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ー決心ー8
しおりを挟む「ああ、まぁな」
「それって?」
と雄介は途中まで口にしたのだが、
「あ、いや……な、なんでもあらへん! 今のは聞かなかったことにしといてや……せやせや! 気にすんなや」
雄介は苦笑いをしながらも何とか誤魔化そうとしていたのだが、そこまで言われたら気にならない人間はいないであろう。
「別にいいよ……言いたくねぇのなら、言わなくてもさ」
望らしいと言えば望らしい言葉なのだが、その望の言い方に雄介は息を吐くと、
「さっきの言葉な、言いたかったことは……なんやろ? 俺達はやっぱ運命やったんと違ゃうかなぁ? って思っただけやって……。 望にそないなこと言ったら、なんや、怒られそうやったし、自分で口にするのもアホらしいって思ってしまったから、言うのを止めただけなんやって」
「いいんじゃねぇのー? お前の言う通り、俺達が出会えたことが運命だったんだよな。 きっと……」
その望の意外な言葉に雄介の方は一瞬、目を丸くし望の方へ顔を向けようとしたのだが、今自分が運転していることを思い出すと直ぐに正面へと向き直す。
そして雄介は何もなかったかのように望との会話を続けるのだ。
「『運命』やな。 運命って言葉は色々と使われているような気がするわぁ。 人が助かるってことも運命やろ? そんな人達を今まで沢山見て来たしな。 まぁ、これからも前と変わらない感じになると思うんやけど」
「だな。 一歩違うだけで、助かる人もいれば助からない人もいる訳で、それも運命なんだろうなーって思うし。 だからって、俺は運命だったのだから、助からないとは思いたくはねぇんだよ。 そりゃ、全力を尽くしてダメだとしても運命だったんだから仕方がなかったとは思わない。 自分に力がなかったと思って、次へと向かうことにしてる」
「流石やなぁ、まぁ、確かに人の命を運命のせいにはせん方がええのかもな。 ほんなら、俺等が助けたいと思っている人の運命をええ方にもっていったらええってことやな」
「そういうことだよな」
車はやがて二人が住む家の駐車場へと入っていくのだ。
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