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第 11話 転機
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村は以前と変わらず活気を保っていた、大きな領地をもらった俺達家族に嫉妬の眼差しを向ける者もいなくはないが、皆一様に歓迎してくれた。
季節は日本で例えるなら春、苗を植えるなら1番良い季節。
村の農地でも村人総出で作業している、ここの苗なら大丈夫、きっと良い野菜が収穫出来る。
俺は村長の許可を得て働いている人の話しを聞きながら今、植えるとしたらどんな野菜の苗が良いのか聞きまわった。
俺が今、植えたい苗は2つある。
1つ目は早く育って俺達家族の食事のおかずになれる野菜。
2つ目は育てるのが大変でも高く売れて収入になる野菜。
1つ目の野菜として、レタスやほうれん草があげられる、どちらの野菜もほぼ1か月ほどで収穫でき、レタスはサラダになりほうれん草はスープの材料になる。
栄養も豊富で彩りも良い、正にうってつけの野菜なのだ、俺はこの異世界のレタスとほうれん草に似た苗を5株づつ購入した。
村人は元村人のよしみでタダで良いからと言ってくれたが、俺達は丁寧に断ってきちんと正規のお金を支払う。
村人の好意でタダで貰うのは悪いことではないが、俺はこれから始まる農業生活の決意を示す意味で遊びではなく本気なのだとこの場で宣言したかったのだ。
まぁ、村人には俺の決意など伝わるはずもなく、せっかくタダで良いって言ってるのに、酔狂な事だと呆れ顔で、それなら10株で500ゼニーで良いやと言ってくれた。
相場では1500~2000ゼニーはする苗だ、櫓や支柱などでほとんどのお金を使い果たした俺達家族にとってはこの後のことを考えるとありがたい話しだ。
この後とは、高値で売れる野菜の苗を買わなくてはならないからだ、目を付けている野菜がある、ルビーグラスという名のミニトマトに似た野菜、収穫量が多く取れるのに非常に高値で売買される不思議な野菜。
何故、高値かと言うと苗が高価な上に栽培が非常に難しいから、このルビーグラスの苗は高地の低い温度でしか種を作らずその発芽率も低い、そして発芽した物を平地に持ってくると途端に生育が悪くなり売り物に育つまでには相当に減ってしまって付いた値段は50000ゼニー!
冒険者ギルドのAランク依頼、約5回分の依頼料に相当する値段だ。
とても普通の農家では手が出ない、しかもルビーグラスは水分を好むくせに根腐れを起こしやすく、土壌栽培ではほとんど枯れてしまう。
順調に実れば直ぐに元が取れるのだがそんなギャンブルみたいなことをする者はそうは居ない。
が、俺には上手く栽培できる自信が少しある、俺がやろうとしているプランター栽培は正にルビーグラスの為にある栽培方法ではないか!
盛り土のおかげで水捌けは良く、パイプから出る地下水は常に新鮮な水をルビーグラスに供給し続ける。
これなら順調に育たないはずはない!
問題はこのルビーグラスの苗がこの村にあって、俺達が買える値段かと言うことだ。
俺達家族は村中を探しまわった、その時である。
リフリーの名を呼ぶ声がどこからともなく聞こえる。
その声は聞き覚えのある声、そう森の護り手のメンバーの焦った叫び声とも言える程の声が村に響き渡る。
「ハア、ハア、・・リフリー、こっちに来ていたのか⁉︎」
その男は、俺とリフリーの姿を発見すると側まで駆け寄って来て、息を切らしたまま話す、その男から伝わる緊迫感が事の緊急性と重大さを示している。
「リフリー、農業なんかを手伝っている場合ではないぞ‼︎」
「ハンク!そんなに慌ててどうしたの?」
「SSS級の討伐依頼だ、全ギルドメンバーに召集命令が来た。」
「ハンク?SSS級なんてモンスター、聞いた事ないわ?」
「リフリー、落ち着いて聞いてほしい【破壊する者】だ‼︎
【破壊する者】、リスマイア王国に伝承としてのみ伝わるSSS級のモンスター。
大陸最強と言われた我が騎士団五千人を全滅させ、騎士団長としての俺の二度目の人生を終わらせた相手。
物理攻撃が効かず、騎士団が放つ全ての魔法を無効にし、多くの命と引き替えに封印するのがやっとだった相手。
封印の地は禁域となって、刺激しないように王国軍が固く守っている。
奴の封印が解けるのか?
