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ー信頼ー102

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 和也は携帯を取り出すと、親へと電話を掛けてみるのだが受話器から聞こえて来るのは母親の声ではなく、留守番サービスに接続してくれるアナウンスの声だった。

「やっぱ、掛からないって事は船は出てるって事になるのかなぁ?」
「そういう事なのかもしれへんな」

 とその時、島中にサイレンの音が鳴り響くのだ。 望達がこの島に来てから初めてのサイレンの音なのかもしれない。 だからなのか余計にそのサイレンの音に反応してしまいビクとなってしまったのであろう。 そして流れて来る放送に耳を傾ける。

『只今、この島に台風が近付いて来ております。 本日はその台風の接近により外は大変危険になりますので、外出はお控え下さいますようお願い申し上げます』

「成る程なぁ。 そういう風に放送が流れて来るって事なんやねぇ」
「みたいだな。 今までそんな事なかったからさ、ビックリしたけどな。 放送を流す事によって注意を促してくれるって事だな」
「つーことは、今日の午後からの診察っていうのは、休診状態になるのかもしれへんよなぁ?」
「そうだな。 今の放送で外出は控えるようにって言ってたしな。 つーか、もしかしたら、避難指示は出るのかもしれねぇぜ。 小さい頃さぁ、俺が住んでる地域で台風があったんだけど、それで、市民が学校の体育館とか公民館とかに集まった事があったからさ」
「それにこの診療所は海に近いやろ? まぁ、確かに避難指示っていうのはあるのかもしれへんなぁ」

 そんな中、裕実は台風情報を見ていたのか、

「確かに、台風はこの島の辺りに着実に近付いて来てるみたいですね。 このままだと確実に避難指示は出ると思いますよ」
「やっぱ、そういう事になんねんなぁ。 ほなら、念の為、避難指示っていうのが出るまでに色々と用意しといた方がいいのかもしれへんな。 避難用の袋もやけど、食料とかももう少し入れておいた方がいいのかもしれへんなぁ。 ほんでもって、俺達は医者なんやから、医療器具も持ってた方がええみたいやしな」
「とりあえずさ、避難所っていうのは、やっぱ高台にある小学校の体育館みたいだな」
「うん、分かった。 一応、診療所の方を開けながら午後はそうした方がええみたいやな」
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