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第 17話 緑の大地 I
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【王国の大地を緑で埋め尽くすのです】
途端にロフトの表情が険しくなる。
「破壊する者の討伐と王国の大地を緑にすることがどお関係あるのだ!」
お怒りはごもっとも、俺だって最初にビューネイから説明された時には納得できなかった。
俺は長々とビューネイから説明された内容を掻い摘んでこの場の全員に説明した。
「破壊する者には精霊魔法しか効かないこと、精霊魔法は自然の生命力を消費して発動し、今回の精霊魔法は大地の生命力を消費するのだが、今のこの国の大地の生命力では、たとえ破壊する者を倒せてもその代償で大地は死んでしまうらしい事。」
「大地の生命力には緑も含まれるため、この国の緑を増やせば増やす程大地を死なせなくて済む筈だと。」
「そこで、宰相殿の力で国軍を含め国民全てでこの国に緑を増やして頂きたい」
ロフトは長考の後、ゆっくり口調で話す。
「にわかには信じられないが、貴方の言うことだ、真実だろう」
「真実だろうが、我が一存ではどうにもならん」
「確かに国軍は我が管轄、動かせなくもないが、陛下にどう説明する」
先程から俺の前を左右歩きながらロフトは捲し立てる。
そして、ポンと相槌を打つと、俺の腕を掴んで立ち上がらせ
「ザイン、其方、陛下に説明してくれ」と俺を部屋から連れ出そうとする。
まさか国王にまで説明することになろうとは思わなかったが後には引けない、
俺は覚悟を決めて館の前の馬車にロフトと2人で乗り込んだ。
早馬での報せとロフトが一緒ということでさしたるチェックも受けずに俺は王の間の玉座に座る王の前まで来れた。
今の国王は初代覇王ザインから数えて3代目にあたる。
生涯戦い続けた初代ザイン王とルミナス妃の間に子はできず、ルミナス妃の甥を養子とし2代目を継がせた。
故に初代ザイン王と3代目との血の繋がりは無く、もちろん今の俺とも無い。
しかし、血の繋がりなど何の意味もない、今のリスマイア王国は俺王だった時より繁栄している。
ロフトに促されるように王の前に進み出ると、俺は片膝を付き、ロフトにした内容と同じ説明を王にもした。
しかし、今回はもっと簡潔にだ。
「陛下、今回の作戦に陛下のお力を賜りたく」とだけ述べた。
王は拍子抜けした表情で此方を見ると、ロフトが出した書簡をお付きの者に持って来させ、それに目を通しながら呟く。
「力を貸せと言われてもな」
「今ひとつ判らぬ、その方、詳しく述べよ」
そこで俺は改めて精霊魔法の事や緑化計画の事を説明した。
俺は王の表情を見ながら説明したが、すぐに後悔する。
緑化計画の説明を聞いた途端、王の表情は険しくなり
「ロフトの知り合いだから会ってみたが、とんだ時間の無駄であったわ!」
そう言って持っていた書簡を俺に投げつけると凄い剣幕で立ち上がり部屋から出て行こうとする。
「陛下!お待ちください!」
ロフトが王の腕にとりすがり引き留めようとする。
「ええい!離さぬか!」
振り解こうとする王を必死に留めロフトは王に耳打ちした。
死罪にも等しいこの行為を、後にロフトはこう語っている、あの時は我を忘れていたと。
「それは誠か!」
ロフトの耳打ちを聞いた王は俺を見て目を丸くする。
「にわかには信じられぬが、其方、先人の英雄の魂と融合しているそうな」
「その中には覇王の魂もあるのか!」
俺は正直に答えた。
「いえ、英雄王の魂は私にはありません」
俺がそう言うと王は頷いて話しを続けた。
「そうか・・・」
「信じられんがロフトの言うことあながち嘘とも言えまい」
俺が力のある魂と融合していると聞いた王は態度を軟化する。
「その方、先程の緑化計画について具体的に申してみよ」
それには困った、具体的にと言われても俺の目的はロフトにしても王にしても緑化計画を認めてもらう事で具体案など考えていなかった。
しかし、ここでしどろもどろでは悪い印象を王に与えてしまう、俺は転生の記憶をフル動員して説明する。
ロフトはそこまで考えていたのかといった表情でこちらを見ている。
王は俺の説明を聞き終わると、また頷き側にいるロフトを俺側に移動させると
「破壊する者の復活まで6か月、長いようで短いの、それまでにどこまで緑を増やせるか」
俺は思わず身を乗り出す。
「王!それでは緑化計画を!」
「ああ、承認しよう。」
「しかしな、問題が2つある」
「まず、国軍だ、緑化に国軍を使いたいことはわかるが、精霊魔法が確実とも言えぬ、お前達を信用してないわけではないが、万が一の策を講じる事も王の役目。
国軍はこのまま戦闘訓練を続けさせたい。
緑化計画を承認してくれただけでもありがたい、ここは俺が引き下がる番だ。
「仰せのままに。」そう言って俺は頭を下げる。
王は満足そうに頷き話しを続けた。
「2つ目は外交問題、直接其方達には関係ないが王としては捨て置けぬ。」
「緑を増やす為に国民を動員すれば国の全ての流れが止まり、あらゆる物資が不足することになる」
「物資が不足すれば国が衰える、それは不味い、商隊を仕立てて他国から輸入するしかないが、他国がすんなりと我が国の要求を受け入れてくれるか」
流石に国民に賢王と呼ばれているだけある、この短い間にそこまで考えを巡らせるか。
ここでロフトが助け舟を出す。
「陛下、後は我々臣下に御任せを」
