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ー至福ー179

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 俺達のこんな時が過去の俺にはあるとは思わないだろう。 そして自然と高鳴って来る鼓動。 これが本当に相手の事を好きだっていう気持ちだという事が分かったような気がする。

 雄介だって俺がこういう風に自分から雄介にくっつくって事だって考えた事なんかなかったのかもしれない。 俺がこんな事、雄介に出来るようになったのはごく最近の出来事だ。 寧ろ、結婚の話を真剣に雄介と話するようになってからなのかもしれない。

 だって雄介は俺と結婚する事について寧ろ本気だった。 本当に雄介の考え方っていうのは純粋で本気っていうのが分かったからなのかもしれない。 だから俺の方だって、その想いに本気で返したいと思ったからであろう。

 本当に俺っていうのは、最初の頃、全くもって恋愛とか愛情とかっていうのを知らなかったのだけど、雄介の場合、本当に毎日のように俺に愛情をくれて来た。

 人によって愛情表現っていうのは違うけど、雄介の場合には俺の事を常に想ってくれて、愛してくれて、本気で俺の事が好きだっていうのが分かったからこそ、今は俺の方だって雄介の事が本気で好きになれたのであろう。

 今まで雄介が俺にして来てくれた愛情表現で、俺の方もどうにかして答えているという事だ。

 寧ろ、そんな事を教えてくれたのは雄介なのだから。

 だけどそういう時というのは本当に早く過ぎて行くもんだ。

 そう今の俺達の生活っていうのは、二人だけではない。 和也と裕実いる団体での生活なのだから、ある程度時間が来ると、

「ほな、そろそろ下に行こうか?」

 となってしまう。

 そこは今の俺からしてみたら寂しい点でもある。

 これがもし雄介と二人きりだったなら、もうちょっとこういう時間をゆっくり出来たのだが、今は無理という事だろう。 いやこれがもしまだ春坂に住んでいる俺達だったら、ゆっくり出来た時間だったのかもしれない。 春坂にいる時に、俺が雄介とのこの時間を大事にしていたなら良かったのかもしれない。 だがもう少し経てば、また雄介との二人だけの時間が訪れるのだから、それまではこういう時間というのはゆっくりとは取れないのかもしれないという事だ。

「そういやさ、雄介? 頭の方は大丈夫なのか?」
「え? あ、そういや……大丈夫なのかもしれへんなぁ。 だって、気になる程ではない訳なんやしな」

 そう言われてみればそうだ。 もし未だに痛かったのなら、言葉に出さなくとも顔に出る物なのだから。

 いつか雄介がまだ消防士だった頃、足を引きづりながら俺の所に来た事があったのだけど、その時だって雄介は痛みで顔を歪ませていたのだから。

 そういう所は全くもって医者の俺達には誤魔化す事が出来ない点であろう。
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