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ー天使ー150

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「今日はありがとうございました。 まさか、先生に琉斗の運動会に連れて行ってもらえるとは思ってみませんでしたからね」
「いえいえ……俺にはこんなことしか出来ませんから」
「ねぇねぇ、今日もお母さんと一緒に寝てもいい?」

 琉斗にしては珍しくわがままを言うのだが、

「ええよ。 お母さんのとこに泊まり。 もう、姉貴は平気なんやろ?」

 そう雄介は琉斗の言葉を代弁するかのように望に問うのだ。

「ああ、後は退院を待つだけだからな」
「とりあえず、琉斗……体操着のままはアカンから、一旦、家に行って着替えて来ようなぁ。 そしたら、明日の夕方位まではお母さんとこにおってもええから」
「うん! 確かに体操着のままじゃあ汚いもんね」
「そういうことやね」

 雄介は望の方に顔を向けると、

「ええねんやろ?」
「別に構わねぇよ」
「ほな、琉斗着替えさせたら、戻って来るなぁ」
「はいはい、行ってらっしゃい」

 三人は一旦、病院から出ると望の家へと向かう。



 それから美里が無事に退院する日。

 雄介は琉斗を連れて病院へと来ると、琉斗は美里の病室に入るなり、直ぐに美里へと飛びつくのだ。

「お母さん! やっと、お母さんと一緒に暮らせるんだね!」
「そうよー。 これからはずっと一緒に暮らせるのよ」
「うん! 雄介おじちゃん達もいいんだけど……やっぱり、お母さんがいい!」
「そっか。 そうよね……やっぱり、お母さんがいいわよねぇ」

 美里は琉斗のことを抱き上げる。

「さて、お家に帰りましょうか」
「うん!」

 美里は琉斗を抱き上げたまま病室を後にする。

 雄介はそのまま病院に残り望の仕事が終わるまで望達の部屋で待っていた。

 五時過ぎになると、望達は部屋へと戻って行くのだ。

 和也は部屋の中へと入って来ると、

「やっと、お前達も二人きりになれたんだな」
「せやな」
「これからは、ゆっくりって訳だ」
「そうやんな」
「なんだよ、その反応は」
「なんか、いまいち、まだ、琉斗がいないっていう実感が湧かないだけなんやって」
「ま、今日からだからなぁ、そりゃ、実感湧かないだろなぁ」
「そうやんな」

 二人が会話をしている中、望は一人黙々と仕事を終えたらしく、

「仕事、終わった!」
「ほなら、帰ろうか?」
「ちょ、ちょっと待てよー。 まだ、掃除終わってないんだけどー」
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