王に信用が厚いロフトの言葉、王は「其方に任せる」と言って部屋を出て行った。
期限は6か月、リスマイア王国、否、大陸の命運を賭けた計画が今 始動する。
途端にロフトの表情が険しくなる。
「破壊する者の討伐と王国の大地を緑にすることがどお関係あるのだ!」
お怒りはごもっとも、俺だって最初にビューネイから説明された時には納得できなかった。
俺は長々とビューネイから説明された内容を掻い摘んでこの場の全員に説明した。
「破壊する者には精霊魔法しか効かないこと、精霊魔法は自然の生命力を消費して発動し、今回の精霊魔法は大地の生命力を消費するのだが、今のこの国の大地の生命力では、たとえ破壊する者を倒せてもその代償で大地は死んでしまうらしい事。」
「大地の生命力には緑も含まれるため、この国の緑を増やせば増やす程大地を死なせなくて済む筈だと。」
「そこで、宰相殿の力で国軍を含め国民全てでこの国に緑を増やして頂きたい」
ロフトは長考の後、ゆっくり口調で話す。
「にわかには信じられないが、貴方の言うことだ、真実だろう」
「真実だろうが、我が一存ではどうにもならん」
「確かに国軍は我が管轄、動かせなくもないが、陛下にどう説明する」
先程から俺の前を左右歩きながらロフトは捲し立てる。
そして、ポンと相槌を打つと、俺の腕を掴んで立ち上がらせ
「ザイン、其方、陛下に説明してくれ」と俺を部屋から連れ出そうとする。
まさか国王にまで説明することになろうとは思わなかったが後には引けない、
俺は覚悟を決めて館の前の馬車にロフトと2人で乗り込んだ。
早馬での報せとロフトが一緒ということでさしたるチェックも受けずに俺は王の間の玉座に座る王の前まで来れた。
今の国王は初代覇王ザインから数えて3代目にあたる。
生涯戦い続けた初代ザイン王とルミナス妃の間に子はできず、ルミナス妃の甥を養子とし2代目を継がせた。
故に初代ザイン王と3代目との血の繋がりは無く、もちろん今の俺とも無い。
しかし、血の繋がりなど何の意味もない、今のリスマイア王国は俺王だった時より繁栄している。
ロフトに促されるように王の前に進み出ると、俺は片膝を付き、ロフトにした内容と同じ説明を王にもした。
しかし、今回はもっと簡潔にだ。
「陛下、今回の作戦に陛下のお力を賜りたく」とだけ述べた。
王は拍子抜けした表情で此方を見ると、ロフトが出した書簡をお付きの者に持って来させ、それに目を通しながら呟く。
「力を貸せと言われてもな」
「今ひとつ判らぬ、その方、詳しく述べよ」
そこで俺は改めて精霊魔法の事や緑化計画の事を説明した。
俺は王の表情を見ながら説明したが、すぐに後悔する。
緑化計画の説明を聞いた途端、王の表情は険しくなり
「ロフトの知り合いだから会ってみたが、とんだ時間の無駄であったわ!」
そう言って持っていた書簡を俺に投げつけると凄い剣幕で立ち上がり部屋から出て行こうとする。
「陛下!お待ちください!」
ロフトが王の腕にとりすがり引き留めようとする。
「ええい!離さぬか!」
振り解こうとする王を必死に留めロフトは王に耳打ちした。
死罪にも等しいこの行為を、後にロフトはこう語っている、あの時は我を忘れていたと。
「それは誠か!」
ロフトの耳打ちを聞いた王は俺を見て目を丸くする。
「にわかには信じられぬが、其方、先人の英雄の魂と融合しているそうな」
「その中には覇王の魂もあるのか!」
俺は正直に答えた。
「いえ、英雄王の魂は私にはありません」
俺がそう言うと王は頷いて話しを続けた。
「そうか・・・」
「信じられんがロフトの言うことあながち嘘とも言えまい」
俺が力のある魂と融合していると聞いた王は態度を軟化する。
「その方、先程の緑化計画について具体的に申してみよ」
それには困った、具体的にと言われても俺の目的はロフトにしても王にしても緑化計画を認めてもらう事で具体案など考えていなかった。
しかし、ここでしどろもどろでは悪い印象を王に与えてしまう、俺は転生の記憶をフル動員して説明する。
ロフトはそこまで考えていたのかといった表情でこちらを見ている。
王は俺の説明を聞き終わると、また頷き側にいるロフトを俺側に移動させると
「破壊する者の復活まで6か月、長いようで短いの、それまでにどこまで緑を増やせるか」
俺は思わず身を乗り出す。
「王!それでは緑化計画を!」
「ああ、承認しよう。」
「しかしな、問題が2つある」
「まず、国軍だ、緑化に国軍を使いたいことはわかるが、精霊魔法が確実とも言えぬ、お前達を信用してないわけではないが、万が一の策を講じる事も王の役目。
国軍はこのまま戦闘訓練を続けさせたい。
緑化計画を承認してくれただけでもありがたい、ここは俺が引き下がる番だ。
「仰せのままに。」そう言って俺は頭を下げる。
王は満足そうに頷き話しを続けた。
「2つ目は外交問題、直接其方達には関係ないが王としては捨て置けぬ。」
「緑を増やす為に国民を動員すれば国の全ての流れが止まり、あらゆる物資が不足することになる」
「物資が不足すれば国が衰える、それは不味い、商隊を仕立てて他国から輸入するしかないが、他国がすんなりと我が国の要求を受け入れてくれるか」
流石に国民に賢王と呼ばれているだけある、この短い間にそこまで考えを巡らせるか。
ここでロフトが助け舟を出す。
「陛下、後は我々臣下に御任せを」
王に信用が厚いロフトの言葉、王は「其方に任せる」と言って部屋を出て行った。
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