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第 9話 農業はじめました3

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5日かかると思っていたリフリーの帰還は、たった2日と短期間ではたされた。

しかも森の護り手のメンバー全員という大人数での帰還だ、村を旅立って1か月、何の音沙汰もないリフリーに痺れを切らした森の護り手のメンバー達が居ても立っても居られず王都から押しかけて来る途中でリフリーに出会した次第だ。

旧リズモンド領と王都は一本道で繋がっている、リフリーと森の護り手が出会ったのも必然なのだろう。

俺にとっては好都合、さっそく鍵開けを頼み込む。

意味が分からんと不思議がる森の護り手のメンバーに俺は最初からの経緯を丁寧に説明した。

俺の説明を聞き終わったメンバーからは俺が始める農業に『リフリーを巻き込むな』オーラがヒシヒシと伝わってくる。

俺としてもリフリーには冒険者を続けてもらったほうが収入がある、リフリーの気持ちが1番優先される事は言うまでもないが、俺はリフリーに冒険者を続けてもらいたいとメンバーに告げた。

冒険者しているリフリーはとても明るくて、俺は依頼を達成して帰って来たリフリーの話しを聞くのが楽しかった。

村では役立たずと言われていても、目的の為に直走った俺の人生とは違い、自由奔放に生きるリフリーを見ているのが楽しかった。

メンバー達が納得したかは俺にはわからないが、俺は農業を始められるまでリフリーには手伝ってもらうつもりだと告げる、メンバー達はそれならさっさと作業を終わらせてしまおうと扉の前に集まった。

さすがに鍵開けスキルを持っているだけあって、あっさり開いた扉の中はやはり俺の予想通り仕掛けが設置してあった。

余程頑丈な作りと手入れのおかげか数十年を経てもサビなどは浮いておらず今にも動き出しそうだ。

複数のギアが組み合わされたその仕掛けの端から天井を経由して鎖が吊り下がっている。

おそらく、その鎖を引っ張ると仕掛けが作動する仕掛けだろう、俺は躊躇わず鎖を引っ張った。

『ガコン』という音がして空転していたギアが本体の仕掛けと噛み合うと本体の仕掛けは最初はゆっくりだが、次第に勢いよく回り出した。

「おーーー‼︎」

小屋の外で歓声が上がる、やはりこの仕掛けは噴水を動かす仕掛けで正解だった、俺も小屋を出て噴水を見に行く。

噴水はあの時のままに勢いよく水を吹き出している、最初は濁っていた水も直ぐに透明な水に変わった。

水の勢いはおよそ10メートルの高さまで吹き出している、水量としては充分だ。

後はこの水を城壁の上まで運ぶのだが、俺はすでにその方法を考えてある。

もともとこの異世界にあった金属加工の技術と俺の現世でのパイプ製造技術を組み合わせ、俺が王様時代に金属製のパイプをすでに流通させている。

この異世界の金属は鉄や鉛と異なり、とても軽く柔軟性もあり丈夫という都合の良い特徴を持っている。

確かこの屋敷にも使われている筈だが、この屋敷のものは使い物にはならないだろう、なぜかというとこの金属は約20年あまりで分解してしまうという欠点を持っており、俺が王様時代に王都に普及させた水道網も途中で作り直さなければならなくなった。

その後は定期的なメンテナンスを施すことで設備を維持する方法が浸透して、今の王都では貴族の屋敷だけでなく一般家庭でも水道が普及している。

その金属の原料をリスマイア王国は豊富に有しており、値段も手頃な価格に設定されている。

俺はこのパイプを使って城壁の上まで水を運ぼうと考えている、噴水の近くに櫓を組んで水を溜める水槽を置く、そこに噴水の吹き出し口を改良して水槽に水が入る様に調節した。

噴水に直接、パイプを繋げる方法もあるが、俺的には水が吹き出して水槽に溜まる方がダイナミックで好きなので水槽を選んだ。

水槽からは城壁まで支柱を立てパイプを繋いでいく、城壁まで来たら二手にパイプを分けて城壁の上を這わせる。

そのパイプには穴を開けて水が出るようにした、出る量には工夫が必要だろうが、これならば上手くいってくれるだろう。

やる事は決まった!

1. 櫓を組んで水槽を置く。
2.城壁まで支柱を立ててパイプを敷く。
3.城壁の上にパイプを這わす。
4.城壁の上の野菜の栽培場所に板で枠を作る。
5.その枠の中に土を入れる。
6.野菜の苗を植える。

以上だ。

俺はリフリーに噴水の勢いの如くに手順を説明した。

「ザイン!お前、それを1人でやるつもりか?」

リフリーと一緒に俺の説明を聞いていた森の護り手のメンバーが口を挟む。

「お前、1人でそれだけの事をしていたら何年かかるかわからないぞ、お前、さっきリフリーは冒険者を続けていいって言ったばかりじゃないか?」

確かにこの男の言う通りリフリーは俺を手伝うと言うだろう、彼女はそういう女性なのはわかっている。

森の護り手のメンバーもリフリーの性格は熟知している、『やれやれ』と言った風にメンバー達は顔を見合わせると「こういう事になるんだよな」と俺の方を向いて、「俺達は何から始めたらいいんだ」とぶっきらぼうに言って動き出した。





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