上 下
617 / 877

ー未知ー111

しおりを挟む
 それから一週間ほど経った日だったろうか。 急に雄介のスマホが着信音を鳴らしたのだから。

  俺達と連絡を取る人々というのは、本当に指で数える人しかいない。

 久々に和也だろうか。 いや、昼間の四時半はまだ仕事している時間だろう。 では俺の親父からなのであろうか。 いや、親父だったら、俺の方に電話がかかってくるだろうから、そこも違うだろう。 ということは確率的に高いのは、雄介のお姉さんで美里さんの可能性が高いだろう。

 雄介は料理をしていた手を離すと、画面を覗き、着信を確認すると、気持ち的に緊張したような面持ちで電話に出るのだ。 とりあえず、料理していた手を止めて、ダイニングテーブルに腰を下ろす。

 俺の方は元から、ダイニングテーブルに腰をおろしていたのだから、急に俺の目の前に現れた雄介に目をパチクリとさせていただけだ。 そして雄介はスピーカーにして、スマホから聞こえてきた声に、やっと電話をかけてきた主の正体が分かるのだ。

「ん? なんや? 姉貴……」

 といつものように返事をしてしまっている雄介。

『ちょっと! 雄ちゃん! 何で私が雄ちゃんに電話してきたのか? っていうの分かってないの?! そんな感じなら、電話切るわよっ!』

「あー!」

 そう、雄介の方はやっと気付いたのであろう。 急に背筋を伸ばしたかと思うと、真剣な瞳になって、

「ど、どうしたんでしょうか? お姉さん……」

 若干その口調に心の中で笑いながらも、どうやら雄介的に咄嗟に出た敬語だったらしい。

 きっとまだ心の準備が整ってなかったという事だろう。

「雄ちゃん達との話し合いの日、明日でいいかしら? で、場所は何処にすればいい?」

 全くもって、場所に関しては雄介と話し合ってこなかったかもしれない。

 ファミレスで、こんな真剣な話は出来ないだろう。 喫茶店でもファミレスと同じような環境なのだから難しい。 それならやはりここは家でか? 雄介のお姉さんの家ということになるのかもしれない。

 だけど雄介のお姉さんの家にお邪魔するのではなく、ここは俺達の家で雄介のお姉さんのことをおもてなしするのが普通なのかもしれない。 と思った俺は、スマホメモ帳にそれを書いて雄介に読ませる。

 その文章に頷く雄介。

「とりあえず、場所の方は、うちで宜しいでしょうか?」

 と未だに変な敬語になってしまっている雄介。

 本当に咄嗟というのか、兄弟間での敬語というのは難しいのかもしれない。

 ってか、敬語的には合っているのかもしれないのだけど、俺の方が雄介の敬語に慣れてないだけなのかもしれないということだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...