800 / 929
ー閃光ー92
しおりを挟む
「あ……」
俺は思わず新城の考えていることに納得してしまい、声に出てしまっていた。
それに気付いたのか、新城は俺に向けてウインクしてくる。
相変わらず新城に先を越されたことにイラッとはしたが、そこはとりあえず抑えて、今は新城に合わせた方がいいだろう。
「……神経衰弱? って、どうやってやるんだ?」
一応、興味を持ったふうに言ってみたが、実際にはこれまでこういったゲームに縁がなく、本気で聞いてしまっていた。
「え? あー!」
一瞬、新城は驚いたような感じを見せたが、さすが頭の回転が早いだけのことはある。その一瞬で俺の言葉から何かを見極めたらしく、その後は丁寧に説明してくれる。
俺もトランプのルールを理解し、そのゲームに参加し始めた。
同じ数字を合わせていくだけのルールで、あとは記憶力が鍵になるゲームだ。
そう、今の雄介にはぴったりのゲームだろう。
記憶喪失というのは、思い出や家族、知り合いに関する記憶がなくなっているのか、日常生活に関する記憶が欠けているのか、さまざまな記憶が失われている可能性がある。だから、こういった簡単なゲームをして、どこに問題があるのか少しでも分かるようにするということなのだろう。
だからこそ、新城はあえてババ抜きや神経衰弱といったトランプゲームを選んで遊んでいるのかもしれない。
どうやらゲームのルールは新城から教えてもらい、雄介もそれを理解してプレイしているようだ。
雄介は間違えることも多々あるが、それでもゲームのルール自体は把握できていると思う。
まずはその点をゲームを通して確認することができたように思える。
そして俺たちは、本当に記憶力が重要な役割を果たしているので、新城と俺の間には微妙な緊張感が流れているのは気のせいだろうか。
確かに今は新城と俺の間でフレンドリーな雰囲気があるが、このゲームに関しては、見えない闘志があるのかもしれない。
一度記憶したことは忘れない。実琴や雄介がミスすると、すぐに俺か新城が取りに行く。
本来は雄介の記憶喪失の具合を見るためのゲームだったはずなのに、今では新城と俺の真剣勝負になってしまっていたのかもしれない。
無意識の攻防戦。
相手に何かを言うこともなく、静かにそのゲームは進んでいた。
そして最終的に、最も多くのカードを保持していたのは、新城と俺だった。
「吉良先生、なかなかやりますねぇ」
「新城先生だって、なかなかですよねぇ」
その言葉からして、新城が俺を意識していたことが明らかだった。
俺は思わず新城の考えていることに納得してしまい、声に出てしまっていた。
それに気付いたのか、新城は俺に向けてウインクしてくる。
相変わらず新城に先を越されたことにイラッとはしたが、そこはとりあえず抑えて、今は新城に合わせた方がいいだろう。
「……神経衰弱? って、どうやってやるんだ?」
一応、興味を持ったふうに言ってみたが、実際にはこれまでこういったゲームに縁がなく、本気で聞いてしまっていた。
「え? あー!」
一瞬、新城は驚いたような感じを見せたが、さすが頭の回転が早いだけのことはある。その一瞬で俺の言葉から何かを見極めたらしく、その後は丁寧に説明してくれる。
俺もトランプのルールを理解し、そのゲームに参加し始めた。
同じ数字を合わせていくだけのルールで、あとは記憶力が鍵になるゲームだ。
そう、今の雄介にはぴったりのゲームだろう。
記憶喪失というのは、思い出や家族、知り合いに関する記憶がなくなっているのか、日常生活に関する記憶が欠けているのか、さまざまな記憶が失われている可能性がある。だから、こういった簡単なゲームをして、どこに問題があるのか少しでも分かるようにするということなのだろう。
だからこそ、新城はあえてババ抜きや神経衰弱といったトランプゲームを選んで遊んでいるのかもしれない。
どうやらゲームのルールは新城から教えてもらい、雄介もそれを理解してプレイしているようだ。
雄介は間違えることも多々あるが、それでもゲームのルール自体は把握できていると思う。
まずはその点をゲームを通して確認することができたように思える。
そして俺たちは、本当に記憶力が重要な役割を果たしているので、新城と俺の間には微妙な緊張感が流れているのは気のせいだろうか。
確かに今は新城と俺の間でフレンドリーな雰囲気があるが、このゲームに関しては、見えない闘志があるのかもしれない。
一度記憶したことは忘れない。実琴や雄介がミスすると、すぐに俺か新城が取りに行く。
本来は雄介の記憶喪失の具合を見るためのゲームだったはずなのに、今では新城と俺の真剣勝負になってしまっていたのかもしれない。
無意識の攻防戦。
相手に何かを言うこともなく、静かにそのゲームは進んでいた。
そして最終的に、最も多くのカードを保持していたのは、新城と俺だった。
「吉良先生、なかなかやりますねぇ」
「新城先生だって、なかなかですよねぇ」
その言葉からして、新城が俺を意識していたことが明らかだった。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる