692 / 929
ー未知ー185
しおりを挟む
「そう……後は、雄ちゃんのそういうところがダメなところなのよ……。そう、はっきりしないところがね」
「確かに、そこは望にも言われたことがありますけど……」
「『けど……』の後は? 何か言いたそうなんだけど? そこで言葉を止めるっていうことは、まだ何か私に言いたいことがあるんじゃないの? 本当、そういうところ、雄ちゃんなのよねぇ。何事にもはっきりしないところがね」
本当に美里は雄介の性格をしっかりと把握しているように思える。やはり、そこは雄介の兄弟だからなのだろう。それに、俺より長く一緒にいたのだから、本当に雄介の性格をしっかりと知っているということでもある。
だけど、雄介は医者になってからも、俺と約束したのだから、少なくとも優柔不断なところは大分治ってきたはずなのだが。
それでも美里の前では、兄弟だからなのか、その部分は未だに隠せないのかもしれない。
「じゃあ、小さい頃と今とでは、そのところが違うっていうことを教えてくれないかしら?」
そう、雄介は美里に問われる。
確かに美里の言う通り、それを証明してもらいたいところだからなのか、俺も雄介のその答えが気になってしまい、横の視線から雄介の顔を見上げるのだ。
雄介はその美里からの質問に、俯き加減で少し考えた後、急に何だか自信に満ち溢れたような表情をし、美里の方へと視線を向けて、
「そこはですね……医者になってからの俺は、全くもって優柔不断なところには無縁ですし、患者さんが亡くなった時だって、悲しいと思っても涙することはないのですから……」
そう堂々と言う雄介。
そう言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。
医者という職業上、俺との話し合いの時にも、優柔不断は禁物だと雄介には伝えている。その一瞬の迷いが患者の死に関わるからだ。そして患者の死を前にした時に、雄介は一度も涙を見せたことはなかったのかもしれない。それに雄介は、そういった意味では一番過酷な小児科医になったのだから。
小児科医というのは、子供が沢山いるところなのだから、少なくともそういった小さな命も誕生するところでもあり、当然小さな命の死だって経験するところでもある。
それに気付いた俺は、美里に向かい、
「美里さん……雄介はもう十分、その優しい性格を克服していると思いますよ。だって、小児科医ってそういうもんじゃないですか?」
それだけで美里に伝わるのか? というのは分からないが、俺は俺で美里にそう伝えるのだ。
「確かに、そこは望にも言われたことがありますけど……」
「『けど……』の後は? 何か言いたそうなんだけど? そこで言葉を止めるっていうことは、まだ何か私に言いたいことがあるんじゃないの? 本当、そういうところ、雄ちゃんなのよねぇ。何事にもはっきりしないところがね」
本当に美里は雄介の性格をしっかりと把握しているように思える。やはり、そこは雄介の兄弟だからなのだろう。それに、俺より長く一緒にいたのだから、本当に雄介の性格をしっかりと知っているということでもある。
だけど、雄介は医者になってからも、俺と約束したのだから、少なくとも優柔不断なところは大分治ってきたはずなのだが。
それでも美里の前では、兄弟だからなのか、その部分は未だに隠せないのかもしれない。
「じゃあ、小さい頃と今とでは、そのところが違うっていうことを教えてくれないかしら?」
そう、雄介は美里に問われる。
確かに美里の言う通り、それを証明してもらいたいところだからなのか、俺も雄介のその答えが気になってしまい、横の視線から雄介の顔を見上げるのだ。
雄介はその美里からの質問に、俯き加減で少し考えた後、急に何だか自信に満ち溢れたような表情をし、美里の方へと視線を向けて、
「そこはですね……医者になってからの俺は、全くもって優柔不断なところには無縁ですし、患者さんが亡くなった時だって、悲しいと思っても涙することはないのですから……」
そう堂々と言う雄介。
そう言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。
医者という職業上、俺との話し合いの時にも、優柔不断は禁物だと雄介には伝えている。その一瞬の迷いが患者の死に関わるからだ。そして患者の死を前にした時に、雄介は一度も涙を見せたことはなかったのかもしれない。それに雄介は、そういった意味では一番過酷な小児科医になったのだから。
小児科医というのは、子供が沢山いるところなのだから、少なくともそういった小さな命も誕生するところでもあり、当然小さな命の死だって経験するところでもある。
それに気付いた俺は、美里に向かい、
「美里さん……雄介はもう十分、その優しい性格を克服していると思いますよ。だって、小児科医ってそういうもんじゃないですか?」
それだけで美里に伝わるのか? というのは分からないが、俺は俺で美里にそう伝えるのだ。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる