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ー過去ー133

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「今、なんか言うたか?」
「言った……」

 そこで望の方は雄介に向かって何か文句を言おうとしたのだが、望はある事に気付いたようだ。 そうシャワーの水音だ。

「……そういう事な。 これで、俺が言った大事な言葉が掻き消されちまったのかよ」

 そう望は呟くと望は今度、雄介の方に真剣な眼差しで見上げ、

「俺も……本当に雄介の事が好きだぜ」

 その望の言葉に雄介の方は微笑み再び望の体を優しく包み込むのだ。

「ホンマ……俺も今は幸せやなぁ。 望……俺の我がままで恋人になってくれてありがとうな」

 雄介の『ありがとう』っていう言葉に望の方は頭を頷かせる。

 誰も『ありがとう』という感謝の言葉に嫌な顔をする人はいないだろう。 『ありがとう』という言葉以上の感謝の言葉っていうのはないのだから。

「あ!」

 急に雄介は何かを思い出したのか大きな声を上げ、お風呂場の中ではエコーの効いた音が響き渡る。

「何だよ……急に……」
「あ、いや……何でもあらへんわぁ。 ただな、また、お風呂場でこないな事しておったら、また、逆上せてまうかなぁ? って思うてな」
「つーか、お前ってムード壊すの好きだよな」

 望の方はそう呆れたかのように言うと体に付いている泡を流し怒ったようにお風呂場を後にする。

「あ、あれ? ……ちょ、望!?」

 そう雄介が声を掛けても望からの返事は当然ある筈もない。

 ちょっと前まではこんな話をした時には上手く違う話にもっていかないと逆に望の方が怒っていた筈なのに今の望はどうやら違うようだ。

 今の望はきっと普通のカップルと同じという事なのであろう。 そうだ今の雄介の言葉に今の望というのは『空気が読めない奴』とでも思っていたのかもしれない。

「ホンマ、望の性格っていうのは難しいわぁ。 今回はどないしたら機嫌直ってくれるんやろか?」

 そう雄介は一人残されたお風呂場で呟くのだ。

 雄介の方も体についた泡を洗い流すと、お風呂場を出てもう望が行ってしまったであろう自分達の部屋へと向かう。
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