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第 2話 石化獣

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「うわー!でたぁー!」

その叫び声は救援隊の先頭を行く冒険者から発せられた声だった。

救援に向かって半日、俺達救援隊はリフリーのパーティーの痕跡を辿りつつパーティーが向かったと思われる方向を探していた。

いくつかの痕跡を発見し、この先は岩場地帯、捜索は容易になると誰もが思った矢先、我々救援隊の前にそいつは現れる。

全身を硬い甲皮で覆われた魔獣、『石化獣』。

新米冒険者が震えながら叫く。

「こんな魔獣、見たことないぞ!」

それに対してベテラン冒険者が落ち着いて皆に言う。

「コイツは石化獣だ!ギルドの文献で読んだことがある。」

続け様にベテラン冒険者が皆に指示を出す。

「石化獣の唾液には麻痺効果がある!皆、唾液には気をつけろ!」

そう、コイツの名前は石化獣、俺は石化獣とは何度も戦ったことがある。

もちろん転生前の記憶だが、確かに石化獣の唾液には麻痺効果があるが気をつけるべき攻撃は唾飛ばし攻撃だけ。

他は噛まれた時だが石化獣は図体がデカイその見かけの通り動きが遅い、こちらが怪我でもして動けないのならまだしも石化獣に噛まれる冒険者はいない。

「石化獣はもういなくなった筈?」。

俺の3度目の転生時に石化獣のボスを倒したことで、この世界から石化獣は消えたはずだ。

「そういうことか⁉︎」

俺は納得してしまった。

何の力も何のスキル持たずにこの世界に4度目の転生をして、いままで平和に生きてきた俺に。

転生を司る神様は、忘れていた『おもちゃ』をおもちゃ箱から引っ張り出して遊ぶように、俺の運命を弄ぶのか?

俺の1度目の転生はチートステータスにチートスキル持ちと転生の神様は女神様で、俺は女神様に愛されて転生したのかと思えるほどだった。

経験値稼ぎの為に手当たり次第にモンスターを倒しているうちに、この大地をモンスターから人間の手に取り戻して、俺は初代の王となった。

俺は王として前世の知識を活かして国を発展させ、このリスマイア王国を建国するに至った。

リスマイア王国の初代の王となってもモンスターとの戦いは長きに続き、その中の戦いの一つに石化獣との戦いが含まれる。

その戦いのようすを国の学者たちが文献に残したものが今の世に出回っている。

確か、その時の石化獣の唾液攻撃には麻痺効果しか無かった。

しかし、目の前の石化獣は俺の記憶の石化獣とはどこか違っている。

攻撃ひとつ取っても何かおかしい?

石化獣から少し離れた場所に倒れているリフリーのパーティーと思われる男、その男の状態は唾液の麻痺効果でやられたとは思えない状態。

石化獣と名前が付いてはいるが唾液の効果は麻痺するだけ、しかもその麻痺も数時間から半日で治る。

しかし、その男の症状は正に石化状態!

その初期症状なのだ、その男のまわりの草木も石化している。

石化獣の唾飛ばしでこんなに広範囲に被害が出るものなのか?

「撤退だー! 一時撤退する!」

冒険者のリーダーの命令に近い指示が飛ぶ‼︎

俺は思わず叫んでしまった。

「ダメだ!まだ間に合う‼︎」

「?」 「?」「!」「?」

皆が叫び声を上げた俺の方に振り返った。

「ザイン!モンスターと戦ったこともないお前になにがわかる!」

村の知り合いがそう思うのも無理はない、なにしろ俺はこの村では役立たずで通っているのだから。

しかし、今ここで撤退したら手遅れになってしまう、そう、あの時の俺のように。

俺はこの石化獣に似た石化獣と戦ったことがある、3度目の転生で冒険者をしている時だ。

石化獣の巣を発見して仲間パーティーと討伐に行った。

それが俺の最後の依頼になるとはこの時の俺はわからなかった。

この時の俺のパーティーは皆、俺と同等の能力を有しており大陸最強とまで言われたほどに強く。

石化獣の巣の攻略も楽々こなす筈だったのに、巣の最後で奴に出会う。

奴の攻撃は麻痺効果のある唾ではなく、霧状のガスを噴射するもの、しかもそのガスには石化効果があった。

仲間の何人かがガスにやられ、俺も左腕をやられた、苦戦の末になんとか倒して、石化解除の方法も見つけた。

この石化状態は表面から内部にジワジワと進行していき重要機関に達すると死に至る。

血液の流れからも進行が進み、動けばそれだけ早く進行する。

俺は石化獣を倒すのに動き過ぎた為に手遅れになったが仲間は助かった。

目の前の男も今ならまだ間に合うのだ。

なにより、リフリーたちの事が気がかりでならない、リフリーたちの中にガスにやられた者がいたとしたら処置は早い方が良い。

リフリーのパーティーで見つかったのは石化したこの男だけで、あとは荷物が散乱している。

リフリー達がこの辺りにいる可能性は高い。

石化獣を倒せないと判断して身を隠しているはずだ。

なら、どこに隠れる?

可能性としてはこの先にある洞窟!

人間が入るには充分な大きさだが石化獣の図体では奥には進めない、村人なら誰もが知っている洞窟。

逃げ込むとしたら、そこしか考えられない、石化獣も洞窟に入るのを諦めて、少し離れたこの場所で逃げ出した獲物を襲おうと待ち構えているのだろう。

どの道、目の前の石化獣をなんとかしなければ道は開かないのだ。

決断の時が迫っている、俺にはそう感じられた‼︎



















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