【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー崩落ー60

『なんや、珍しい人からメールやんな。　今日はちょっと忙し過ぎてそっちに行かれへんかっただけや……。　せやな、明後日は必ずそこ行くし、心配せんでも平気やで……』

　二人は同じ速さ位でその雄介からのメールを読んだのであろう。　読み終えると二人はお互いの視線がぶつかったようだ。

「その顔は何か引っかかる部分でもあったって事だよな？」
「はい！　そうなんですよー。　最後の『心配しないでも平気』って所ですかね」
「はい！　ビンゴ！」

　和也はその言葉と同時に裕実の事を指差す。

「俺もさ……それが引っ掛かったんだよな？　どういう意味で『心配しないでも平気』って雄介は送って来たんだろうな……」
「これって、ある意味二つありますよね？　一つは『ちゃんと望の事迎えに行くから心配すんな……』って事と『今日は忙しかったから行けなかったけど、心配しなくても自分の方は生きてるから大丈夫だ』っていう意味です」
「どちらにも当てはまるから困るよな？　本当、メールだけじゃ分からない事ってあるよな？」

　和也の方もとうとう頭の方を煮詰まらせてしまったのか癖っ毛である頭をクシャクシャとし始める。

「メールってさ、言いたいことを言える便利な物なのかもしれねぇんだけど、相手の表情が見えたりしねぇから分からない事も多いだよなー。　それに、いくらでも言いたい事を書いたりする事が出来るって訳だ。　まぁ、それはネットの世界でも同じなんだけどさ……。　今の時代その事について問題になってるじゃねぇか……ネットでも苛めがあるってな……。　しかも、匿名やHNだろ？　だから、普通の人にはそいつが誰なのか？　っていうのが分からないしさ……だからってそういう事をやらかす人の気持ちなんて俺には分からないんだけどな。　そんでもって被害者っていうのは我慢するしかないっていうのかな？」
「ですよねー。　でも、雄介さんっていう人は和也のように先を読むような人ではないので、普通に質問したら返ってくると思いますよ」
「……って、その普通っていうのが分からないんだよな」
「なら、聞いてみます？」
「そっか！　そういう事な！　あ！　雄介の場合には深く考えなくても良かったんだったな」
「和也……」

　そう裕実の方は和也の名前を言いながらため息を吐く。

「なら、そうしましょうよ。　上手くいけば深い事聞けるかもしれませんよ」

　裕実は急に悪巧みしようっていう表情をしながら和也の方に視線を向ける。

　その裕実の表情に和也の方は逆に不思議そうな表情を向けるのだ。　たまに和也でも裕実が考えている事が分からないからだ。