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ー天使ー134

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 望は琉斗の頭を撫でると、雄介と和也にアイコンタクトを送り美里と琉斗を病室へと残し自分達の部屋へと戻って行く。

 望は部屋に入ると、望にしては珍しく真っ先にソファへと体を預け安堵の溜め息を漏らすのだ。

「ホンマ、お疲れさんやなぁ」
「いいや……別に疲れてはないさぁ。 俺にとっていつもと変わらないことをやっただけだからな」
「望にとっては当たり前のことかもしれんけど。 俺からしてみたら、やっぱ、凄いって思うとこなんやで」
「そっか……そうだよな。 でも、雄介、お前だって、いずれは俺と同じ立場になるんだからな」
「せやな」

 雄介は望の隣りへと腰を下ろす。

 すると和也はニヤニヤしながら望と雄介の後ろへと立ち、

「なぁ、望……。 さっきはさぁ、望にしては珍しいことをしてきたよなぁ。 琉斗を美里さんのとこに泊まらせるなんてさぁ」
「別に大した意味はねぇよ。 今まで琉斗は我慢してきたみたいだったからさぁ、だから、泊まりを許可してきただけなんだけどなぁ」

 どうやら和也が考えていたこととは違ってるようだ。 望は本気でそう思って琉斗を美里のとこに置いてきたらしい。

「あれ? 俺はてっきり、今晩は雄介とお前が二人きりになる為に琉斗を美里さんとこに置いてきたんだと思ってたんだけど……」

 それを聞いた途端、望は顔を真っ赤にしてしまう。 どうやら雄介と久しぶりに二人きりになれる事を意識してしまったようだ。

「そうかぁ、久しぶりだもんなぁ。 雄介と望が二人きりになれる夜はさぁ。 今まで琉斗が居て、あんまり、二人きりになれたことがなかったもんなぁ。 だから、望は顔を赤くした訳かぁ」
「あー、もー! 和也はマジにうるさいんだよ! もう、いいだろー、俺をいじるのはさぁ」
「だってさぁ、今日は裕実が夜勤だから、俺一人なんだもんさぁ、だから、望をいじってから帰るー」
「それって、ただの嫉妬やんかぁ」
「ま、そうとも言う」
「開き直るなよ」

 その和也の言葉に呆れたような突っ込みを入れる望。

 とりあえず美里のことでは一安心が出来たというところであろうか。 前まで張り詰めていた空気はなくなり今は穏やかな時が流れているようだ。
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