確かに多くの冒険者が育っている、強者もいるだろう。
しかし、それではダメだ!
自分で言うのもなんだが、あの時の俺はリミッターを外せば1人で騎士団全員を相手にしても負ける気がしないほど強かった。
それが奴にはまったく通じない、どうする?
このままでは、この世界は終わる!
「・・ザ、・・・ザイン!」
「ザイン、なにボーとしてるの、」
「私はこのままメンバーとギルドに行くわ、あなたはキャロを連れて家に戻っていて。」
リフリーは俺が止める間も無く行ってしまった、買い物を止め不安がるキャロを抱き抱え俺は家路につく。
これ以上キャロを不安にさせまいと平静を装うも頭の中はパニック状態だ。
奴の所為で2度も人生を終わらせてたまるか!
なによりキャロやリフリー、そして多くの仲間たちを失うことなどできない!
しかし、このままでは勝てない、だが、可能性はゼロではない。
俺はある人物に会うことにする、俺の王様時代の友人。
大魔道士ビューネイ!
貴族社会の権力争いを嫌って引きこもってしまったが、彼女なら勝つ方法を知っているかもしれない。
気がかりは最後に彼女に会ってから100年以上過ぎていること。
いくら大魔道士といえども生きている保証は無いが、彼女に弟子がいれば【破壊する者】の復活を見越して対策方法を伝授していてくれるかもしれない。
くそっ!先程から、(かもしれない)ばかりだ!
何を弱気になっている!
ビューネイの住処の場所はわかっている、後は行動を起こすだけだ。
俺は旅の支度をしながらリフリーの帰りを待った。
季節は日本で例えるなら春、苗を植えるなら1番良い季節。
村の農地でも村人総出で作業している、ここの苗なら大丈夫、きっと良い野菜が収穫出来る。
俺は村長の許可を得て働いている人の話しを聞きながら今、植えるとしたらどんな野菜の苗が良いのか聞きまわった。
俺が今、植えたい苗は2つある。
1つ目は早く育って俺達家族の食事のおかずになれる野菜。
2つ目は育てるのが大変でも高く売れて収入になる野菜。
1つ目の野菜として、レタスやほうれん草があげられる、どちらの野菜もほぼ1か月ほどで収穫でき、レタスはサラダになりほうれん草はスープの材料になる。
栄養も豊富で彩りも良い、正にうってつけの野菜なのだ、俺はこの異世界のレタスとほうれん草に似た苗を5株づつ購入した。
村人は元村人のよしみでタダで良いからと言ってくれたが、俺達は丁寧に断ってきちんと正規のお金を支払う。
村人の好意でタダで貰うのは悪いことではないが、俺はこれから始まる農業生活の決意を示す意味で遊びではなく本気なのだとこの場で宣言したかったのだ。
まぁ、村人には俺の決意など伝わるはずもなく、せっかくタダで良いって言ってるのに、酔狂な事だと呆れ顔で、それなら10株で500ゼニーで良いやと言ってくれた。
相場では1500~2000ゼニーはする苗だ、櫓や支柱などでほとんどのお金を使い果たした俺達家族にとってはこの後のことを考えるとありがたい話しだ。
この後とは、高値で売れる野菜の苗を買わなくてはならないからだ、目を付けている野菜がある、ルビーグラスという名のミニトマトに似た野菜、収穫量が多く取れるのに非常に高値で売買される不思議な野菜。
何故、高値かと言うと苗が高価な上に栽培が非常に難しいから、このルビーグラスの苗は高地の低い温度でしか種を作らずその発芽率も低い、そして発芽した物を平地に持ってくると途端に生育が悪くなり売り物に育つまでには相当に減ってしまって付いた値段は50000ゼニー!
