得していない様子で自分の隊に戻っていく。
その時である、何も無い筈の地面に、水面に小石を投げた時の様な波紋ができるとその上の空間に陽炎が立ちのぼると、その中に奴は現れた。
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