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第 6話 宰相 リズモンド
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王都の手前数キロというところで俺達一行は騎士団に出くわした。
まるで俺達を待っていたかのように待機していた騎士団は王都まで護衛するという名目で俺達に同行した。
王都では騎士団が俺達を伴って帰還することがわかっていたかのごとく民衆達が花を持って門から続く大通りを埋め尽くし口々に叫んでいた。
「騎士団、万歳!」
「我らの英雄達のご帰還だー!」
「新しき貴族の誕生だー!
「森の護り手が伝説級の魔獣を倒したってよ!」
さては、これもリズモンドの差し金か?
国を脅かすほどの魔獣を普通の冒険者パーティーが倒してしまったのでは騎士団のメンツが立たない。
いずれ王都の民衆に情報が伝わる前に先手を打って騎士団に冒険者が手を貸したという絵を描いてしまおうとしたわけか!
「ロフトの時代になってもリズモンド家は健在か!」
俺は間近に迫った王城を見上げてつぶやいた。
荘厳にして華麗なリスマイア王国王都、そこに建つルミナス城。
我が妃ルミナスの名を冠した城、この門をくぐるのはいつ以来か。
我が妃と言ったが、今の俺の嫁ではない、最初の転生時の初代リスマイア王の俺だ。
俺の最初の転生は精気溢れる20歳そこそこの肉体で転生した、肉体的ステータスに恵まれ魔法も使え向かう所敵なし。
モンスターを倒していくうちに、この大陸に点在していた小さな村々が活動範囲を広げ村同士が繋がり線になった。
やがてその線は一つとなり街になる。
その街は更にまとまり国となる。
俺はその頃は新たな仲間達を加えて、人々から4勇者などと呼ばれるまでになる。
賢者ロフニール、疾風リズモンド、魔女ビューネイ、彼等の働きでモンスターからこの地を人間の手に取り戻した。
領土の北は雪深き山脈が連なり、他の地域は草原と岩場ばかりのこの土地の中央に俺は王都を築き王となる。
王となった俺は国の守りを固める為に山脈がある北を除いた東、西、南をそれぞれロフニール、リズモンド、ビューネイを貴族の位につかせて領地を与えて守らせた。
そして、俺は前世の知識と人々の力を借りて国を発展させる事に集中した。
上下水道の整備から始まって街と街を繋ぐ街道を作り物資の流通を開始した。
やがて隣国との交流も始まり益々、王都とそれを囲む街は発展していく。
今の王都の街並みが整った頃には30才を過ぎており、まわりの勧めもあって隣国から妃を取るが政務に防衛にそれまで以上に激務が続く。
そんな中、力を発揮したのは疾風ことリズモンド。
彼のあだ名の疾風は動きが速いという意味だけではなく、行動が早い、頭の回転が早い為に人々がつけたあだ名で。
政務でも、疾風の力を遺憾なく発揮して国の発展に大いに貢献してくれた。
そのリズモンド子孫、ロフトが王の間で待っている、あの悪ガキの顔を見るのも久しぶり、どんな言い訳をするか見ものだ。
☆
俺達の一行が王の間に通されるとリズモンドの姿はなく、衛兵からここで待つようにと指示される。
今は王様が不在の為、宰相が政務を取り仕切っているそうで、その仕事がいま少しかかるそうだ。
ひとを呼びつけておいて何様のつもりだ、俺は子どもの頃のロフトを知っているだけに無性に腹が立つ。
俺達は片膝立ちのまま待っているとロフトがゆうゆうと現れて俺達をチラリと見ると、玉座の横に立つ。
これで玉座に座るようなら大したものだが、この男にそこまでの度胸はない。
この後、順番に今回の事のあらましを聞いていくのだろうという俺の予想を裏切ってロフトはいきなり俺を指名した。
「ザインという者は?」
いきなりの事で俺の返事はうわずってしまう。
「其方がザインか、初代王と同じ名前とは其方の両親も無礼なものよな」
無礼と俺に言われても俺が付けた名前ではないし、なによりこの名前は運命で決まった名前で俺は転生のたびにザインという名前になる。
そういう訳で初代王ザイン、騎士団長ザイン、冒険者ザインとなり今は農夫のザインと呼ばれている。
宰相 ロフトは俺の頭の中の考えなどお構いなしに話しを続けた。
「ザインよ、此度の石化獣の討伐に一役買ったそうだが、其方、どこからその情報を知り得た?」
ロフトは更に捲し立てる。
「石化獣のことなど今や文献に記されているだけ、ましてや石化させる攻撃をする石化獣など文献にすら載っておらん!」
明らかにロフトは俺を疑っているような口ぶりだ、大方、俺を他国のスパイとでも思っているのか。
俺はロフトにだけ聞こえる小声で囁く。
