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第 7話 領地で農業はじめました。

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リフリーの答えはあっさりしたもの。

「キャロとあなたが一緒なら私はどこだって構わないわ。」

最高の嫁さんだ、俺も2人と一緒ならどこだって構わない。

俺とリフリーは村に帰ると絶対にここを離れないと泣くキャロをなんとか説き伏せて指定された領地に旅立った。

指定された領地は旧リズモンド領、王だった俺が疾風リズモンドに与えた領地だ。

勇者の中で唯一頑張ったリズモンド家は代替わりのたびに出世して、最初は男爵だったが、ロフトの父親の代で公爵にまでになった。

それに伴い領地も王都により近い場所に領地替えとなって、最初のリズモンド領は今は誰も管理する者がいない荒地となっている。

この荒地をどないすればいいのだ⁉︎

俺が騎士団長の時に訪れた時の整えられた庭も菜園も見る影もなく荒れ果てている。

あの立派だった屋敷も廃墟と化して人が住める状態ではない。

俺は家作りから始める事になる、家族3人が住む家だ、大きくなくていい、幸いに元菜園だった場所の近くにリズモンド家の使用人達が使っていた石造りの物置き小屋がある。

相当に傷んでいるが補強すれば住めないこともない、家を補強する資材は屋敷の中から使えそうな物を探して使えばいい。

リフリーの協力もあって作業は5日で終わった、否、5日もかかった。

その間、俺達家族は村で借りた馬車の中で3人で寄り添って寝ることになる。

俺はまんざらでもなかったが今日からはゆっくり寝られる、疲れも取れるだろう明日からまた頑張れる。

いよいよ明日からは農業を開始する計画だ。

完成したばかりの小さな家の真新しいベッドの上で明日の事を考えると俺はなかなか寝付けなかった。



         ☆



菜園と言っても貴族の領地の菜園、下手な農家の農地より広い。

そこが無惨に荒れ果てている、これでは野菜の苗を植えられるまでに整地するのに何年かかることか?

村から持ってきた農具は『クワ』一本だけ、しかも人手は俺1人とくる。

リフリーも手伝ってはくれるだろうが冒険者の仕事を優先しないと収入がなくなってしまう。

これほどの広さの領地が有るのに下手をすれば親子3人飢え死にしてしまう。

とりあえず、簡単に野菜が作れる方法がないか考えてみる、もちろん、そんな方法が無いことはわかった上でだ。

そんな方法があるなら皆、苦労をしていない、魔法を使って農業をするという方法も考えられるがそれもダメ。

村でも魔法を使う者はいたが、作業に魔法を使用する者はいなかった。

何故か?

答えは簡単、作業以上に魔法の使用は体に負担がかかるから。

人の力で作業した方が速くて正確に出来るし、なにより俺は魔法をまったく使えない。

やはりここは、初心に帰って農業を考えるのが一番。

まず、野菜作りに必要な物は?

土、水、日光、肥料、大体こんなところだろう。

この4要素が有れば、とりあえず野菜は作れる、否、この4要素が有れば作る場所は関係ない。

俺が元いた世界の野菜作りの方法で、プランター栽培という方法があるが、容器に土と肥料を入れ、水の管理さえ間違えなければそれなりの収穫が見込めた。

これならば畑を耕さなくても済む為に直ぐにでも栽培出来る。

但し水の管理が大変で水切れを起こしやすくその対策は必要になる。

その水はどこから確保しよう、雨任せでは農業とは言えない。

ここはどうしても安定した水源の確保が必要だ。

旧リズモンド領の近くには川があるが人が運ぶには距離がある、しかも1人が運ぶ量などたかがしれている。

近くの水源に思い当たらぬこともない。

リズモンド家がここに居た頃は菜園で沢山の野菜を栽培していた、それほど詳しく見ていた訳ではないが使用人達が水を運んでいる様子はなかった。

ということは近くに水源が有るということに繋がるのではないか?

俺はリフリーにも協力してもらい水源を探す事になる。

井戸も考えられるが貴族の屋敷に相応しくないと作られないことのほうが一般的だ。

俺は井戸繋がりで噴水を思い出す、リズモンド家の噴水はそれは立派な噴水だった。

俺は記憶を辿って噴水の場所まで行ってみる、荒れた菜園の逆の方角、今は荒れ果てた正面門から屋敷に続く道の中央に静かに『それ』はあった。

昔の面影もなくすっかり寂れた噴水を前に俺は兄との思い出を思い出していた。

俺、率いる騎士団が未知の魔獣討伐作戦開始の前日、特に用があった訳ではないが俺はリズモンド邸を訪れて兄と会っていた。

その時の騎士団は連戦連勝で向かうところ敵なし、未知の魔獣が相手でも恐れる者は誰もいなかった。

この日も今回の討伐の話しをして、また武功が増えると兄と笑い合って別れた、それが兄との最期の会話になるとも知らずに、その時の噴水は水を満々とたたえていた。

もう一度、この噴水を復活出来れば水源としては申し分ない。

地下水脈と仕掛けが生きていれば復活する筈、水脈の知識については多少の知識はある、俺は王の時代に水路作りの為に詳しい人に聞いて回った経験があるからだ。

その多少の知識で見ると確かにこの水脈は生きている、ならば仕掛けの方だ。

そんな複雑な仕掛けでは有るまいし、この噴水の近くに有る可能性は高い、俺とリフリーは探すことにした。


























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