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ー過去ー92

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 和也は直ぐに返事をすると、望に言われた通りに望が作った料理をテーブルの上へと運んで行く。

「しかし、望……どうしたんだ?」
「何が?」

 テーブルの上に料理を運び終えると、三人はテーブルへと腰を下ろす。

 和也は疑問に思っていた事を望に問うたのだが、主語が抜けていた為か望にはどうやら意味が通じてなかったようだ。 だからなのか望の方は低い声で聞き返すのだ。

「あ、だからだな……飯の事だよ。 ここんとこ、望が朝飯作ってくれてんだろ? それが、珍しいなーって思ってよ」

 和也は笑顔で望に問うたつもりだったのだが、望は和也のある言葉で目を座らせ、

「『珍しい』っていうのは余計だけどな。 別に意味なんかねぇよ……俺が朝飯を作る理由はな」
「そっか……」

 和也はもっと深く聞こうとしたのだが、今日の和也の立場ではそんな事を聞ける訳もなく望が作ってくれた朝ご飯を口にする。

「今日は朝から和風だな。 味噌汁にご飯にだし巻き卵だなんてさぁ」
「文句でもあるのか?」
「あ、いや……別に文句なんかねぇよ。 マジに美味いだけだからさ!」
「まぁ、手抜きご飯って言ったら手抜きご飯なんだから手抜きって言ってもいいんだぜ」
「あー、いやいやいや……全然! 手抜きじゃあねぇだろー。 味噌汁やだし巻き卵は作ってるんだろうからさ」
「残念でしたー。 だし巻き卵の方は確かに作ってはいるけどさ……味噌汁の方は完全にレトルトだしよ」

 その望の言葉に和也は味噌汁を吹きそうになっていた。

「レトルトでも望が作ってくれた事には変わりねぇんだろ? それに朝っていう時間っていうのは忙しい時間だからさ、例えそれが手抜きだとしても食べていけるんだったらそれの方がいいんじゃねぇのか? それに十分に朝ご飯になってるじゃねぇか」
「まぁな。 いつもは雄介が作ってくれるんだけどさ……雄介はいない時っていうのはいつもこんな感じだしよ。 でもさ、ホント、雄介と暮らしているのに雄介と暮らしてるって感じがしないんだよな」

 望はそう言うとため息を吐く。

「確かにそうなのかもしれねぇな。 俺の方は裕実とは毎日のように病院で会えるけど、望と雄介とじゃあそうそう会う事なんて出来ないからな。 本当に雄介の仕事っていうのは二十四時間働いてる仕事だからな」
「例え、俺が医者を辞めたとしても、今と生活っていうのはあまり変わらないって事になるしよー」
「へ? 望! 仕事辞めるのか!?」

 どうやら和也は今の望の言葉だけを拾ってしまったらしい。 だからなのかそこだけは大声で言ってしまっていた。

「あー! 朝から、でかい声出すなよなぁ。 まったく、どうして和也はこうもうるさいのかなぁ? 今の俺の言葉ちゃんと聞いてなかったんだろ? 例えばの話だっつーの……」
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