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第 4話 帰還

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俺達は洞窟の前まで行くと直ぐには中に入らず入り口の前から声をかけた。

何故かと言うとリフリー達がトラップを仕掛けている可能性が高いからだ。

もちろん俺達に向けたものではない、魔獣の襲撃に備えてのものだ。

トラップの種類は2種類考えられる、ワイヤートラップとファイヤートラップだ。

ファイヤートラップは可燃性の油を使う仕掛けで、対象物が任意の範囲に入った時に油に火が焚いて相手を攻撃する仕掛け。

逃げ場の限られる狭い場所では特に有効で相手は炎の熱と煙で大概パニックを起こす。

しかし、今回は洞窟と言う場所が問題で狭い場所と言うことは煙の逃げ場が無い、下手をすれば酸欠になる。

こんなリスクの高いトラップはまずリフリーのパーティーでは使わない。

次に考えられるのはワイヤートラップ。

ワイヤートラップは針金線を使ったトラップで対象物が針金線に触れると仕掛けが発動する。

仕掛けは主に針金線自体が刃物の役割をするものを使い、触れた対象物を傷付ける仕掛けと、針金線に触れるとボウガンの矢が発射されるもの。

洞窟のような暗がりの場所では針金線が気付かれ難く仕掛けの発動率は高い。

仕掛けは一度しか使えず単体にしか有効ではないが、なにより相手の侵入を感知出来ることがありがたい。

もちろん、仕掛けが発動したら2の手、3の手の矢を放つ。

俺は小声で呼びかけた。

「リフリー・・・」

「・・・」

返事はない。

俺は今度は少し大きな声で呼びかける。

「リフリー!」

「・・・」

「・・・ザイン⁉︎  あなたなの?」

暗い洞窟の中からリフリーが現れた。

俺はリフリーの顔を見た途端、気が抜けたのかフラフラとその場にへたり込んだ。

その俺をリフリーは優しく抱き止めると。

「もう!ザインたら、こんなにムチャをして。」と優しい目で俺を見ている。

そのリフリーの姿は傷だらけで、この洞窟までの石化獣との戦いが、いかに激しかったかがわかる。

なにが、『大丈夫、皆、無事』なものか、リフリーのパーティーの誰もが怪我をしている、中には体の一部が石化している者までいるではないか!

洞窟の中でだって、いつ襲撃があるかわからない中、水も食料も無く、眠ることもできない、そんな極限状況で石化獣のガスに怯える。

それなのに救援隊を危険な目に合わせない為に大丈夫なんて。

俺は声を上げて泣いてしまった!

「もう、ザインたら子供みたいね☆」

そう言ってリフリーは優しく俺の頭を撫でた。


救援隊は持ってきた水、食料を全てリフリーのパーティーに提供した、そして石化した男の回復を待って村に帰還する。

多数の負傷者を出したが死者はゼロ、皆一様に笑顔だ、村で俺を馬鹿にしていた知り合いの男が近づいてきて俺に声をかける。

「ザインがこれほど、出来る男だったなんて、知らなかった」

「いままで馬鹿にしてすまない、これからも仲良くしてくれ」

俺は男の肩を軽く叩くと「あぁ」と一言だけ返事をした。

リフリーたちを洞窟から助けた時点で村には知らせを送っていた。

村では夜の帰還に備えてかがり火を用意して待っていてくれ、リフリーのパーティーを含めた全員の帰還に村で唯一の宿屋 兼 食堂 兼 酒場に当のリフリーたちをよそにに村人全員が集まっていつ終わるともしれない宴を繰り広げている。

リフリーたちは村に着くなり緊張の糸が切れたかのようにバッタリと俺の家で寝込んでしまった。


        ☆ 


翌日、リフリーたちが起きるのを待って村長を議長とする緊急村民会議が行われた、議題はもちろん石化獣についてだ。

出席者は全身を石化した男を除きリフリーのパーティー全員と救援隊からベテラン冒険者と数名そして俺。

何故、俺かと言うと、俺の知り合いの男が昨日の宴の席で「俺の親友のザインが、なんと!あの石化獣をたおしたんだ!」などとあることないこと織り交ぜて大袈裟に言って回った。

大多数の村人は何を大袈裟に言っているのだと、信じなかったが、救援隊の一部の人間が「?」、もしかしてザインのお陰かと、気が付かなくていい事に気が付いてしまった。

その為、リフリーの付き添いと言う形で俺もこの会議に呼ばれた。

会議はリフリーのパーティーのリーダーが、どのように石化獣に出会ったかから始まり、救援隊のリーダー、ベテラン冒険者の順で事の経緯を説明していった。

今回、リフリーたちを責める者は、この村ではひとりもいない、むしろリフリーたちが魔獣を引き留めてくれたおかげで村への被害が出なかった訳で、村にとっては功労者。

では何が問題かと言うと魔獣の倒し方。

村にきた依頼は魔獣の討伐依頼、魔獣を倒してしまっても構わないのだが、村人だけで倒してしまったのは不味かった。

石化獣は文献に出てくるような魔獣で、しかも今回の石化獣は変異種、このような場合、街の冒険者ギルドに連絡した後、援軍を待って討伐するか、王国騎士団に任せるのが普通。

村長が俺に質問する。

「ザイン、お前が今回の魔獣の討伐に一役かったようだが、お前、魔獣の弱点をどこで知った?」

いきなり直球で来やがった!

街の文献で知ったなどとは言えない、そんな文献など無いのだから後で嘘がバレる。

昨夜からどう説明しようか、考えてはきたが、曖昧な回答では納得してくれないか?

いっそのこと俺は転生者だとばらしてしまうか?

出来るわけがない、誰も信用しない。

役立たずなら我慢できるが、嘘つきではキャロに申し訳ない。

俺は苦しいが偶然に石化獣の弱点に気が付いたと村長に説明した。

「・・・・・」

村長はしばらく考えたあと。

「まぁよい、ザイン、お前もギルドへの説明に同行する様に。」

そう言って席を立った。















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