【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー崩落ー28

「そっか……もう、昼近くだったのか……」
「とりあえず何か飯食ってから薬飲めよ。　今、飯作って来てやるからさ」
「ああ」

　そう望は口にすると和也の方は階下の方へと行ってしまう。　そして、お粥と薬を運んでくる和也。

「とりあえず、起き上がる事は出来るか？」
「多分……」

　昨日の夜は雄介が体を支えてくれたから良かったのだが、今日望の事を看病してくれているのは雄介ではなく、そうわがままな事は言えない。　しかしインフルエンザというのは風邪とは違い簡単には治らないもんだ。　寧ろ昨日より悪化しているように思えるのは気のせいであろうか。

「悪い……和也。　今日はなんかまだ起き上がれそうにないんだけどな」
「だけどさ、なんでもいいから口にしないと薬も飲めなくなっちまうんだから一口でもいいから食べようぜ。　そしたら、薬飲んで寝てくれたらいいしさ。　それに、起き上がる事が出来ねぇんだったら俺が体支えてやるしな」
「雄介なら遠慮しないでそういう事してもらうのは可能なんだけどさ……お前はな……」
「気にすんなって！　俺とは親友。　雄介とは恋人。　っていう風に割り切ってくれてもいいし、患者さんと看護師っていう風に思ってくれてもいいしな」

　望の方はひと息吐くと、

「分かった……。　和也、頼んでいいかな？　俺の体を起こして食べさせてくれねぇかな？」
「ああ、そういう事なら全然構わねぇぜ」

　和也の方はその望の言葉に喜んで引き受けると、まずは望の体を起こし和也の方へと寄りかからせる。

「とりあえず、ご飯は自分で食う事は出来るんだろ？　熱いだろうけど、ひと口でいいからさ食べてくれよ。　そりゃ、雄介のように美味くはねぇのかもしれねぇけどな。　そりゃ、雄介の場合には隠し味に愛情っていうのが入ってんだから、そこは雄介の方が一枚も二枚上手なんじゃねぇ？」
「お前ってたまに臭い事言うよなぁ。　それで、昔は女の子の事ナンパしてたんじゃねぇのか？」
「さーてな……ナンパっていうのは一回位しかした事ねぇかも」
「なら、した事があるんじゃねぇか……」
「ま、それは高校生の時だけどな」
「おい……高校生の時って早くねぇ？」
「早いのか？　つーか、望の場合にはそういう事した事が無さそうだけどな」

　和也はそうふざけたように言うと望の方は顔を真っ赤にしてしまっていた。　だがナンパをしたという事ではなく『ナンパなんかした事がないだろ？』と言われた事がどうも恥ずかしかったらしい。

「あ、あるに決まってんだろっ！」

　そんな風に興奮したように言う望に再び笑い出してしまう和也。

「……プッ！　望ってホント嘘吐くの下手だよな？　ってか顔真っ赤にしてるしさ。　何より焦ってそういう風に怒る方が怪しいんだぜ」