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【番外編】スウィートチョコレート4

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 今日の望は変だ。 とは思いながらも料理を続ける雄介。

 風呂に行くと言った望だったのだが、廊下をバタバタという感じに望が血相を変えてリビングへと戻って来る。

「どないしたん? ゴキブリでも見たんか?」

 雄介はそんな望に心配そうに近付くと、望はパジャマと一緒に持って来たチョコレートを雄介へと渡すのだった。

「……へ? え? ちょ、いきなり、何!?」

 と雄介がそう言ってる間に望はお風呂場へと行ってしまう。

 雄介はそんな望と渡された物に首を傾げならも包みを開けると、そこには手作りのチョコレートが入っていた。

「チョコレート……? バレンタイン? バレンタインっていうのは過ぎてしまったようなんやけど……?」

 そして、そのチョコレートの下にはちょっとした手紙が入っていたらしく、雄介はその手紙を読み始める。

『雄介へ
とりあえず、今日は裕実の提案で今更だけど、バレンタインのチョコレートを作ってみた。 初めて作ってみたから味には保証はねぇけどさ。 ま、そういう事だからな』

 たった少しの文章に雄介は望からの想いが伝わったのかもしれない。 その手紙に微笑むと再び料理を始める雄介。

 しばらくして望はお風呂から上がって来ると、いつものように髪の毛を拭いて来ない望の頭を雄介は拭き始める。

「あー……とりあえず、ありがとうなぁ。 プレゼントめっちゃ嬉しかったわぁ」

 その雄介の言葉を雄介に頭を拭かれながら頷く望。

 雄介は望の性格を知っている。 だから、あまりチョコレートの話題には触れずに夕飯を食べるといつもの夜を過ごす二人。

 普段は素直ではない望。

 だけど、誰かに背中を押されるとあーだこーだで実行する性格ではあるようだ。

 望だって、雄介の事が本当に好きだ。

 だけど素直になれない自分がいる。

 素直になんでも言えたら、どんなにいい事なんだろうか?

 それが出来るのが裕実だ。

 裕実の性格はどこまででも真っ直ぐで素直で、恋人には尽くすタイプなのであろう。 そんな裕実に押されて今回は初めて望は雄介にチョコレートを上げる事が出来た。

 ただ望は人に甘えるのが下手なだけ、だけど雄介の方も望の事をもう十分過ぎる程分かっているだから、今はそれはそれでいいのかもしれない。

 もっともっと贅沢を言うのなら、ずっとこのままで幸せにいられますように……。

END
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