上 下
329 / 877

ー至福ー48

しおりを挟む
 逆にその事について悩んでいたんだったら、今の質問に関しては安心する。 そう雄介からしてみたらただ単に一つに絞りきれなかったっていうだけなのだから。

「じゃあ、次の質問なぁ。 じゃあさぁ、好きな色っていうのは?」
「好きな色かぁ?」

 また雄介は天井の方に視線を向けて考えてしまっていた。 全くもってさっきと同じだ。

「そやな……そこは、ブルーかな?」

 ……そこは即答なんだなぁ。

「青か……俺も青かな?」
「僕は、白とか黒ですかね?」
「じゃ、望は?」

 そう言われるとちょっと悩む。 子供の頃っていうのはそういう質問っていうのは簡単に答えられたもんだけど、大人になると大人になった今っていうのは、そんな簡単な質問をされた事があまりないからなのかもしれない。

「赤かな?」

 ちょっと悩んだ後に子供の頃に好きだった色を答えておいた。

「……って、やっべぇー! とりあえず、朝はそんなにゆっくりしてる暇ねぇみたいだな。 早く食べねぇと時間になっちまうぜ」

 そう言って時計を見てみると七時五十五分になっていた。 時間っていうのは止まるっていう事はない。 知らないうちにとか楽しい時間っていうのは時間が過ぎるのが早い位だ。 八時十分には診察室等の用意や掃除をしないと間に合わないのだから、いつも以上に早くご飯を食べないとならないだろう。

 急に黙ったままの食事になる。 だって朝からそんなくだらない質問で時間を無駄にしてしまったのだから。 和也なんか駆け込むように食べていた。 そして一番最初に食べ終わったのは和也で、

「じゃ、俺は診察室の掃除してくるな」

 と言って行ってしまう。 その後を追うように裕実もだ。

「僕も、ご飯終わったので診察室の方に行ってますね」

 と言って、リビングには俺と雄介が残されてしまっていた。

 しかし昨日あんな事があってからの二人きりにされるのは本当に気不味い。

 確かに今はさっきまでお喋りし過ぎたせいで、時間がないから黙って食べてはいるのだけど、と思っていたら急に口を開く雄介。

「そやなぁ、確かに俺ってば、自分の事、望にあまり話してなかったなぁ。 さっき和也に色々と質問されて思い出せたわぁ。 もしかして今回、望が俺に対して不安に思っているっていうのはそういう事なんか? なんていうんか……隠し事が多過ぎって事なんかな?」

 その雄介の言葉に目を丸くする俺。 そうだ、確かに雄介の言う通りだ。 そう今の俺っていうのは本当に何も言わない雄介の事を疑っているっていう訳ではないのだけど、こう何も自分の事を語ってくれない雄介に不安を抱いているって言った方が正解なのかもしれない。

 だから俺の方はその雄介の言葉に、頭を軽く頷かせる。

「そこは、前にも言った事あるやろ? 自分の自慢話みたいになってまうから俺的には自分の事を語るのはあんま好きじゃないって……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界で最も難解なアルゴリズム

ストロングベリー
BL
システム開発会社で技術責任者を務める『音川』は常に冷静沈着、モラル意識も高く、フェアな態度を貫いているため社内からの信頼も厚い。鍛え上げた身体とぶっきらぼうな物言いのせいで一見威圧的だが、部下には優しく、技術力向上のために尽力する仕事一筋の男だ。 ある日、社内で起きた事件をきっかけに、開発部に新人が配属される。彼は驚異的なプログラミングの能力を持ち、音川はいち早くそれを見抜くが―― その新人を前にすると、音川は自身のコントロールを失い、論理の鎧が剥がれていくのを止められない。 *過去に『非論理的ラブ』として投稿していたものを大幅に書き換えました。

処理中です...