上 下
771 / 877

ー閃光ー63

しおりを挟む
 すると、何でか雄介の方も俺と一緒に立ち上がり、俺の腕をガッチリと掴み、強い瞳で俺の方を見つめてくる。

 俺は心の中で雄介のその行動に「……へ?」と思っていると、

「私たちって、本当に恋人同士だったんでしょうか? なら、恋人同士だったのなら、私は望さんのことを抱いてもいい? っていうことでもありますよね?」 
「……はぁ?!」

 思わず雄介の言葉に裏声を上げてしまう俺。本当に今、雄介が言った意味がまったく理解できなかった。いや、理解はできているのだけど、記憶のない雄介が何でそんなことを言っているのかが理解できなかったという方が正しいだろう。

 そこで、俺は息を吐く。

「ってか、雄介……? 一体どういう意味でそういうことを言ってるんだ?」

 言葉と同時に、今の雄介に冷静になってもらいたいと思ったのか、俺は腕を掴んでいた手を離す。

「だから、特に意味なんていうのはないですよ。私たちの仲っていうのは、恋人同士……えっと……今の時代は同性同士でも結婚できる時代になったはずですから、私たちっていうのは、結婚してるわけですよね? なら、結婚した者同士の営みをした方がいいんじゃないですかね?」 
「……はぁ?!」

 そこはきっと男性だからなのだろう。そういう欲に関しては本能が働いているのかもしれない。

「まぁ、確かにそうなのかもしれないけどさ……でも、お前って、今記憶が無いわけなんだろ? なら、そういうことに関しての知識っていうのは無いんじゃねぇのか?」 
「でも、そこは普通に考えて、人間なのですから、本能ってやつですよー。それに、男なんですから、目の前に好きな方がいらっしゃれば、食べちゃいたいって思うのは普通なんじゃないんでしょうか?」

 しかし敬語なのに、これだけペラペラとそういうことに関しての知識がある雄介。確かに人間なのだから、そういったことに関して体っていうのは正直なのかもしれない。

 そこで、俺は頭を抱える。

 本当に記憶喪失の人間を扱うのっていうのは大変だ。

 きっと雄介は、そんな俺を昔扱ってくれたのだろう。

 だけど俺にとって、身内が記憶喪失になるのは初めてのことで、本来ならどうしたらいいのかが分からない。いや、でも雄介はそんな俺でも扱ってくれたことがあるんだから、俺にだってできるはずだ。

 それに雄介は、そんな俺でも諦めることはなかったはずだ。だったら、俺も今の記憶の無い雄介を諦めてはいけないということだろう。それに、もし雄介に記憶が戻ったときに、俺がそばにいなかったら、悲しむのは雄介だから。

 そう心に刻み込むと、俺は今の記憶の無い雄介と向き合う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

世界で最も難解なアルゴリズム

ストロングベリー
BL
システム開発会社で技術責任者を務める『音川』は常に冷静沈着、モラル意識も高く、フェアな態度を貫いているため社内からの信頼も厚い。鍛え上げた身体とぶっきらぼうな物言いのせいで一見威圧的だが、部下には優しく、技術力向上のために尽力する仕事一筋の男だ。 ある日、社内で起きた事件をきっかけに、開発部に新人が配属される。彼は驚異的なプログラミングの能力を持ち、音川はいち早くそれを見抜くが―― その新人を前にすると、音川は自身のコントロールを失い、論理の鎧が剥がれていくのを止められない。 *過去に『非論理的ラブ』として投稿していたものを大幅に書き換えました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...