上 下
104 / 877

ー鼓動ー104

しおりを挟む
「それから彼女なんて出来なくて、仕事も忙しくなってきてたし、まぁ、彼女とかっていう頭はもう俺の頭からはなかったかな? だってよ、忙し過ぎて、マジ暇なかったからさ、ま、そんな時に雄介が現れたって訳だ」
「……へ?」

 その会話の流れで俺の方は普通に言っていたつもりだったのだけど、雄介はその俺の言葉に目を丸くしながら見つめていたようにも思える。

「え? あ、いや、ただ単に、本当に雄介が現れただけで、しかも、お前に告白された訳だろ? だから、付き合ってみようかな? と思っただけであって、その、本気で好きではなかったっていうのかな?」

 今の俺は何か焦り過ぎてて無茶苦茶な事を言ってるような気がする。 そう自分さえも雄介に何を言っているのか分かっている状態ではなかったのだから。

 流石に雄介の方も理解出来てないようで、その俺の言葉に黙ったままだった。

「あ、いや……前にも話した事があるんだけど、だって、そうだったんだって……お前と付き合い出した頃っていうのはさ」

 何だかただの言い訳っぽくなっているのかもしれないのだけど……。

「あー……んー」

 そう俺が考えていると、

「ま、最初の頃はそうやったのかもしれへんけど、今はどうなん?」
「え?」

 久しぶりの雄介からの直球な質問。 でも、今の俺っていうのは、

「今は……お前のことを好きに決まってんだろ」

 そう呟くように言うのだ。

 素直になれた俺だって流石にそんな直球な質問っていうのは、恥ずかしくて普通の声では答える事が出来ない。

「ま、それならええか……っていうか、それはそれでええよ。 だってなぁ、その頃っていうのはまだ迷っておった頃だったやろ? それでも俺と付き合っていってて、俺の事好きになってくれてったっていうんやったら良かったと思ってるしなぁ」
「え? あ、そっか……ま、そうだよな。その時の俺は雄介と付き合ってみてダメだったら諦めようって思ってたしな。 これだけ長く雄介といられているっていう事は俺は今でも雄介の事が好きだっていう事だもんな」

 さっきまで自信がなかった俺だったけど、雄介のその言葉で自信がついたような気がする。

「せやね、望とは今まで沢山喧嘩してきたと思うけど、なんやろ? それだけ喧嘩してきてもずっと一緒に居られているってある意味凄い事なんと違うの?」
「あ、ああ……そうなのかもな。 そう言われてみればそうだよな。 そう考えてみると不思議なんだよな? ホント、俺等って結構喧嘩して来た感じがあるんだけどさ、なんだかんだで元通りになってるしさ。 そりゃ、最初の頃っていうのは和也が仲裁に入ってくれてたけどさ」
「そういや、確かに毎回和也が仲裁に入ってくれてたんやっけな」

 そう雄介の方も思い出してくれたのか、ポンッと手を叩いていた。

「そうなんだよ。 あれでも、和也は俺と雄介が付き合う前っていうのは邪魔ばっかしてたんだけどな、ある事をきっかけに邪魔しなくなってんだよな。 寧ろ、俺達の仲を持ってくれてたのは和也なんだよ」
「確かにそうなのかもしれへんな。 あれ? この話、望にした事あったんだっけな?」
「へ? どんな話だ?」
「望と一番最初に喧嘩した時があったやろ? その時は全然会えなくて、望が温もりを忘れたくない。 って言ってた頃なんやけどな?」
「ああ、そんな事もあったな」
「そん時だって、俺等の間に入ってくれたのは和也だったんやで」
「あ、うん、確かにそうだったな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...