【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー過去ー13

「ま、いいけどよ……。　話をするには望の家が一番広いし、ゆっくり出来るしな……話だっていつ終わるか？　っていうのもわからないし、それで、一旦帰ってる暇なんかも無さそうだしな」

　和也はそう言うと裕実と一緒に望の車の後部座席へと座るのだ。

「んじゃあ、とりあえず夕飯は和也な！」
「おいおい……まぁ、それはいいけどよ……冷蔵庫の中に何かあるのか？」
「多分な……。　食べ物に関しては雄介に任せているからなー。　とりあえず、俺にはそこの所は分からないって所かな？」
「じゃあ、一応、スーパーに寄ってくれねぇ？」
「分かった……」

　望はそう答えると家の方ではなくスーパーの方へと向かうのだ。

　スーパーに向かう途中、何故か車の中は静まり返ってしまう。

　望や裕実なんかはあまり自分から話をする方ではない。　だから和也が何も話さなければ車の中というのは静かな空間となってしまうのだろう。

　やがてスーパーへと着くと三人は車から降りて中へと入って行く。

　いやしかし男三人が一緒にスーパーの中にいるのは側から見たら不思議な光景なのかもしれない。　望達が気付いた頃には視線を浴びていた。

「……って、みなさん、僕達の事見てませんか？」

　そんな周りの気配に気付き一番初めに口を開いたのは裕実だ。

「やっぱ、そこは俺達がイケメンだからなんじゃねぇのか？」

　和也のその言葉に望はため息を吐く。

　だがよく周りの話を聞いてみると半分は合っているようで半分は合ってないようだ。　

「あの人達って、春坂病院の先生達じゃない？」
「私、あの病院に行った事がないから知らないんだけど……。　って、あんな素敵な先生方がいるの？」
「うん！　寧ろ、男の先生と看護師さんばかりなのよ」
「えー！　本当に！？　なら、一度位は入院してみたいかもー！」

　そんな声を聞いていると望は何だか複雑な気分になってきているようだ。

　顔を俯けたままスーパー内を歩き始める。

　確かに今の話を聞いていると評判の方はいいのだが、それで入院患者さんが増えてしまうのは困る。

「とりあえずさ、はやく買物済ませて帰ろうぜ……」
「ま、確かに評判の方は気分はいいけどさ、望や裕実はこんな状況に慣れてないみたいだし、ここは早く買物済ませた方が良さそうだな」