上 下
730 / 877

ー閃光ー22

しおりを挟む
 そんな姿に、クスッとする俺。

 こう、なんていうのか。今まではずっと俺の関係者の家だったから、雄介がこんなにゆっくりと寛げる感じではなかったのだろう。だからこそ余計に、雄介がリラックスしている様子が目に映る。そして俺は、そんな雄介がテレビを見ている横に腰を落とす。

 恋人同士だった頃を思い出す。あの頃は、雄介がソファに座っていると、隣に座れず、少し離れた場所に腰を下ろしていた。

 俺は雄介の横に座り、顔を見上げる。

「なぁ、今俺たちって幸せだよな?」
「ん?」

 雄介の方が今の俺の言葉に目を丸くしているように見える。それに、またクスッとする俺。

「え? あ、まぁな……」

 そう言いながらも視線をそらす雄介だが、どこか照れているようで、顔が赤く見える。

 今は昔とは違い、俺の方が雄介に対して積極的になっているように思えるのは気のせいだろうか。

 雄介と結婚したことで、むしろ俺に自信がついたのかもしれない。

 そう考えると、今の雄介の行動がさらに愛おしく感じる。だからこそ、俺の方から雄介の腕に腕を絡める。

 そのせいか、雄介が黙り込んでしまったのは気のせいだろうか。しかし、これだけでも本当に今の俺たちにとって幸せに感じる。

 今までが今までだったからこそ、余計にそう感じるのかもしれない。

 これまでの俺たちは、本当にいろいろな経験をしてきた。大きな地震、ハイジャック、船の転覆事故、いろいろなことがありすぎた。だからこそ、今こうして幸せな時を過ごせているのかもしれない。ただただ平穏無事でいられることが幸せなんだと、今、実感している。

 今の俺たちは、結婚もできて、今では赤ちゃんもできている。これ以上の幸せはないだろう。

 これが幸せの絶頂期というものだろう。

 しかし、人の人生には、幸せな時もあれば、当然不幸せな時もある。その波を繰り返していくのが人生というものだ。

 その時、お風呂ができましたというコールが聞こえてくる。

「ほな、風呂入ろうか?」
「あ、ああ、そうだな……」

 ただそれだけの会話でも、本当に今は幸せに感じる。そう、本当に平穏無事な生活がどれだけ幸せなのかということが分かるのは今だけなのかもしれない。

 これからも続く俺たちの人生。幸せと不幸せは本当に何度も波のように襲ってくる。だからこそ、幸せな時があれば、不幸せな時もあるということだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界で最も難解なアルゴリズム

ストロングベリー
BL
システム開発会社で技術責任者を務める『音川』は常に冷静沈着、モラル意識も高く、フェアな態度を貫いているため社内からの信頼も厚い。鍛え上げた身体とぶっきらぼうな物言いのせいで一見威圧的だが、部下には優しく、技術力向上のために尽力する仕事一筋の男だ。 ある日、社内で起きた事件をきっかけに、開発部に新人が配属される。彼は驚異的なプログラミングの能力を持ち、音川はいち早くそれを見抜くが―― その新人を前にすると、音川は自身のコントロールを失い、論理の鎧が剥がれていくのを止められない。 *過去に『非論理的ラブ』として投稿していたものを大幅に書き換えました。

処理中です...