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ー崩落ー24

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  和也は雄介のその言葉に笑い始める。

「まさか、お前覚えてねぇとか? 望が熱出すと素直になるんじゃなかったっけ?」

 雄介はその和也の言葉に一瞬目を丸くしたのだが次の瞬間には肩を落としてしまっていた。

「あー、せやったわぁ」
「まぁ、そう肩を落とすなって……それが、お前に対する望の本当の気持ちだろ? 逆に嬉しい事なんじゃねぇのか? それに、今のうちになんだからさ望の本当の気持ち聞く事なんて」

 和也はそう雄介に向かい微笑むと今度は裕実の手を握り幸せそうな笑みを浮かべる。

 裕実からしてみたら和也が何が言いたいのかが分かったのであろう。 裕実の方も和也の方に向かって笑顔を向けると和也の肩へと頭を乗せテレビの方に視線を向ける。

「せやな……そうや! 和也の言う通りやん! 何で俺は一瞬でも望が素直じゃなかった事に喜ばへんかったんやろ? ホンマ俺が罰当たりな奴やんかぁ」

 そう雄介は独り言を漏らすと温まったであろうお粥をもう一度丼へと移し二階に向かうのだ。

「望……待たせてスマンかったな。 ちょ、まだ、熱いかもしれへんけど、ちょっとでええから食べてな……」

 雄介は丼をテーブルの上へと置き望の体を起こすと自分の体へと寄り掛からせる。

 そして、まだ熱いであろうお粥をスプーンで掬い吹き冷ますと望の口へと運ぶのだ。

 最初のうちは素直に食べていた望だったのだが、やはり病気の時というのは食欲というものはない。

「悪いんだけど、雄介……」

 その望の言葉だけで望が何を言いたいのかが分かったのであろうか。 その望の言葉に雄介は、

「まぁ、今日の所は無理せんでええよ……そんでも半分位は食ったしな……」

 雄介は望の頭を優しく撫でるとゆっくりと望の体をベッドへと沈ませる。

「後は俺が食っておくしな」
「ゴメン……凄く美味かったんだけどさ……」
「体の方が受け付けてくれへんのやろ? それに望が謝る必要なんかないやんかぁ、いつもやったら、俺が作った飯食ってくれてるやんか」

 雄介はそんな望の素直な気持ちを微笑みながら望が残したお粥を平らげていく。

「美味かったわぁ。 久しぶりに作ったっていうわりには上出来やったな」

 その雄介の言葉に望の方はクスリとすると、

「自画自賛だな……」
「だってな、望やって美味いって言うてくれたやんか」
「そりゃそうだけどよ……」
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