【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー平和ー12

「んじゃ、二人の間に会話も無いってことは、ラブラブなこともイチャイチャすることも雄介が望のことを抱くということも出来て無いってことなのか？」
「そりゃな……。　会話も出来てへんのに、今はそないなことが出来る訳がないやろ?」
「それで、望は仕事場でイライラしてたって訳だ」

　その和也の言葉に望は吹きそうになっていた。

「ったく……そ、そんなことはねぇよ」

　そう望は否定の言葉を述べるのだが、動揺してしまっているのだから完全に嘘を吐いているのがハッキリと分かる。

　和也は溜め息を吐くと、

「ま、そういうことだな。　望の性格を知ってるから、言わねぇけどさ……。　とりあえず……」

　そう和也はそこまで言うと、言葉を一旦切り今度は雄介の方へと顔を向け、

「雄介……勉強が忙しいのは分かる。　だけど、お前等は恋人同士だろ？　たまには二人の時間を作ってさぁ、イチャイチャするのもいいんじゃね？　今のままじゃ、何もお前等の状況が変わることはねぇよ」

　最初は半分ふざけたように言っていた和也だが、最後の方は諭すように言うのだ。

「せやけど……」

　雄介の言葉を遮るように、和也は先に言葉にし、

「『忙しい』か？　じゃあ、雄介はこれから、望のことをどうしたいと思ってるんだ？　忙しいって言葉だけで、望のことを学校を卒業するまで放っておくのか？　それなら、別れちまえばいいんじゃね？　それならさ、お互い気使わなくて済む訳だしな」

　そんな和也の言葉に、流石の裕実も黙っていられなくなったのか、

「和也！　いくらなんでもそれは酷過ぎますよ！　僕達の目的っていうのは、今日、望さんと雄介さんの為にここに来たんですよ！　それなのに、そんなこと言ってはあまりにもお二人が可哀想です！」
「俺達が確かにここに来た理由はそうなんだけど……だけど、雄介の言葉を聞いている限りじゃ、二人の関係はこのまま平行線になるだろうな。　だから、その平行線から離れる為には別れるのか、それとも、前と変わらず恋人同士に戻るのか？　という選択肢を与えてやってんじゃねぇかな？　って思っただけさ。　今の状況を打破するにはもうこの二つしかねぇんだよ」

　裕実は和也の言葉に何も言えなくなってしまうのだ。　そう和也が言っている事が、分かったからであろう。　今の二人には確かにその選択肢しかないのだから。