【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー天使ー130

「あ、はい！　ありがとうございます」

　雄介はそう裕二に向かい頭を下げるのだが、気になった事があったようだ。

　雄介は顔を上げると、少し申し訳なさそうに、

「あの……一つお聞きしたいことがあるのですが……」
「ん？　何かね？」
「さっき、どうして、私が院長に聞きたいことが分かったのでしょうか?   和也にもたまに見抜かれることがあるんですよね」
「あ、ああ？　そのことか。　それは、慣れれば簡単なことだよ。　人の気持ちになれば分かるということなんだけど」
「あ！　そう言われてみれば、前に和也がそう言っていたことがありました！」
「そうなんだよ。　君が何か言いたそうだけど、言いにくそうにしていたからね。　だから私は君の気持ちになって考えた時に答えが出たのだけどね」
「そうだったのですか……」
「そう答えるということは君は知らなかったってことかな?」
「はい……お恥ずかしい話、そうなんですよ」
「なるほどねぇ。　逆にそういうとこが望には向いていたのかもしれないなぁ。　長年一緒にいた和也君でさえ、望の性格を治すことが出来なかったのだから、そうなのかもしれないね。　何も考えてないような君の純粋な心の方がね。　私や和也君の場合、人の気持ちになり過ぎて、相手が考えていることを口ばしってしまう。　だから、望のことを怒らせてしまうのかもしれないなぁ。　望はそういうとこに敏感だからね」
「そうなんですかね？　確かに和也は望のことを怒らせていますが、それは、望が心に溜めていることを吐き出させる為って言ってましたから」
「和也君はそういう意味で、望の心を動かす事が出来たんだね。　私は特には考えてなかったから。　しかし、望はいい友達に恵まれたと私は思うよ。　君と望とは恋人同士だけど……和也君に今は裕実君もだからね」
「望は裕実にはたまに本音で話をするらしいですからね」
「そうだったね。　君達が居てくれているから、望の性格が変われたのかもしれないなぁ。　本当にありがとう……雄介君……」

　初めて裕二に名前を言われ少し慌てる雄介。

　そりゃ、慌てるであろう。　今、雄介が会話をしているのは恋人の父親なのだから。