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ー閃光ー78
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「あ……」
俺はそれを思い出し、気がついた時には新城の顔を見上げていた。
「……ですよねぇ」
そう言って、新城は笑顔で俺を見つめてくれる。
やっとその言葉に、俺の心は救われたのかもしれない。
確かに、俺が前に記憶を失くした時、雄介は俺の元から逃げてしまって、後悔していると言っていた。もし、俺がここで雄介から逃げてしまったら、きっと雄介が記憶を取り戻した時に後悔するだろう。それを避けるためには、今の記憶の無い雄介に俺が一人で向き合って、頑張っていくしか道はないのだから。
「とりあえず、吉良先生の愚痴は私達がいくらでも受け入れますから、そこは協力させてくださいね。でも、桜井先生と本気で向き合えるのは、結婚している吉良先生しかいないんですから……」
その新城の言葉で、希望が見えてきたような気がした。今まで暗かった俺も、少し明るさを取り戻せたように思える。
まさか新城がここまで俺に手を差し伸べてくれるとは、思っていなかったのかもしれない。これまでは、俺の周りには和也がいてくれたから、新城は特に俺に手を差し伸べることはなかったのだろう。しかし今は、雄介も和也もいないし、朔望たちもいない。そんな状況を察して、新城は俺に手を差し伸べてくれているのだ。それに、和也からすれば、新城は苦手な存在だったのかもしれないが、俺にとっては、同じ外科医として何度も話をしてきたから、わりと身近な存在だったのかもしれない。
俺はひと息ついて、
「仕事しないとなぁ!」
と、気合いを入れる。
「それより、吉良先生、どうしてこちらに来られたんです?」
新城にそう問われ、俺は一瞬にして我に返る。
「あっ! そうだった! 俺、トイレに来たんだって忘れてたぜ」
そんな俺の独り言に、新城はクスリと笑う。
「やっぱり、吉良先生って、仕事以外の時は、どこか抜けてますよね?」
それを聞いた瞬間、俺の顔は一気に赤くなった。
「と、とりあえず、いいからここを出てってくれねぇかな?」
「え? いいじゃないですかぁー。だって、ここには男性しかいないんですよ」
新城は俺の耳元に顔を寄せて、
「それに、さっきの私達の声、聞いちゃってるんでしょう? もしかして、吉良先生、それを聞いて、中が疼いちゃったんじゃないですか?」
その言葉に、俺はさらに顔を真っ赤にする。むしろ、その言葉に発狂しそうになったくらいだ。
「ちょ、ちょっと! マジでいいからさぁ……俺は人に見られるのが苦手なんだよ……!」
そう言って、俺は新城と実琴をトイレから追い出したのだった。
俺はそれを思い出し、気がついた時には新城の顔を見上げていた。
「……ですよねぇ」
そう言って、新城は笑顔で俺を見つめてくれる。
やっとその言葉に、俺の心は救われたのかもしれない。
確かに、俺が前に記憶を失くした時、雄介は俺の元から逃げてしまって、後悔していると言っていた。もし、俺がここで雄介から逃げてしまったら、きっと雄介が記憶を取り戻した時に後悔するだろう。それを避けるためには、今の記憶の無い雄介に俺が一人で向き合って、頑張っていくしか道はないのだから。
「とりあえず、吉良先生の愚痴は私達がいくらでも受け入れますから、そこは協力させてくださいね。でも、桜井先生と本気で向き合えるのは、結婚している吉良先生しかいないんですから……」
その新城の言葉で、希望が見えてきたような気がした。今まで暗かった俺も、少し明るさを取り戻せたように思える。
まさか新城がここまで俺に手を差し伸べてくれるとは、思っていなかったのかもしれない。これまでは、俺の周りには和也がいてくれたから、新城は特に俺に手を差し伸べることはなかったのだろう。しかし今は、雄介も和也もいないし、朔望たちもいない。そんな状況を察して、新城は俺に手を差し伸べてくれているのだ。それに、和也からすれば、新城は苦手な存在だったのかもしれないが、俺にとっては、同じ外科医として何度も話をしてきたから、わりと身近な存在だったのかもしれない。
俺はひと息ついて、
「仕事しないとなぁ!」
と、気合いを入れる。
「それより、吉良先生、どうしてこちらに来られたんです?」
新城にそう問われ、俺は一瞬にして我に返る。
「あっ! そうだった! 俺、トイレに来たんだって忘れてたぜ」
そんな俺の独り言に、新城はクスリと笑う。
「やっぱり、吉良先生って、仕事以外の時は、どこか抜けてますよね?」
それを聞いた瞬間、俺の顔は一気に赤くなった。
「と、とりあえず、いいからここを出てってくれねぇかな?」
「え? いいじゃないですかぁー。だって、ここには男性しかいないんですよ」
新城は俺の耳元に顔を寄せて、
「それに、さっきの私達の声、聞いちゃってるんでしょう? もしかして、吉良先生、それを聞いて、中が疼いちゃったんじゃないですか?」
その言葉に、俺はさらに顔を真っ赤にする。むしろ、その言葉に発狂しそうになったくらいだ。
「ちょ、ちょっと! マジでいいからさぁ……俺は人に見られるのが苦手なんだよ……!」
そう言って、俺は新城と実琴をトイレから追い出したのだった。
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