「ロイド。悪態が過ぎるとルイージュ義理姉さんに怒られるぞ。」
ロイドとはロフトが子どもの頃に自分で名乗っていた名前で俺とロフトだけが知っている名前だ。
ロフトの父親が賢者ロフニールから付けたロフトという名前が嫌で、その頃流行っていた英雄譚の主人公ロイドを密かに名乗っているとロフトから俺はこっそり教えてもらった。
何故、俺がロフトと親しいのか、それは俺とロフトが叔父と甥っ子の関係だからである。
俺は2度目の転生でロフトの父親と兄と弟の関係として生まれた、ロフトの父親がリズモンド家の嫡男で俺は弟、兄はリズモンド家を継いで俺は騎士団に入った。
しかし、兄との関係は良く、騎士団長になってからも、たびたびリズモンド家を訪れた。
兄の嫁さんのルイージュとも仲が良く、よくロフトのことも相談されたものだ。
まだ子どものロフトは英雄に憧れており騎士団で活躍していた俺とも馬があった。
そういう訳で俺はロフトをよく知っている訳だ、俺の『ロイド』の一言でみるみるロフトの顔色が変化していった。
目を見開き、顔が紅潮していく。
「き・き・貴様! 何者だ⁉︎」
その様子は側から見ていた者も驚く程だ。
慌てるロフトを見兼ねた側近が声をかける。
「 ロフト様 。」
側近の声で我に返ったロフトはひとつ咳払いをすると、先程までの狼狽ぶりが嘘のように俺を見ると。
「何やら冒険者が夢を見ているようだが、さっさと先程の質問の返事をするがよい。」
もう、くだらぬ話しはするなという無言の圧力が伝わってくる。
さて?俺はどう返事をしよう、転生前の戦闘で知りました、などと言っても世迷い言を言うなと下手をすれば投獄されてしまう。
「・・・・・」
ここは何も言わないに限る。
俺はダンマリを決め込んだ。
ロフトはしばらく考えた後に側近を呼ぶと、驚く側近をよそに何やら申しつけている。
そして側近に言い終わると俺の方を向いて言った。
「近頃、辺境では魔獣の活動が活発と聞く、そこでだ!ザインよ石化獣を倒した其方の知恵を王国に貸してくれぬか?」
「其方に領地を与える故、家族でそこに移り住むが良い!」
俺が言葉を挟む隙もなくロフトは捲し立てる。
「これは命令で、拒否する権利はない故速やかに移り住むのだぞ!」
とんでもない事になった、後ろで聞いているリフリーもびっくりしている。
これからどうなるのかわからない俺達をロフトは「下がって良いぞ」の一言で済ませた。
俺達はこの後、どうしようかの相談を王都の宿で行う事になった。
まるで俺達を待っていたかのように待機していた騎士団は王都まで護衛するという名目で俺達に同行した。
王都では騎士団が俺達を伴って帰還することがわかっていたかのごとく民衆達が花を持って門から続く大通りを埋め尽くし口々に叫んでいた。
「騎士団、万歳!」
「我らの英雄達のご帰還だー!」
「新しき貴族の誕生だー!
「森の護り手が伝説級の魔獣を倒したってよ!」
さては、これもリズモンドの差し金か?
国を脅かすほどの魔獣を普通の冒険者パーティーが倒してしまったのでは騎士団のメンツが立たない。
いずれ王都の民衆に情報が伝わる前に先手を打って騎士団に冒険者が手を貸したという絵を描いてしまおうとしたわけか!
「ロフトの時代になってもリズモンド家は健在か!」
俺は間近に迫った王城を見上げてつぶやいた。
荘厳にして華麗なリスマイア王国王都、そこに建つルミナス城。
我が妃ルミナスの名を冠した城、この門をくぐるのはいつ以来か。
我が妃と言ったが、今の俺の嫁ではない、最初の転生時の初代リスマイア王の俺だ。
俺の最初の転生は精気溢れる20歳そこそこの肉体で転生した、肉体的ステータスに恵まれ魔法も使え向かう所敵なし。
モンスターを倒していくうちに、この大陸に点在していた小さな村々が活動範囲を広げ村同士が繋がり線になった。
やがてその線は一つとなり街になる。
その街は更にまとまり国となる。
俺はその頃は新たな仲間達を加えて、人々から4勇者などと呼ばれるまでになる。
賢者ロフニール、疾風リズモンド、魔女ビューネイ、彼等の働きでモンスターからこの地を人間の手に取り戻した。
領土の北は雪深き山脈が連なり、他の地域は草原と岩場ばかりのこの土地の中央に俺は王都を築き王となる。
王となった俺は国の守りを固める為に山脈がある北を除いた東、西、南をそれぞれロフニール、リズモンド、ビューネイを貴族の位につかせて領地を与えて守らせた。
そして、俺は前世の知識と人々の力を借りて国を発展させる事に集中した。
上下水道の整備から始まって街と街を繋ぐ街道を作り物資の流通を開始した。
やがて隣国との交流も始まり益々、王都とそれを囲む街は発展していく。
今の王都の街並みが整った頃には30才を過ぎており、まわりの勧めもあって隣国から妃を取るが政務に防衛にそれまで以上に激務が続く。
そんな中、力を発揮したのは疾風ことリズモンド。
彼のあだ名の疾風は動きが速いという意味だけではなく、行動が早い、頭の回転が早い為に人々がつけたあだ名で。
政務でも、疾風の力を遺憾なく発揮して国の発展に大いに貢献してくれた。
そのリズモンド子孫、ロフトが王の間で待っている、あの悪ガキの顔を見るのも久しぶり、どんな言い訳をするか見ものだ。
☆
俺達の一行が王の間に通されるとリズモンドの姿はなく、衛兵からここで待つようにと指示される。
今は王様が不在の為、宰相が政務を取り仕切っているそうで、その仕事がいま少しかかるそうだ。
ひとを呼びつけておいて何様のつもりだ、俺は子どもの頃のロフトを知っているだけに無性に腹が立つ。
俺達は片膝立ちのまま待っているとロフトがゆうゆうと現れて俺達をチラリと見ると、玉座の横に立つ。
これで玉座に座るようなら大したものだが、この男にそこまでの度胸はない。
この後、順番に今回の事のあらましを聞いていくのだろうという俺の予想を裏切ってロフトはいきなり俺を指名した。
「ザインという者は?」
いきなりの事で俺の返事はうわずってしまう。
「其方がザインか、初代王と同じ名前とは其方の両親も無礼なものよな」
無礼と俺に言われても俺が付けた名前ではないし、なによりこの名前は運命で決まった名前で俺は転生のたびにザインという名前になる。
そういう訳で初代王ザイン、騎士団長ザイン、冒険者ザインとなり今は農夫のザインと呼ばれている。
宰相 ロフトは俺の頭の中の考えなどお構いなしに話しを続けた。
「ザインよ、此度の石化獣の討伐に一役買ったそうだが、其方、どこからその情報を知り得た?」
ロフトは更に捲し立てる。
「石化獣のことなど今や文献に記されているだけ、ましてや石化させる攻撃をする石化獣など文献にすら載っておらん!」
明らかにロフトは俺を疑っているような口ぶりだ、大方、俺を他国のスパイとでも思っているのか。
俺はロフトにだけ聞こえる小声で囁く。
「ロイド。悪態が過ぎるとルイージュ義理姉さんに怒られるぞ。」
ロイドとはロフトが子どもの頃に自分で名乗っていた名前で俺とロフトだけが知っている名前だ。
ロフトの父親が賢者ロフニールから付けたロフトという名前が嫌で、その頃流行っていた英雄譚の主人公ロイドを密かに名乗っているとロフトから俺はこっそり教えてもらった。
何故、俺がロフトと親しいのか、それは俺とロフトが叔父と甥っ子の関係だからである。
俺は2度目の転生でロフトの父親と兄と弟の関係として生まれた、ロフトの父親がリズモンド家の嫡男で俺は弟、兄はリズモンド家を継いで俺は騎士団に入った。
しかし、兄との関係は良く、騎士団長になってからも、たびたびリズモンド家を訪れた。
兄の嫁さんのルイージュとも仲が良く、よくロフトのことも相談されたものだ。
まだ子どものロフトは英雄に憧れており騎士団で活躍していた俺とも馬があった。
そういう訳で俺はロフトをよく知っている訳だ、俺の『ロイド』の一言でみるみるロフトの顔色が変化していった。
目を見開き、顔が紅潮していく。
「き・き・貴様! 何者だ⁉︎」
その様子は側から見ていた者も驚く程だ。
慌てるロフトを見兼ねた側近が声をかける。
「 ロフト様 。」
側近の声で我に返ったロフトはひとつ咳払いをすると、先程までの狼狽ぶりが嘘のように俺を見ると。
「何やら冒険者が夢を見ているようだが、さっさと先程の質問の返事をするがよい。」
もう、くだらぬ話しはするなという無言の圧力が伝わってくる。
さて?俺はどう返事をしよう、転生前の戦闘で知りました、などと言っても世迷い言を言うなと下手をすれば投獄されてしまう。
「・・・・・」
ここは何も言わないに限る。
俺はダンマリを決め込んだ。
ロフトはしばらく考えた後に側近を呼ぶと、驚く側近をよそに何やら申しつけている。
そして側近に言い終わると俺の方を向いて言った。
「近頃、辺境では魔獣の活動が活発と聞く、そこでだ!ザインよ石化獣を倒した其方の知恵を王国に貸してくれぬか?」
「其方に領地を与える故、家族でそこに移り住むが良い!」
俺が言葉を挟む隙もなくロフトは捲し立てる。
「これは命令で、拒否する権利はない故速やかに移り住むのだぞ!」
とんでもない事になった、後ろで聞いているリフリーもびっくりしている。
これからどうなるのかわからない俺達をロフトは「下がって良いぞ」の一言で済ませた。
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