冒険者ギルドのAランク依頼、約5回分の依頼料に相当する値段だ。
とても普通の農家では手が出ない、しかもルビーグラスは水分を好むくせに根腐れを起こしやすく、土壌栽培ではほとんど枯れてしまう。
順調に実れば直ぐに元が取れるのだがそんなギャンブルみたいなことをする者はそうは居ない。
が、俺には上手く栽培できる自信が少しある、俺がやろうとしているプランター栽培は正にルビーグラスの為にある栽培方法ではないか!
盛り土のおかげで水捌けは良く、パイプから出る地下水は常に新鮮な水をルビーグラスに供給し続ける。
これなら順調に育たないはずはない!
問題はこのルビーグラスの苗がこの村にあって、俺達が買える値段かと言うことだ。
俺達家族は村中を探しまわった、その時である。
リフリーの名を呼ぶ声がどこからともなく聞こえる。
その声は聞き覚えのある声、そう森の護り手のメンバーの焦った叫び声とも言える程の声が村に響き渡る。
「ハア、ハア、・・リフリー、こっちに来ていたのか⁉︎」
その男は、俺とリフリーの姿を発見すると側まで駆け寄って来て、息を切らしたまま話す、その男から伝わる緊迫感が事の緊急性と重大さを示している。
「リフリー、農業なんかを手伝っている場合ではないぞ‼︎」
「ハンク!そんなに慌ててどうしたの?」
「SSS級の討伐依頼だ、全ギルドメンバーに召集命令が来た。」
「ハンク?SSS級なんてモンスター、聞いた事ないわ?」
「リフリー、落ち着いて聞いてほしい【破壊する者】だ‼︎
【破壊する者】、リスマイア王国に伝承としてのみ伝わるSSS級のモンスター。
大陸最強と言われた我が騎士団五千人を全滅させ、騎士団長としての俺の二度目の人生を終わらせた相手。
物理攻撃が効かず、騎士団が放つ全ての魔法を無効にし、多くの命と引き替えに封印するのがやっとだった相手。
封印の地は禁域となって、刺激しないように王国軍が固く守っている。
奴の封印が解けるのか?
確かに多くの冒険者が育っている、強者もいるだろう。
しかし、それではダメだ!
自分で言うのもなんだが、あの時の俺はリミッターを外せば1人で騎士団全員を相手にしても負ける気がしないほど強かった。
それが奴にはまったく通じない、どうする?
このままでは、この世界は終わる!
「・・ザ、・・・ザイン!」
「ザイン、なにボーとしてるの、」
「私はこのままメンバーとギルドに行くわ、あなたはキャロを連れて家に戻っていて。」
リフリーは俺が止める間も無く行ってしまった、買い物を止め不安がるキャロを抱き抱え俺は家路につく。
これ以上キャロを不安にさせまいと平静を装うも頭の中はパニック状態だ。
奴の所為で2度も人生を終わらせてたまるか!
なによりキャロやリフリー、そして多くの仲間たちを失うことなどできない!
しかし、このままでは勝てない、だが、可能性はゼロではない。
俺はある人物に会うことにする、俺の王様時代の友人。
大魔道士ビューネイ!
貴族社会の権力争いを嫌って引きこもってしまったが、彼女なら勝つ方法を知っているかもしれない。
気がかりは最後に彼女に会ってから100年以上過ぎていること。
いくら大魔道士といえども生きている保証は無いが、彼女に弟子がいれば【破壊する者】の復活を見越して対策方法を伝授していてくれるかもしれない。
くそっ!先程から、(かもしれない)ばかりだ!
何を弱気になっている!
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