865 / 929
ー閃光ー157
しおりを挟む
本当に和也は頭の回転が早いのかもしれない。
まさか、今の思い出話から逆手に取り、それを利用して雄介の記憶を戻そうとしているのだから。
もしかしたら逆効果になるかもしれない。しかし、それが記憶を取り戻す鍵になる可能性もある。
「他に、雄介との思い出とかあるのか?」
「そりゃな……たくさんあるに決まってるじゃんか……」
「じゃあ、特に印象に残ってることとかあるのか?」
「やっぱ、さっき話したけど、俺と雄介が初めて喧嘩した時だろ? あとは、雄介がレスキュー隊員になって大阪に異動が決まった時、黙って関西方面へ行っちゃったことだろ? 本当、そう言ったらキリがないぜ」
俺は、和也の言う通りに雄介との思い出話を話し始める。
かなり昔の話だから忘れていたけれど、雄介に異動命令が出て、俺に何も話さずに引っ越してしまったことがあった。あの時の俺は本当に寂しい思いをしていたことを思い出した。
だけど、今の状況は全く違う。
勝手に居なくなったあの時とは違って、震災で雄介と再会してからは連絡が取れるようになり、それが心の支えになっていた。しかし、今の雄介は記憶が無い。肉体はここにあるけれど、心はまるで空っぽだ。どっちがいいかと聞かれたら、どちらも辛いけれど、今の状況の方が余計に辛く感じるのは気のせいだろうか。
やはり、雄介の心と体が揃って初めて雄介だと言えるのかもしれない。
でも、記憶喪失だっていつかは治る。その時を待つしかないのだろう。
なら、今は和也たちがいる間に雄介の思い出話をしておいた方がいい。少しでも記憶の奥底に俺たちの存在が蘇ってくれれば十分だからだ。
「じゃあさ、和也は何か雄介のことで思い出話的なことはあるのか?」
「そうだなぁ?」
和也と俺がそんな会話をしていると、裕実の方も何かに気付いたらしく、目を丸くしたかと思うと、笑顔で俺たちの方へと視線を向けてきた。
「雄介とは色々あり過ぎたかな? まぁ、お前たちが初めて喧嘩した時の話に関係してるんだけどさ……。あん時、次の日だったか分からないんだけど、仕事の帰りに雄介が病院に望を迎えに来た時があっただろ?」
そこまで言うと、和也は俺の方を見た。
「ああ」
俺が簡単に頷くと、和也は話を続けた。
「あん時さ、俺は前日かなんかに雄介の家に話しに行ってたんだよな?」
「へ? そうだったのか!?」
「だろ? 確かこの話は望にもしたことがなかったから、多分、望的にも初耳だったと思うぜ」
そう言って、和也は話を始めた。
まさか、今の思い出話から逆手に取り、それを利用して雄介の記憶を戻そうとしているのだから。
もしかしたら逆効果になるかもしれない。しかし、それが記憶を取り戻す鍵になる可能性もある。
「他に、雄介との思い出とかあるのか?」
「そりゃな……たくさんあるに決まってるじゃんか……」
「じゃあ、特に印象に残ってることとかあるのか?」
「やっぱ、さっき話したけど、俺と雄介が初めて喧嘩した時だろ? あとは、雄介がレスキュー隊員になって大阪に異動が決まった時、黙って関西方面へ行っちゃったことだろ? 本当、そう言ったらキリがないぜ」
俺は、和也の言う通りに雄介との思い出話を話し始める。
かなり昔の話だから忘れていたけれど、雄介に異動命令が出て、俺に何も話さずに引っ越してしまったことがあった。あの時の俺は本当に寂しい思いをしていたことを思い出した。
だけど、今の状況は全く違う。
勝手に居なくなったあの時とは違って、震災で雄介と再会してからは連絡が取れるようになり、それが心の支えになっていた。しかし、今の雄介は記憶が無い。肉体はここにあるけれど、心はまるで空っぽだ。どっちがいいかと聞かれたら、どちらも辛いけれど、今の状況の方が余計に辛く感じるのは気のせいだろうか。
やはり、雄介の心と体が揃って初めて雄介だと言えるのかもしれない。
でも、記憶喪失だっていつかは治る。その時を待つしかないのだろう。
なら、今は和也たちがいる間に雄介の思い出話をしておいた方がいい。少しでも記憶の奥底に俺たちの存在が蘇ってくれれば十分だからだ。
「じゃあさ、和也は何か雄介のことで思い出話的なことはあるのか?」
「そうだなぁ?」
和也と俺がそんな会話をしていると、裕実の方も何かに気付いたらしく、目を丸くしたかと思うと、笑顔で俺たちの方へと視線を向けてきた。
「雄介とは色々あり過ぎたかな? まぁ、お前たちが初めて喧嘩した時の話に関係してるんだけどさ……。あん時、次の日だったか分からないんだけど、仕事の帰りに雄介が病院に望を迎えに来た時があっただろ?」
そこまで言うと、和也は俺の方を見た。
「ああ」
俺が簡単に頷くと、和也は話を続けた。
「あん時さ、俺は前日かなんかに雄介の家に話しに行ってたんだよな?」
「へ? そうだったのか!?」
「だろ? 確かこの話は望にもしたことがなかったから、多分、望的にも初耳だったと思うぜ」
そう言って、和也は話を始めた。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる