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ー信頼ー112

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「もし、そうなったら力づくでも兄さんの事を連れて行くしかないって事だよ」
「そういう事か……そうだような、それでもしない限り望は動こうとしないだろうしなぁ、それで、望が危険な目に遭っちまったら、帰って来た雄介に面目が立たねぇしさ」

 朔望は和也に向かって笑顔を向けると、望の側へと向かうのだ。

「ね? とりあえず兄さん……雨も風も強くなって来てるし、そろそろ小学校の方に行かない?」
「うん……ああ、そうだな」

 そう望は答えるものの、どこかこう曖昧な答え方をし、その場を動こうとはしないように思える。 そう言葉では返事しているものの、どうやら体の方は動いてくれなさそうだ。

 朔望は仕方無さそうなため息を吐くと、和也へとアイコンタクトを送り和也と朔望は望の両腕を抱え、そして強制的に車へと乗せるのだ。

「とりあえず、僕が運転するから、和也は後部座席で兄さんの事を押さえといて!」
「おう! 分かった!」

 そう朔望は和也に望の事を託すと運転席の方に向かうのだ。

「……って、和也! 離せって!!」
「って、そんな事言われたって離す訳がねぇだろ! 今、この腕を離しちまったら、望の事だ、降りて雄介の事をあの場所で待つんだからさ!」

 その和也の言葉に望は体を固まらせてしまったようだ。 そう和也の言葉のまんまだったからこし体を固まらせてしまったという事なのであろう。

「体を固まらせるっていう事は、そういう事だろ? 降りるつもりが無いんだったら、体を固まらせる事なんてしない訳だしな」
「それと、兄さん……。 さっき、自分で言ってたでしょ。 嘘はダメだな。 さっき兄さんは僕の質問に『行く』って答えてるんだから約束は守らないとね」

 その二人の言葉に、望は仕方なさそうなため息を漏らす。

「それに、こんな日に外に出てたら、危険なんだからね! 風で飛んで来た物が当たって怪我とかしたら、どうすんの? それで軽傷で済む位だったらいいんだけど、もし、重傷とか重体な状態になったらどうすんのさぁ。 雄介さんが帰って来た時に、もし、兄さんがいなかったら悲しむのは雄介さんなんだからね!」
「……って、それ、さっき、俺が望に言った言葉なんだけどな。 そっか……もう、その時っていうのは、望の頭の中には雄介の事しかなかったから聞いてなかったかもしれねぇしな」
「分かってるけどさ……俺だって……」
「……俺だって……何!?」

 まだ望の性格を知らない朔望は先を促すように聞くのだ。

 そんな朔望に和也は後部座席から朔望の方に向かい首を振るのだった。 きっと今の和也の行動はバックミラー越しに朔望にもちゃんと伝わっているだろう。
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